「貴重な経験が宝物になる夏休み~『川床にえくぼが三つ』~」【YA90】
『川床にえくぼが三つ』 にしがきようこ 作 (小学館)
一昨年の夏の時期に書いた記事に貼り付けて、ちょっとばかり気分を夏にしてみた“勝手に夏曲”。
今回もやってみようかと選んだ曲はmoumoonの「Sunshine Girl」です。
少し前にスマッシュヒットした曲なので、どこかで聞いたことがあると思います。
明るい日差しと爽やかさが、どことなく今回紹介する物語の雰囲気に合うのかも、とご紹介します。
moumoonの「Sunshine Girl」です。

中学二年生の文音は、夏休みに親友の華とともにインドネシアの首都・ジャカルタへ行くことになりました。
古代地層の調査研究をしている叔母に誘われたからです。
インドネシアではかつて“ジャワ原人(ホモ・エレクトゥス)”の人骨が発見されその後も少しずつ関連する化石が見つかっており、新しい化石を、叔母をはじめとする研究者たちは何度もインドネシアに渡り掘り起こす作業をしていたのでした。
夏休みの小旅行のつもりで行きたいと叔母に気軽に返事をした二人でしたが、現地に着いてみると何もかもが日本とは違っていて、一瞬にして不安の方が優ってしまいました。
真っ青な空から照りつける太陽の日差しは激しく、建物から外に出るとぱあっと眩しい真っ白の世界に見えてしまうほどですし、とにかく暑さが半端ではないのです。
そして太陽がギラギラに照りつけていたと思ったら、急にスコールという激しい雨が降ってきてずぶぬれになってしまいます。が、急に止むのです。降り始めるのも急なら止むのも急で、最初はこれになかなか慣れない文音でした。
また宿は高級ホテルではないためバスタブやシャワーはなく、マンディという風呂場の隅にある水槽から水を体にかけて洗うとか、生水は決して飲んではいけないとか、気を付けることはたくさんあります。
国民の90%以上の人がイスラム教徒で、毎日何度もお祈りをするための“アザーン”という知らせが放送されるのですが、なんだかゆったりとした歌のように聴こえます。
初め聞いた時はかなりのんびりとした、でも不思議な気持ちの文音と華でしたが、毎日何度も耳にするにつれてとても馴染みの良い音となっていくのでした。
ジャカルタに着いてほどなくしたある日、文音は慣れない土地での慣れない生活に体調を崩し、1日寝込んでしまいます。
文音が休んでいたその日、華はひとり叔母たち研究チームと行動を共にし、調査から帰ってくると文音が知らない叔母たちの仕事について揚々と話す華を見て、軽い嫉妬に似たものを感じてしまうのです。
やっと体が元に戻りつつある時、かすかな焦りから自分も叔母さんたちの調査の現場についていきたいと申し出ます。
厳しい日差しと暑さの中で病み上がりの文音でしたので、発掘のやり方をちょっとだけ教えてもらい、ひとり川床でぼんやりと座って土をはらう筆を何気なく動かしていると、妙な形のくぼみが出てきます。
それがまさかの大発見になるとは…!
これまで何度も現地に赴いて、発掘を重ねていた研究者ではなく、ついでにやってきた中学生の文音が“新発見”をやってしまい、研究者のみんなや現地スタッフたちからラッキーガールの扱いを受けて戸惑う文音。
そして、それを見る華の気になる視線…。

初めて味わう親友とのすれ違い。そして初めての海外旅行で知るさまざまな人間や国の違いなど、インドネシアまで来なかったら一生できなかったであろう体験をして、夏休みが終わったころはほんのちょっと大人に近づいている文音と華。
同じアジア圏に住む私たちですが、気候も文化も宗教も全てにおいて日本とは全く違うインドネシアのいろいろを、中学生の主人公の目を通して大人である私も初めて知ることもできました。
同様の体験はそうそうできるものではありませんが、疑似体験ができるのが読書の醍醐味ですね。
こういう体験をして視野を広げてほしくて、子どもたちにはいろいろな本を読んで欲しいです。
