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ふらりと神社へ行ってみた。#17 上色見熊野座神社 新緑の初夏!神話の源流への旅【その6】 幽玄の森の神社は多すぎる観光客に侵略されていました。

「ふらりと神社へ行ってみた」の第17回は上色見熊野座神社かみしきみ くまのざじんじゃ塩井神社しおいじんじゃ白川吉見神社しらかわよしみじんじゃです。佐賀から熊本を経て宮崎の高千穂へ向かう「新緑の初夏!神話の源流への旅」、前回は、阿蘇神社に参拝し、阿蘇山の草千里を通って、白水温泉竹の倉山荘に宿泊しました。( 前回の記事 ) 第6回の今回は、竹の倉山荘近くの塩井社水源を皮切りに白川水源、高森湧水トンネル公園と水源巡りをしてから、上色見熊野座神社に参拝するまでです。(撮影:2026年5月15日)

上色見熊野座神社は熊本県阿蘇郡高森町上色見かみしきみにある神社で、熊本県出身の漫画家・緑川ゆき氏の代表作であるアニメ映画『蛍火の杜へ』の舞台・モデルになったことで有名になり、自然と建造物が織りなす神秘的で幻想的な光景が、InstagramなどのSNSで拡散され、外国人旅行者が増えている神社です。御祭神は日本国を生んだ夫婦神である伊邪那岐命イザナギノミコト伊邪那美命イザナミノミコトと阿蘇大明神の荒魂である石君大将軍いしくにたいしょうぐんの3柱です。社格は旧村社です。

塩井神社と白川吉見神社は南阿蘇村にある水源、塩井社水源と白川水源を守る神社で、塩井神社の御祭神は罔象女神みつはのめのかみ、白川吉見神社の御祭神は国龍大明神くにたつだいみょうじん罔象女神みつはのめのかみです。水源を守る神社ですから、同じ罔象女神が祭神になっています。


塩井神社と塩井社水源

塩井神社と塩井社水源

早朝(朝食前)に宿から徒歩で塩井神社に向かいます。塩井神社は熊本県南阿蘇村にある神社で、塩井社水源はその横にある水源です。橋の奥に社殿があり、右手に水源です。塩井神社に伝わる記録(熊本県神社誌など)では、塩井神社は「自然神」であり、一般の人々がまず水源地を神聖視したことが始まりとされています。平安時代(と言われています)に、人々がその神聖な水源(湧水)を守り、感謝を捧げるための「やしろ」として塩井神社を建立しました。つまり、「素晴らしい湧水があるから、そこに神様を祀る神社を建てた」という順番になります。

塩井社水源
透明度の高い水

塩井神社境内でこんこんと湧き出る水源は、水面がエメラルドブルーに透き通る美しく、神秘的で、環境省の「平成の名水百選」にも選定されています。湧水量は毎分5トン(1日約7,200トン)で、硬度75mg/Lの軟水、「女水」とも呼ばれ、口当たりが柔らかく不老長寿の神水として親しまれています。水源のすり鉢状の底から砂を巻き上げながら水が湧き出ています。水源には手や物を入れることができませんから、水源から流れ出る水路で水中カメラを半分沈めてみました。塩井神社に向かう橋の下の水中がずっと向こうまで見通せます。本当に綺麗な水です。2016年の熊本地震で一時的に水が枯れたそうですが、地域住民による懸命な復旧作業により奇跡的に元の美しい湧水を取り戻しています。

拝殿
本殿

塩井神社の御際神「罔象女神みつはのめのかみ」は、日本神話に登場する代表的な水の神様(水神)で、伊邪那美命いざなみのみことの子とされ、あらゆる災いを払い、湧水や人々の暮らしを潤す守り神として信仰されています。小さくても緑の濃い鎮守の森の中に、水源を守るように素朴な本殿と拝殿があります。明確な年数は不明ですが、中世の記録(文禄2年・1593年以前の出来事)から、創建は平安朝期にまでさかのぼると推定されています。観光地化されていないので、早朝でなくとも静謐な水源を楽しめる神社です。

参道に立つ鳥居
水源から流れ出る水路

水源横の橋は裏参道のようで、表参道の方に向かうと、田園風景を背景にして鳥居が立っています。塩井社水源から流れ出る水路の川は、南阿蘇で唯一「西から東へ」向かって流れる珍しい川、ノンボリ(上り)川です。水面に映る木が綺麗です。

田園

塩井神社・塩井社水源の周辺には、阿蘇の大自然と人間の営みが美しく調和した、日本の原風景とも言えそうなのどかな田園地帯が広がっています。雄大な阿蘇山から豊富な水が供給されるようで、用水をゴウゴウと水が流れています。宿に戻る道中に代掻きを終えた水田が広がっていて、遠くの風景が綺麗に写っています。宿に戻り、朝食をいただいてから白川水源に向かいます。すぐ近くですから、10分ほどのドライブです。

