【実話】第三十五話。21歳、背伸びしたクリスマスのフルコース。「来年もここへ来よう」そう誓ったのに、翌年僕たちが戻ることはなかった。|GLAY×小悪魔=恋。#35

案内された特等席に腰を下ろすと、彼女は終始、窓の外に広がる美しいイルミネーションに見とれていた。そして私は、その光に照らされて輝いている良子ちゃんの姿に、ただただ見とれていた。

しかし、ロマンチックな雰囲気に浸る私の胸の内には、一抹の不安が頭をもたげていた。 目の前に並ぶ、フレンチのフルコース。当然ながら、正しい食べ方なんて「昔テレビでなんとなく見たことがあるかも……」というレベルだ。21歳、高卒で製造業で働く私にとって、ここは完全に未知の世界だった。

案の定、先ほど最初に対応してくれたおじさんとは別の若いギャルソンがやってきて、ドリンクの注文を聞いてきた。 ワインを頼むべきなのか、何をどう注文すれば正解なのか、全くわからない。私たちがまごまごしていると、あの救世主が現れた。

先ほどのおじさんギャルソンが登場したのだ。今ならわかるが、あの方は単なるギャルソンではなく、その場を仕切る「メートル・ドテル(給仕長)」だったのだろう。

「こちらのお席は、私(わたくし)が担当いたしますね」

そう言って、私たちが車で来ていることを察し、私にはガス入りのミネラルウォーターを勧め、彼女にはグラスシャンパンをスマートに用意してくれた。さらに料理が運ばれてくるたびに、メートルさんはそっと次に使うべきシルバー(ナイフやフォーク)を、さりげなくお皿の横に寄せて教えてくれるのだった。

そこまで気遣ってもらいながらも、正直なところ、料理の味はほとんど分からなかった。 食べ慣れない高級料理、そして終始マナーにびくびくしながら口に運ぶ料理は、少し食べただけでお腹がいっぱいになってしまうほど緊張していた。

だが、そんなガチガチの私とは真逆で、良子ちゃんは終始ご機嫌だった。 彼女とて、普段からフレンチを食べ慣れているわけではないはずだ。それでも彼女には、「とにかくその場を全力で楽しむ」という素晴らしい精神があった。慣れない空間すらも笑顔で楽しんでしまう彼女の強さに、私はまた救われていた。

慣れないナイフとフォークと格闘し、ようやくデザートが運ばれてくる頃になって、私はようやく冷静さを取り戻し始めた。 窓の外を見て、改めて「イルミネーション、本当に綺麗だな」と感じる余裕が生まれた。

そして心の中で、静かに誓った。 来年もまたここへ来よう。この場所で、次はもっとスマートに彼女をエスコートできるくらいの大人の男になって、必ず戻ってこよう、と。

ただ、翌年、私たちがこの場所へ来ることはなかった――。


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