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かつお節の香り+お鍋の湯気=私の記憶を呼び起こす




かつお節を削る。
ごりっ、ごりっと、
硬さの響きが伝わってくる。

祖母が使っていたものを
譲り受けた、かつお節の木箱。

箱は長年使っていたので、
角がすこし丸くなってしまった。
引き出しの立て付けもよくない。

そんな感じなので、
箱根の寄木細工のように複雑。
なかなか開けられない。

しかし私には、
祖母から引き継いだ
小さな秘密がある。

その秘密の技を使い、
引き出しをこじ開ける。
中には削ったばかりのかつお節が、
くるんくるんとカールして、
楽しそうに納まっている。

かつお節を指でつまむと、
薄くて軽くて、
力を入れなくても、
すっと、折れる。

かつお節から立ちのぼる香りは
乾いた薪の煙。
そこに魚の香ばしさが重なり、
香りが鼻の奥へと
スっと入ってくる。

小鍋に水を張る。
昆布を一枚入れる。
火はまだ入れない。
しばらく置く。

その間に、冷蔵庫から、
塩に埋もれたわかめを取り出し、
たっぷりの水で塩を洗い落とす。
色と弾力が戻るまで、
水にさらしておく。

台所の隅のカゴから、
じゃがいもを取り出す。
そして冷蔵庫からは、お豆腐を。

小鍋に入れた昆布が
やわらかくなってきた。
火をつけよう。

鍋が温まっていくのを確認。
じゃがいもの皮をむいていく。
じゃがいもは大きめに切ろう。
豆腐は水気を切り、さいの目に。

鍋の縁に泡が立ちはじめた。
昆布を引きあげる。
すぐに削ったばかりの鰹節を
ひとつかみ入れる。

ひと煮立ちしたら火を止める。
かつお節が底に沈んできたら、
出汁だしを"ふきん"でしていく。

できた出汁だしを鍋に張る。    
そこにじゃがいもを入れ、火をつける。
じゃがいもが柔らかくなったころ、
豆腐とわかめを加え、ひと煮立ち。

ガスの火を止めて、お味噌を溶き入れる。
もう一度、コンロの火を入れ、
お味噌の匂いがふわっと立ち上がる。

それが、できましたのサイン。

お椀に注いで、ひと口。
手間をかけたぶん、旨みがちゃんと届く。
祖母の味を思いだす。
削りたてのかつお節で作ったお味噌汁。

これがいちばん飲みたかった朝だった。



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