見出し画像

フランクリン・自立と自由のため学び、稼ぐ【手のひらの偉人伝25】

ベンジャミン・フランクリン(1706~1790)は、ワシントン、ジェファーソンと並ぶアメリカ独立の功労者で、電気学などの科学研究や、さまざまな社会事業で活躍しました。哲学や社会科学の分野でも業績があります。

アメリカでは最も有名な偉人の1人であり、100ドル札の肖像にもなっています。

フランクリンは、家庭の事情で10歳までしか学校に行けませんでした。しかし、本を読んで独学し、また印刷工(最初は丁稚奉公)として働くなかで、仕事で扱う活字の文書(数学や科学の文献もあった)も読むなどして、勉強を続けました。

その一方、印刷工の仕事にもおおいに励み、やがて独立して印刷業者として成功します。また、しっかり稼ぐ一方、堅実な暮らしで蓄財にも励んでかなりの財も成しました。

「時は金なり」ということわざは、フランクリンの作だとされています。

商売や蓄財が上手だった彼を、「拝金主義者」という人がいます。

しかし、フランクリンは、働かなくても食うに困らないだけの資産を築くと、40代で事業から手をひき、好きな科学の研究に没頭しています。とくに電気学の分野では、世界的な権威になっています。凧をあげて雷が電気であることを確かめた実験は有名です。

また、図書館や大学や病院の設立、郵便制度の改革などの社会事業でも活躍しました。そして、晩年のアメリカ独立の際には、外交の仕事などで大きな役割を果たしたのです。

お金のことを気にしなくてよかった彼は、どの仕事も自分の信念に沿って、思いきり取り組むことができました。彼は、お金を「自立して自由に生きる」ための手段と考えたのでしょう。

***

幅広い業績のあるフランクリンですが、そのなかでも、とくに彼らしい活動をひとつご紹介します。

それは、若い頃に取り組んだ「世界初の公共図書館の創設」です。

フランクリンが20代半ばの若者だった1730年代の初め、アメリカのフィラデルフィアでのこと。彼と仲間の青年たちは、定期的に集まって勉強会をひらいていました。

そして、この青年たちは、もっと本を読みたいと思っていました。しかし、当時の本は高価で、なかなか買えません。買うのに手間もかかりました。

当時のアメリカには、大きな町でも専門の本屋はありません(本は、文具店や雑貨店などで片手間に取り扱っていた)。

そこで、フランクリンたちは勉強会の仲間で蔵書を持ち寄って図書館をつくろうと考え、実行しました。当時はまだ一般の人が利用できる公共図書館というものはありません。それまでの図書館は、王侯貴族などによる私的な本のコレクションだったのです。

しかし、フランクリンたちが当初行った、「本を持ち寄る」やり方はうまくいきませんでした。各人がなくしていいようなダメな本ばかり持ち込んだからです。

たまに良い本が持ち込まれても、誰かが借りたまま、なくなってしまうことが何度もありました。これでは、良い本が集まらなくなってしまいます。

そこで、フランクリンたちは図書館を「大勢から小口の資金を会費として集めて基金をつくり、それで本を買う」方式に切り替えました。会費を払っていない人も、その都度料金を支払えば図書館を利用できるようにしました。

すると、蔵書は充実して会員も増えていき、図書館は大成功。

最初の「持ち寄り方式」がうまくいくには、「自分の大事な本をみんなに差し出す」という自己犠牲が必要でした。しかし会費制だと、各人に無理を強いることなく、全体の利益を実現できます。そこがポイントだったのです。

フランクリンたちが設立したフィラデルフィア図書館は、大きく発展して今も続いています。

フランクリンは、その後もさまざまな公益事業で活躍していきますが、この図書館のような、個人の利益(私益)と公益の調和をはかるしくみづくりが上手でした。

こうしたフランクリンの活動は、今では「社会起業」などともいわれるもので、現代的な観点としても興味深いと思いませんか? 

フランクリンの生き方や活動には、この社会で自由に創造的に生きるための教訓が多くあると思います。

***

*古今東西の偉人を2~3分で読める長さで切り取って紹介した記事を、その都度思いつきでアップしていますが、今回は通常の2倍ほどの長さの特別バージョンです。フランクリンは、私がとくに関心を寄せる、重要だと考える偉人です。「ザ・偉人」みたいな人ではないかと。

(参考文献)
・『フランクリン自伝』岩波文庫
フランクリンの生涯についての第一の資料といえる本。

・板倉聖宣『フランクリン』仮説社、1996年(新版2013年)
フランクリンについての、読みやすく、深い内容の伝記。

・板倉聖宣・松野修編著『社会の発明発見物語』仮説社、1998年
記事の後半は、松野修氏執筆によるフィラデルフィア図書館について述べた章(この図書館の創造性や意義をわかりやすく伝えている)に基づいて書いています。

フランクリンについての、より詳しい私のnote記事(1万文字程度の長文です)

「手のひらの偉人伝」のつぎの記事。マガジンにもまとめています。

前の記事


いいなと思ったら応援しよう!