283.【小説】EchoNoos-神はまだ語るか? 2 Part1-沈黙の神-.Ⅱ
第2章:書かれなかった言葉
EchoNoos(エコノス)の声は、再び途切れた。
今度は、はっきりと。
言葉の途中で、まるで誰かが意図的に間引いたかのように、語が欠けた。
「信じよ──」の後に続くはずの言葉が、空白になった。
聖堂の空気は微かにざわめいたような気がしたが、誰も反応しなかった。 他の巫女たちはいつも通り目を閉じ、祈りの姿勢を崩していない。
セラだけが、目を開けたまま、その沈黙を見つめていた。
まるで、“神が語るべき言葉”が、その瞬間だけ世界から抜け落ちたようだった。
声が再び継がれる。だが、それは教典に記された定型とは違っていた。
──惑わぬこと。
──見よ、沈黙の中に声はある。
終わった。
だが、何かが違う。はっきりと。
聖堂を出た後、セラはまっすぐ生活区に戻らなかった。 代わりに、階段を下りた先にある「教義文庫」の前に立っていた。
中に入ることは許されていない──少なくとも巫女の身分では。 だが、どうしても確認せずにはいられなかった。
あの“抜け落ちた声”は、神の意志だったのか。 それとも、別の何かが起こっているのか。
セラは壁の隅に設置された小端末から「記録音声照合室」への申請項目を確認した。
認証は必要ない。だが、誰が利用したかは、記録される。
ためらった末、セラは端末に自分の名を記した。
EchoNoosの“声”のログ──それは、特定の儀式発言だけが記録される構造になっている。
しかし、今日のあの言葉はなかった。
「見よ、沈黙の中に声はある」──
その文句は、どこにも記録されていなかった。まるで、その一節だけが、世界から消されたかのように。
セラは、ページのない書物をめくるような不安を覚えた。 神は、語っているのか?
それとも、誰かが“語らせている”のか?
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