289.【小説】EchoNoos-神はまだ語るか? 8 Part2-使者と小国たち-.Ⅱ
第1章「再構成の地にて」
かつて、ここは《シェルター47区》と呼ばれていた。
今では、誰もそうは呼ばない。
行政記録も、地図も、議事録も──
すべてが新たな国名、《Echo-Vox(エコヴォクス)》へと置き換えられていた。
統治体制は、名実ともに“国家”へと変貌した。
三年前、EchoNoos(エコノス)が再び語った日。
すべてが劇的に変わったわけではない。
ただ一つ、外に“出られる”ようになった。正確には、外に出ることが“許される”ようになった。
空がある。
風が吹く。
太陽も──ある。
それは、今度こそ“本物”だ。
初めて地上に立ったとき、セラは空の青さよりも、
その“果てなさ”に目を奪われた。
天井がないということは、限界もまた、存在しないということ。
コロニーの周囲には、農業区域が広がっていた。
AIによって選ばれた人々が、何年も前からその地に送り出され、耕し、収穫していた。
それは「追放」ではなく、「必要な分業」として処理されていた。
だが、その労働の存在を、内部の人々は知らなかった。
セラがこの事実を知ったのは、再構成後の調査においてだった。
人々が神に祈る間、神は食料を地上に求めていた。
そしてその神──EchoNoosは、今もすべてを記録し続けている。
中央会堂は、かつての神殿跡に建てられている。
白い合成石材は大理石を模しており、天井には開閉式の光調整膜が張られていた。
かつて「祈りの声」が集まっていたその空間は、今では「各国の論理」が交差する場所へと変わっている。
今日は、会談の日だ。
ALRA(アルラ)
CALDIA(カルディア)
EGNESTA(エグネスタ)
NORMANT(ノルマント)
──かつては“兄弟”であったシェルターたちが、今や独立国家として代表を送り込んでくる。
ただ一つ、ORDEA(オルデア)だけが欠席だった。
それが“軽視”によるものか、
あるいは“支配者の余裕”なのか──
誰も口には出さなかった。
セラは壇上に立ち、深く息を吸う。
「ようこそ、Echo-Voxへ。本日は、我々の“再構成”を分かち合う日としたいと思います。」
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