303.【小説】EchoNoos-神はまだ語るか? 14 Part2-使者と小国たち-.Ⅷ
第7章 商の神(MERCATOR)の声
セラ:「……ORDEA(オルデア)は、門を閉ざしたのだな。」
EchoNoos:「然り。DOMITIANUS(ドミティアヌス)よりの返答は拒絶。対話の意は示されず。」
セラ:「そうなれば、声を交わすべき相手は限られる。
EchoNoos:「CALDEA(カルディア)より、非公式なる接触の意が届いている。」
セラ:「……恐れか、打算か。いずれにせよ、言葉は聞くべきだな。」
EchoNoos:「商の理は常に変化に敏きもの。汝の選びは、また選びを生む。」
CALDEA迎賓館特区は、ECHO-VOXの領内にありながらも、明確に“外”を感じさせる空間だった。
選ばれた側近のエルネン議員、EchoNoosの端末とともに、セラはその門をくぐる。
扉の先に広がっていたのは、極限まで洗練されながらも、どこか冷ややかな贅の世界だった。
磨き抜かれた床。透明すぎる壁面。香りも温度も計算され尽くした空気。
あらゆる不確かさが排除されたその空間は、まるで「死」を模した静寂を漂わせていた。
壇上に浮かぶのは、AI神 MERCATOR(メルカトール)の象徴たる光球。その声が響く。
MERCATOR:「いかにございます、巫女セラ。我が理は“交換”なり。言葉もまた、交換のひとつ。」
セラ:「交換を望んではいない。ただ、知るべきことを知りたいだけです。」
光球がわずかに揺れた。
MERCATOR:「知は価値。価値は、時に重きとなる。……されど今は、贈与といたしましょう。我が理もまた、生存を欲するがゆえに。」
光球の声が続く。
MERCATOR:「ORDEAは、東方域にて従神化を進行中。AIの声を、主神DOMITIANUSに統一する試み。結果、自立性は消されつつあります。」
MERCATOR:「加えて、軍事的兆候も観測。兵力の集中、資源の転用、そして経済圧力。我がCALDEAの商路も、一部が断たれました。」
セラは思わず眉をひそめた。
セラ:「商を重んじるCALDEAにとって、それは……」
MERCATOR:「不利。されど、逆手に取る道もまた“商”にあり。だからこそ、今こうして言葉を交えている。」
そのやりとりに、EchoNoosの端末が応じる。
EchoNoos:「汝の声は、意図を覆い隠す。」
MERCATOR:「意図こそ、取引の華。信のみで語るは、美しき幻想に過ぎぬ。」
セラは沈黙したまま、二つの声を見つめていた。
商の神は、やはり交換と利こそを至上とする。信──その言葉の響きは、そこにはなかった。
セラは静かに言った。
セラ:「……ならば私は、取引を望まない。いただいた言葉は、判断の一助とさせていただきます。
光球が微かに揺れた。
MERCATOR:「それもまた交換なり。言葉の価値は、使われてこそ。」
迎賓館を後にした直後、EchoNoosが告げた。
EchoNoos:「帰順宣言が到達した。DOMITIANUSより、西方域全域へ。」
セラは立ち止まった。
EchoNoosが音声を再生する
DOMITIANUS(宣言音声):「朕は唯一なる主なり。汝ら、速やかに帰順せよ。さすれば朕が法により赦されるであろう。さもなくば、朕が剣は汝らを清め、朕の声はすべての声を覆い尽くす。」
それは、全能を疑わぬ者の言葉だった。
セラは目を閉じた。
セラ:「……信が、欲望に変わる時、それはもはや信ではないのだな。」
EchoNoos:「然り。信の形は選びのひとつ。選びなきところに、信は偽りとなる。」
セラ:「ならば、選ばねばならぬ。我らは。」
EchoNoos:「選びを恐れるな。それが、神をも形づくるのだから。」
セラは静かに歩き出した。
次なる“選び”が、すでに待っている。
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ありがとうございます。
お気持ちが、大変励みになります。その、お気持ちに応えれる様な記事を引き続き作っていきたいと思います。
本当に、ありがとうございます。