セルフケア♯984+ξ【子どもの頃の幸せな瞬間】僕だけの、秘密の宝物だった放課後の時間。
この記事は、
以下に示す企画「#ハッピーライティングマラソン#14」へ
参加します。
「子どもの頃の最も幸せな瞬間は、どんなときだったか?」
この問いを胸に、
記憶の引き出しをそっと開けてみると、
一つの懐かしい光景が、
まるで昨日のことのように鮮やかに蘇ってきます。
それは、
僕がまだ小学校の1、2年生だった頃、
4学年年上のお姉さんと過ごした、
放課後の穏やかな時間です。
お姉さん、と言っても、
血の繋がった姉ではありません。
今の中学生らしい言葉で言うならば、
「女子の先輩」というのが一番近いのかもしれません。
でも、
当時の僕は「先輩」なんて言葉も知らず、
ただただ、
その優しいお姉さんのことを、
心から慕っていました。
僕は、5人兄弟の長男です。
物心がついた時には、
すでにすぐ下に妹や弟がいました。
母親にまだ甘えたかった年頃でしたが、
母はいつも、仕事や家事、
そして幼い弟妹たちの世話に追われて、
とても忙しそうでした。
「お兄ちゃんだから、しっかりしてね」。
その言葉は、僕にとって、
甘えたいという気持ちを封じ込める、
小さな呪文のようでした。
父は何かと口うるさく、
僕はあまり頼りにしていませんでした。
学校でも、
僕はどこか満たされない気持ちを抱えていました。
同級生たちといても、何かが違う。
彼らの興味の対象と、
僕の心が惹かれるものとの間には、
いつも少しだけ、
ずれがあるような気がしていました。
おまけに僕は頑固なところがあったので、
自分の思い通りにならないことがあると、
言葉にできない鬱積が、
小さな胸の中にどんどん溜まっていったのです。
そんな僕にとって、
小学校に入学して出会った、
年上のお兄さんやお姉さんたちの存在は、
まさに救いでした。
彼らは、小さな僕のことを
「かわいい、かわいい」と言って、
本当の弟のようにかわいがってくれました。
それが、たまらなく嬉しくて、楽しかった。
特に、
まだ下の妹が保育園に通っていた小学校1、2年生の頃は、
学校にいる間だけは、
僕は「お兄ちゃん」という役割から解放され、
年上のお兄さんやお姉さんたちの間で、
自由気ままに過ごすことができたのです。
そして、
冒頭に話した、あの4学年上のお姉さん。
今思い出してみると、
彼女はどちらかと言えば物静かで、
穏やかな人だったように思います。
4学年も違えば、
授業が終わる時間も当然ずれています。
だから、
彼女と放課後の時間を二人きりで、
僕が独り占めできるなんてことは、
めったにありませんでした。
でも、
時々、本当に時々ですが、
彼女の授業が早く終わり、
帰りのバスの時間まで少し余裕がある時、
僕の面倒を見てくれたのです。
僕は、
自分がやることなすこと全てを、
そのお姉さんに見てほしかった。
鉄棒で前回りをしたり、
砂場で大きな山を作ったり。
その一つひとつを、
彼女はただ、静かに、
そして優しい眼差しで見守ってくれました。
その時間が、
僕にとっては、何よりも幸せな瞬間だったのです。
しかし、
その穏やかな時間は、
永遠には続きませんでした。
僕が小学校2年生を終える頃、
彼女は卒業を迎えました。
4つも年が違えば、
中学校が同じになることもありません。
だから、あの日、
小学校の校門で「さようなら」を言ったのが、
僕が彼女に会った、最後の記憶です。
僕が高校生か、大学生になった頃でしょうか。
ふと母親に、
あのお姉さんのことを尋ねてみると、
「ああ、あの子ね。結婚されたそうよ」
と、あっさりと教えられました。
その頃の僕は、年相応に、
同年代の女の子に興味が移っていたので、
その知らせを聞いても、
特に嫉妬や寂しさを感じることはありませんでした。
ただ、
こうして、すっかり大人になった今、
ふと彼女のことを回想すると、
少しだけ胸が締め付けられるような、
切ない気持ちになります。
僕ももういい大人になり、
あのお姉さんも、
きっとそれなりに年齢を重ねていることでしょう。
もし、今、願いが叶うなら。
僕は彼女に会って、
今の僕の姿を報告してみたいのです。
あの頃、
あなたの後ろをついて回っていた小さな男の子が、
こんなに体も大きくなって、
結婚もして、
成人する子供たちの父親になっているんですよ、と。
彼女は、一体どんな反応をするのでしょうか。
でも、
美しい思い出は、美しいまま、
そっと心の中にしまっておくべきなのかもしれません。
現実で会うことで、
あの頃のきらめきが、
少しだけ色褪せてしまうような気もするのです。
そんなことを考えながら、
今夜もそっとスマホを裏返して、
ベッドに横たわります。
遠い日の、
あの優しい眼差しを思い出しながら。
おやすみなさい。
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