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カーソン・もの静かな自然オタクによる『沈黙の春』【手のひらの偉人伝17】

1962年、科学者で作家のレイチェル・カーソン(1907~1964、アメリカ)が出版した『沈黙の春』――これは農薬による環境破壊を警告した、エコロジーの草分け的な本です。

当時は環境問題への関心は低かったのですが、この本は大反響でした。科学的に綿密で文章も優れていたからです。

農薬を製造する化学業界は、彼女を批判・中傷しました。しかし、それは効を奏しませんでした。

彼女は、小さな地方都市の、裕福ではないが教育を重んじる家庭に育ちました。父親は勤めの傍ら農園を営み、彼女はそこで生きものに触れて遊んでいました。本も好きで、少女時代は小説家志望。

しかし、大学時代に生物学に魅せられ、奨学金を得て海洋生物学の修士に。

当時(1930年代)は女性の科学者は皆無で、彼女は就職に苦労しました。しかし、良い出会いにも恵まれ、どうにか商務省漁業局の非常勤職員に。そこで与えられたのは、漁業局が協賛する、海の生物についてのラジオ番組の台本を書く仕事。

番組は大好評で、彼女は正規の研究員となります。

そしてその後は、研究の傍ら書いた啓蒙書『われらをめぐる海』(1951)がベストセラーとなり、40代半ばには専業作家に。

彼女は深い科学知識と文才、そして自然への鋭い感性を併せ持つ、まれな存在でした。

『沈黙の春』は、50代半ばだった晩年の彼女が、ガンに侵されながら書いた本です。

彼女は、本来は論争的な告発の本を書く人ではありません。「物静かで控えめ」「内向的」というのが、周囲の印象です。「自然オタクの文学少女」がそのまま成長したような人でした。

しかし、環境破壊の深刻な問題を認識し、「私が書くしかない」と、やむにやまれず『沈黙の春』を書いたのです。自分にしか書けない本を、遺言として、攻撃を覚悟して…

重要な本は、このようにさまざまな条件が重なって生まれるものなのでしょう。

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*古今東西の偉人を数百文字で切り取って紹介した記事を、その都度思いつきでアップしています。

(参考文献)
・マーティー・ジェザー『運命の海に出会って レイチェル・カーソン〈新装改訂版〉』ほるぷ出版、2015年
読みやすくまとめられた入門的伝記。

「手のひらの偉人伝」のつぎの記事。マガジンにもまとめています。

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