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【読書記録 -141】組織と人を変えるコーポレートガバナンス

コーポレートガバナンスとは何か

コーポレートガバナンス

日本語では「企業統治」と訳される。
しかし、この言葉だけを見ると、経営者を監視し、不正を防ぐためのルールのような印象を受ける。

ボクが6月に書いた、青木剛著『中小企業コーポレートガバナンス論』の読書記録でも触れたが、ガバナンスの語源は「船の舵取り」だ。

つまり、コーポレートガバナンスとは会社を縛る制度ではなく、不確実な環境の中で組織を目的地まで導くための仕組みなのである。


本書『組織と人を変えるコーポレートガバナンス』の著者 赤松育子は、東京大学経済学部卒業後、公認会計士、公認不正検査士として監査法人や研究機関で実務・研究に携わり、多数の上場企業で社外取締役・社外監査役を歴任してきた人物だ。

ハードとソフトは切り離せない

本書では、ガバナンスを「ハード」と「ソフト」の二つに整理している。

ガバナンスの「ハード」とは、制度や仕組みを指す。
・会社法
・金融商品取引法
・内部統制
・情報開示、など

ガバナンスの「ソフト」とは、人に関わる領域を指す。
・組織風土
・企業理念
・リーダーシップ
・多様性
・心理的安全性、など

制度がなければ組織は統制できないけれど、制度だけで組織が良くなるわけじゃない。逆に、理念だけを掲げても仕組みが伴わなければ組織は動かない。

制度と人間の両方を設計する営み― それがガバナンスだ。

コーポレートガバナンス・コードが目指すもの

その考え方を象徴するのが「コーポレートガバナンス・コード」だ。

コーポレートガバナンス・コードは、2015年に東京証券取引所が策定し、その後2018年、2021年と改訂された。特徴は、法律のように一律で義務を課すものではなく、「コンプライ・オア・エクスプレイン(遵守するか、遵守しない理由を説明するか)」という考え方を採用している点である。

つまり重要なのは、「ルールを守ったか」ではない。
自社にとって最適なガバナンスを考え、その理由を説明できるかどうか」なのである。

2021年の改訂では、独立社外取締役の拡充だけでなく、人的資本やサステナビリティ、多様性の確保も重要なテーマとして盛り込まれた。そう、ガバナンスは、もはや法務や総務だけの仕事ではなく、経営そのものになっているのだ。

多様性はリスク管理でもある

一般的に「多様性」というと、女性役員比率や外国籍社員の割合などの数字に目が向きがちだ。しかし本質はそこではない。

似た経験、似た価値観を持つ人ばかりで意思決定を続けると、組織は変化に気づけなくなる。異なる視点を持つ人がいるからこそ「本当にその考え方でいいのか」と問い直すことができる。

多様性は、組織の「倫理的」な課題でもあり、組織の「リスク感応度」を高める経営戦略でもあるのだ。

この考え方は、近年重視されている「ESG」にも通じている。

ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字だ。現在の投資家たちは、投資対象となる企業の財務情報だけではなく、人的資本や組織文化、環境への取り組みといった非財務情報も重要な評価要素だと考えている。

そう考えると、ガバナンスとは、ESGの一要素であると同時に、環境や社会への取り組みを支える土台なのである。

企業価値とは何か

コーポレートガバナンスが目指すべきゴールは、不祥事をなくすことではない。企業価値を高めることである。

企業価値というと、多くの人は売上や利益を思い浮かべる。しかし、それだけでは企業の価値は測れない。企業価値を生み出すのは人であり、組織であるからだ。

経営管理制度評価制度企業風土ステークホルダーとの対話、そして人材の成長などによって企業価値は形成されていく。

だからこそ、ガバナンスは会計や法律だけの話では終わらない。経営者が日々どのような判断をし、どのような組織風土を育てているのか― その積み重ねこそが、会社という船の進む方向を決めるのだろう。

参考リンク

・同文舘出版『組織と人を変えるコーポレートガバナンス』

・東京証券取引所 コーポレートガバナンス・コード

・金融庁 コーポレートガバナンス改革

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