【ショートショート】 😡 抽象的な会議 🤣
「あなたの説明では、何を言っているのか理解できない。」
営業部長の頑頭は、机を軽く叩いた。
会議室の空気がぴんと張る。
向かいに座る研究部長の道筋は、静かに資料を閉じた。
「今までの説明でも分からないのですか。」
「どこが分かりやすいと言うんだ。全然分からない。」
「これだけ抽象化して説明しているのに理解できませんか。」
頑頭は眉をひそめた。
「だから、その抽象的な説明をやめろと言っているんだ。」
「抽象的?」
道筋は首をかしげた。
「ええ。本質だけを取り出して、できるだけ理解しやすく整理しているつもりですが。」
「本質? どこが本質だ。具体例も数字も現場の話もない。そんな曖昧な話で納得できるわけがない。」
「曖昧どころか、本質的な説明です。」
「お前、自分で『抽象化して説明した』と言ったじゃないか。」
「言いました。」
「だったら認めたようなものだ。抽象的だから分からないんだ。」
「抽象化したからこそ分かるのです。」
「抽象化したから分からないんだ。」
「抽象化とは、理解のために行うものです。」
「抽象的だから理解できないと言っている!」
議論は一時間続いた。
二時間続いた。
三時間続いた。
互いの声は次第に大きくなり、最後には同じ言葉を繰り返すだけになっていた。
会議終了後、新人社員が議事録をまとめていると、廊下で二人の会話が聞こえてきた。
頑頭が言う。
「研究者というのは、どうしてあんなに抽象的なんだ。」
道筋が言う。
「営業というのは、どうして本質を見ようとしないんだ。」
新人は辞書を開いた。
最初に書かれていたのは、
抽象 ── 多くの具体例から共通する本質を取り出すこと。
新人はしばらく黙り込んだあと、議事録の最後に一行だけ付け加えた。
「次回の議題 『抽象』という言葉の意味を確認すること。」
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