【実話】第三十六話。普段は人前で手を繋がない小悪魔な彼女が、聖夜にギュッと握り返してきた。店員にペアリングを突っ込まれて真っ赤になった日。|GLAY×小悪魔=恋。#36

レストランでの食事を終え、外に出た。緊張で火照った私の体には、12月の夜のガーデンの空気がちょうど心地よかった。美しいイルミネーションに包まれた庭園を、食事を終えた多くのカップルたちが寄り添いながら歩いている。

そんなロマンチックなシチュエーションでも、普段の良子ちゃんは絶対に手を繋いでくれない。「人前で手を繋いで歩くなんて恥ずかしい」と言って、二人きりの空間以外で私たちが手を繋ぐことはまずなかったのだ。

けれど、聖なる夜の魔法だろうか。私は思い切って、彼女の手をそっと握ってみた。 いつもならスッと払いのけられるはずだった。でも、今夜は違った。

彼女は、私の手をギュッと握り返してくれたのだ。

この瞬間のことは、今でもはっきりと覚えている。驚くほどに冷え切った彼女の手と、対照的に酷く温かい私の手。 感動に浸る私をよそに、良子ちゃんは「いやー、手が冷たかったから本当に助かるー!」と笑った。私の手をすっかりホッカイロ代わりにするあたり、さすがは小悪魔・良子、ここでも本領発揮である。

ただ、私たちの手繋ぎデートには、微笑ましい「問題」もあった。 以前にも書いたが、私の身長は180センチ、彼女は150センチ以下。手を繋いで歩くには、あまりにもバランスが悪いのだ。私が目一杯に手を下げても、彼女は少し手を上に持ち上げないと繋いだ状態を維持できない。周りから見れば、なんとも微笑ましい凸凹(でこぼこ)カップルだったと思う。

そうこうしているうちに閉園の時間が近づき、周囲のカップルたちが一斉に帰り始めた。私たちもその波に従うようにして、名残惜しくも帰路についた。

ちなみに、翌日のクリスマス当日は休日出勤だった。年末までの案件をどうしても間に合わせるための出勤であり、イブに半休を勝ち取った代償でもあった。それでも、あの特等席での時間を思えば、仕事なんていくらでも頑張れた。

約束していたプレゼントのネックレスは、少し日を改めた26日に買いに行った。 向かったのは、前年のクリスマスにも訪れた大好きなブランド「コムサ・デ・モード」だ。

二人でお気に入りのネックレスを選び、お会計をしようとしたその時、対応してくれた店員さんがハッと何かに気づいたように笑顔になった。私と良子ちゃんが、お互いの指に同じコムサ・デ・モードのリングをつけているのを見て取ったのだ。

「あら、お二人とも、うちの指輪をつけてくださっているんですね!」

その何気ない突っ込みが入った瞬間、良子ちゃんはわかりやすいほどに顔を真っ赤に染めた。あの高級フレンチでは物怖じひとつせず堂々としていた彼女が、嘘みたいに照れている。

帰りの車中、彼女はプンプンと膨れ面をしながら私に怒り気味に言った。 「だから、人前で指輪なんてつけるの恥ずかしいのよ〜っ!」

本当に、どこまでも可愛い人だった。 堂々と大人びた空間を楽しむ度胸を見せたかと思えば、指輪ひとつを突っ込まれただけで少女のように顔を真っ赤にして照れてしまう。そんな底の見えない魅力を持つ良子ちゃんのことが、私はたまらなく愛おしくて、大好きだった。


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