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【第2回】WISC「103」の罠 | 数値に現れない子どもの限界と脳のサバイバルモード

みなさん「帽子取り」というゲームをご存知だろうか?
走り回りながら友達の帽子を取っていき、取られたらゲームから外れていくというルールである。

幼稚園の年長さんの時のエピソードである。

娘(当時5歳)は帽子が取られるのが怖くてこのゲームが苦手だった。

ゲームをやり始めて2.3日経った頃、娘はある作戦を思いついた。

それはゲームの始めから帽子を取られた子たちが集まる場所の近くにいれば、誰も帽子を取りに来ることはなく、最後まで帽子を被ったままの自分の勝利になると。

これ、5歳の子が思いついてニヤリとすることなのか?


娘は年中の夏から通っていたこども園に行けなくなった。当時、私はパートで働き2号申請をしていた。

とにかく毎日泣くので、もうダメだと思い、仕事を辞めて、そこからこども園に行くことはなかった。今、考えれば園の方針と娘の気質が合わず過剰適応を起こしたのが原因だったと思う。

そして、年中さんの1月から新しい幼稚園に行き始めたが、出席率50%ほどだった。

どうなるかわからないけれど、とりあえずWISCを受けることになった。市の機関で予約したので、予約をしてから結果を聞くまで約1年というなんとも間延びしたスケジュールだった。

当時は少し繊細なところはあるけど、そのうち通うようになるだろうと思っていた。また、通えないのは私の育児が悪いからかもしれないとも思っていた。

毒親育ちだと自覚していたし、明らかにマルトリートメントをしていた事実も自覚していたからだ。完全に自責の海に溺れていた。


WISCが叩き出したのは「総合103(言語理解は100以下)」という、あまりにもフツーの結果だった。

その結果に唖然とした。

帽子取りのような出来事や、縁あって1年前に受けた知研式知能テストでは、全人口の上位0.1%のスペックを目の当たりにしていた。

知研式を受けた時は、こども園を辞めていて、どこの集団にも属さず次の園も決まってなかった。
ストレスフリーの状況だった。

この結果を聞いた3月、娘は幼稚園で仲の良いと思っていたお友達から意地悪を継続的にされており、1月末から不登園になっていた。DV被害者のような感情をお友達に持っており、やるせない気持ちで一杯だった。

また、その不登園中に「先生がお友達に"大きい声で泣いたら格好悪い"と言っていたから、隅っこで隠れて泣くようにしていた。」というとんでもない告白を受けていた。

試験を受けた2学期、娘はどれだけ大変な状況だったのだろうか。

当時の私は、自分の毒親育ちの自責に溺れ、娘の過去の不登園の理由も引きずり、さらに水面下で起きていたお友達からのDVや先生の言葉にも、何一つ気づけていなかった。

今思えば、あらゆる生きづらさの地雷が、同時多発的に足元で爆発していたのだ。
それなのに、私も園の先生も誰も気づかずに……。

今思い出しても押しつぶされそうなくらい辛い。


WISCという検査は絶対的に捉えられるが、意外と諸刃の剣であるということを知った。

環境やストレスに脆弱で、そもそも検査する人に依存するところの大きい試験なのだ。特に娘のような繊細さを持つ子には大きな弊害となる。

診察室で娘の普段の様子を訴えたが、「103だから学校は問題ない」の一点張りだった。

このままの数字を出せば小学校も同じだろう。


103。

それは『頑張れば普通になれる』という地獄への招待状であり、娘の脳が命がけで戦ったサバイバルの証拠だった。

この「103」という呪いの数字を突きつけられた私が、一体どうやってこの絶望的なシステムをハッキングし、娘の本当の仕様を証明しに行ったのか。


【第3回】病院をハッキングする方法 | ドクターにA4・10枚の資料を叩きつけた理由
に続く。


▪️連載のラインナップ▪️

【第1回】「不登校という権利」の奪い方|周囲の同調圧力から自尊心を死守するサバイバル術

【第2回】WISC「103」の罠 | 数値に現れない子どもの限界と脳のサバイバルモード

【第3回】病院をハッキングする方法 | ドクターにA4・10枚の資料を叩きつけた理由

【第4回】子どもの牙を折らない育て方 | ちまたのアンガーマネジメントが不登校児を追い詰める

【第5回】育児は最大の「自分を知るチャンス」 | 娘の全肯定が、過去の私の傷を救い出す

【第6回】学校をハックした軌跡(前編) | 居場所ルーム拒否からの逆転劇。味方を作るルート

【第7回】学校をハックした軌跡(後編) | 先生の「傷つき」を演算し、お互いの境界線を守るロジック

【第8回】学校のトラックを降りる日 | 100mスプリンターたちが広大な大地で生きる知恵

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