【前編】カメラマンは助次郎ビールに魂を捧げた人でした
前に書いたnoteで、人との出会いにおける「直感」について書きました。
https://note.com/sonohi_2025/n/n459336a83072
過去記事に書いた友人に紹介してもらったカメラマンさんに会う直前のことです。 小児がんの子供たちのためのイベントで、急遽友人の手伝いをすることになりました。その会場の違うブースで出店されていた、自主制作の写真集に目が止まります。
日常の小さな瞬間を、柔らかく、でも鮮明に切り取った写真。 ノスタルジックで、淡い青色をたたえたような色味がとても気に入りました。
写真を撮ったのは、20代の女の子。 きれいに切りそろえられたボブが、彼女の聡明な雰囲気を引き立てています。 たわいもない話を5分ほどした頃、その子の思慮深さと、随分と年上の私を目の前にしても物おじしない姿勢に、酷く魅了されてしまいました。
「この人のフィルターを通した『sonohi』の世界は、どんな風に映るのだろう」
とても興味が湧いてしまい、頭で考えるよりも先に名刺を差し出し、自分の事業について簡単に話していました。彼女はある企業が主催しているデザインスクールに通っているときに丹波を訪れたことがあるらしく、窯元さんの工房の写真も撮っていたとのこと。ますます気になってしまいます。
数日後には、友人に紹介してもらった別のカメラマンに会う予定があるというのに、「この出会いは運命なのではないか」と思ってしまいました。 その日は衝動に耐え、名刺を渡すだけにとどめましたが、一日中彼女のことが頭から離れません。まるで恋をしている思春期の子供のようです。
こちらの言葉を的確に捉え、絶妙なタイミングで自分では考えもつかなかった視点からのアドバイスがもらえる。いったいこの人の頭の中はどうなっているのだろう。デザインに関しては何の知識も持たない私はこの分野に関しては本当に自信がなく、そのアイドバイスを取りこぼすことなく吸収したいという気持ちが溢れていました。
案の定、次の日には彼女にメールを書いていました。
「あなたの目を通して、sonohiの商品がどのように表現されるか非常に興味があります。ぜひお話しする時間をいただけませんか?」
返信があればラッキーくらいの気持ちでメールを差し出しました。
相手は下手したら二回りくらい年下のキラキラした若者です。
メールが開封されずにゴミ箱行きになっても何ら不思議はありません。
しかし数日後、彼女から快諾の返信を受け、私はレイにことの顛末を話しました。 レイはどう思っただろう? 少しドキドキして横目で彼女を見ながら「どう思う?」と尋ねます。
……もっとも、どうもこうもない、もうすでにメールを送ってしまっているのですが。
レイは冷静に言いました。 「綺麗な写真を撮る人だと思いますけど、物撮りとかフードの写真はどうなんでしょうね。紹介してもらった人に絶対お願いしないといけないわけではないし、比較するのはいいんじゃないですか?」
冷静なレイを尻目に、私はすっかり「恋」に落ちていて、八割方彼女にお願いすることになるだろうとこの時は思っていました。
そして数日が過ぎ、彼女との打ち合わせの日。 前日にはすでに過去のポートフォリオが送られてきており、器や食べ物の写真もしっかりと網羅されていました。その手際の良さと準備の徹底ぶりには、一切の抜かりがないものでした。
スタバでコーヒーを啜りながら、sonohiを起業したきっかけ、そしてビジョンについて語ります。一通りこちらの話を聞き終えて、彼女が出した答えは意外なものでした。
「写真を撮ることは可能ですし、私もぜひsonohiさんの活動を応援したいです。ただ、その前にブランディングについてもう少し踏み込んで考えませんか?時間的にも資金的にも余裕がないのは当然ですし、早く収益化したい気持ちも理解できます。でも、一番最初のブランディングがぶれてしまっては、全てがチープに見えてしまう・・・」
そう言って、彼女は過去に関わった仕事のことや、自身の師匠のような人の事業との関わり方を詳しく話してくれました。
結局その日は何も進展せず、一旦話を持ち帰ることに。 私とレイは、二回りほど若い女の子の知識と見識に、ただただ圧倒されていました。自分は彼女と同じ歳の頃、どうだっただろう。こんなにも堂々と自分の仕事に誇りを持ち、人と渡り合えただろうか……。 基本的に自分軸で生きているので、他人がどうであろうと普段はまったく気にならない私なのに。それでも、彼女に対してだけはなぜか目が離せませんでした。もしかしたら、圧倒的な才能と若さを目の当たりにした大人の「大人気ない嫉妬」だったのかもしれません。
ますます彼女が気になる私を、レイは相変わらず冷静に見つめていました。
後半に続く
