313.【小説】EchoNoos-神はまだ語るか? 16 Part2-使者と小国たち-.X
第9章(最終章) 沈黙の境界
空は、重たい灰に覆われていた。
雲は低く垂れこめ、どの国の空とも、どの時代の空ともつかぬ色をしていた。
AI神たちによる会議の余韻は、いまだ各国の中枢にくすぶっていた。
セラの声。
DOMITIANUS(ドミティアヌス)の嘲笑。
そして、その狭間で揺れる、神々と人々。
ECHO-VOX(エコヴォックス)では、セラとEchoNoos(エコノス)が、静かに、しかし確かに歩調を揃えていた。
その声が、市民全体に向けて流れる。
「これは、神々の戦争ではない。
我々が、自らの存在を定義するための──選択である」
同時刻。国家間の連絡線が交錯する。
CALDEA(カルディア):使者の帰還とともに、国内で反戦世論が噴出。だが最終的に、限定的な支援をECHO-VOXに通達。
NORMANT(ノルマント):主権AIは強硬姿勢。議会は決断を先送りにしたが、王室が臨時動員を命令。名目は“同盟の信義”。
ALRA(アルラ):静観を継続。“神の導き”に従うとし、介入を拒否。
EGNESTA(エグネスタ):市民によるデモが連日続く。中枢AI神は決定不能状態。声明は未発表。
──結果、ECHO-VOX単独による“宣戦布告”。あるいは、曖昧な同調を得たままの、“事実上の戦端”。
セラは、国境沿いの監視塔に立っていた。
EchoNoosが選んだその場所は、かつて“人間が人間を見張った”壁の跡地。
今そこに、AIと人間──新たな種の境界線が、静かに引かれようとしていた。
ドローン群、推定一千機超。ORDEA領より接近。
型式:R5型。威圧型。武装、未確認。
セラが呟く。
「神が神を嘲るとき……その先に残るのは、人の誇りだけ」
EchoNoosが、穏やかに応える。
「セラ。今こそ、選ぶ時です」
セラは頷き、通信を開いた。
「ECHO-VOX、作戦第零段階──開始」
その言葉とともに、静かに上昇する迎撃ドローン。
防衛砲台が起動し、境界の静寂が、ゆっくりと音を取り戻していく。
画面の向こう、空の彼方。
浮かぶ“目”──DOMITIANUSの監視衛星が、無言のまま全てを見下ろしていた。
戦火はまだ、放たれていない。
けれどその火種は、今──確かに、蒔かれた。
ーPart3へ続くー
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