ひとりの夜に思い出す、誰かの存在
友達がいない。
そうつぶやく夜がある。
声にしてしまったとたん、
胸の奥で
ひゅうっと風が吹く。
空っぽみたいな
気分になる。
でも、
ほんとうにいないのかな。
会わなくなっただけ
じゃないのかな。
人はそれぞれ
暮らしを重ね、
違う道を歩いていく。
会えなくなり、
声も届かなくなり、
言葉を
交わすこともなくなる。
それでもふと、
友達の名前が浮かび、
笑った顔がよみがえる。
そのとき、
心の中に灯りが灯る。
それは、
まだ友達というしるし。
友達は、
いま隣にいることじゃない。
忘れないでいること。
十年ぶりに再会しても、
笑い声がすぐに戻ってくる。
時間なんて概念、
そこでは一切、訳に立たない。
ひとりきりで過ごす夜。
「自分には誰もいない」
そう思いそうになる。
だけど、
心を探せばちゃんといる。
子どものころ、
肩を並べて歩いた。
苦しいときに、
黙って寄り添ってくれた。
それらを
忘れないでいる限り、
友の存在は
決して消えないと思う。
だから、
「友達がいない」
そんな悲しい言葉より、
「忘れていない友がいる」
そう言ってみる。
友達とは、
心の奥で
生きつづける存在。
暗がりに灯る、
ちいさな灯り。
そのことを
忘れないかぎり、
ひとはひとりにはならない。
それはたぶん、きっと、
過去に残してきた、
仕合せの足跡。