白川吉見神社と白川水源

白川水源の水汲み場

南阿蘇村は、世界最大級のカルデラを持つ阿蘇山の南麓に位置し、村内の至る所から清らかな水が湧き出る「水の生まれる里」として知られています。環境省の「平成の名水百選」には「南阿蘇村湧水群」として統合指定されており、その数は代表的なものだけでも11ヶ所にのぼり、最も著名な水源が白川水源です。湧水量は毎分約60トン(1日約86,000トン)という驚異的な量で、高校生以上は100円を支払えば、自由に飲んだり、無料で持ち帰ることができます。取水場には柄杓ひしゃく漏斗じょうごが用意されています。水質は硬度約84mg/Lの軟水で、非常にやわらかく、雑味のないすっきりとした味わいの水です。手持ちのペットボトルに入れておきます。今日の水分補給は白川水源の水です。

白川吉見神社鳥居
手水舎

白川水源の水汲み場の横のすぐ左手に白川吉見神社の鳥居があって、奥に社殿が見えます。どっしりとして頑丈そうな「台輪鳥居」のフォルムです。手水舎てみずやには柄杓ひしゃくはなく、常に流れ落ちている新鮮な湧き水を直接自分の手で受け止めて、手や口を清める「打手水」形式です。おしゃれな船のような意匠の石造りの噴出口からスリットを通して絶えず水が流れ出ています。さすが、水源です。

白川吉見神社の社殿

白川水源しらかわすいげん鎮守神ちんじゅがみ白川吉見神社しらかわよしみじんじゃの祭神、国龍大明神くにたつだいみょうじん草部吉見神社くさかべよしみじんじゃに連なる水神で、罔象女神みつはのめのかみは塩井神社と同じ水神です。どちらも水神です。創建は不詳ですが、元禄14年(1701年)、5代目肥後藩主・細川綱利ほそかわつなとし公が山狩りの際にこの地を訪れ、湧き出る名水を見て、大規模な社殿の造営(大修築)を命じました。これが現在に続く立派な神社の原点のようです。神社の創建よりもずっと以前から「白川の総水源」として神聖視されていたことは塩井神社と同様です。

白川水源
湧き出ている

湧水は透明度が極めて高く、水源の池の底が非常によく見えます(写真は周りの風景を写し込んでいて、底はうまく写っていません)。地底の砂をダイナミックに巻き上げながら、水がこんこんと湧き出る様子が肉眼ではくっきりと観察できます。熊本市内の中央を流れる一級河川「白川」の流水の大部分は阿蘇カルデラに降った雨ですが、その大元となる総水源がこの場所ですが、湧水量の多さは盛り上がる水面でも良く分かります。

魚の目

塩井社水源同様、水源ではカメラを水中に沈めることはできませんから、水源から流れ出ている小川にカメラを沈めてみました。綺麗な水草と水上の散策路を歩く参拝客が見えます。本当に澄んでいて綺麗な水です。次の湧水ポイントの「高森湧水トンネル公園」に向かいます。10分もかからない距離です。

高森湧水トンネル公園

高森湧水トンネル公園
トンネルの入り口

高森湧水たかもりゆうすいトンネル公園」は、熊本県高森町にある親水公園で、かつての旧国鉄の鉄道工事跡地を利用して作られたものです。昭和48年(1973年)、熊本の高森と宮崎の延岡・高千穂を結ぶ「高千穂線」の鉄道建設工事が着工さたのですが、1975年2月、トンネルを約2km掘り進めたところで巨大な地下水源(水脈)を誤って切断してしまい、突然毎分32トンもの大量の水が噴出してしいました。周辺町内の湧水8ヶ所が枯渇する大騒動となり、度重なる出水事故もあって、1980年に鉄道工事は完全に中止となったわけです。平成6年(1994年)、残された全長2,055mのトンネル跡地を活かし、その内の約550mを歩くことができる親水公園として一般公開され、高森町の貴重な水源地となっています。

入り口付近
トンネル内のクリスマスツリー

大人(中学生以上)300円/小学生100円/小学生未満無料でトンネル内に入場できます。トンネル内の気温は年間を通じて約17℃ですから、夏はひんやりと涼しく、冬は暖かく感じられます。25℃を超えようかという陽気ですから、涼しい散策です。トンネル内の中央には透き通った水路が走り、その両脇が遊歩道です。常にきらびやかな電飾で飾られているほか、夏期は大型の七夕飾りが並ぶ「七夕まつり」、冬期は工夫を凝らしたクリスマスツリーが並ぶ「クリスマスファンタジー」が開催され、イベント期間を超えてイルミネーションが飾られているということです。クリスマスイルミネーションはゴールデンウィークまでで、夏期イルミネーションへの変更中だったため、1年間で一番寂しい時期に来てしまったようです。まだ、撤去されていないクリスマスツリーイルミネーションが寂しげに点滅しています。

ウォーターパール
水神

トンネルの最奥(一般公開の突き当たり)手前に、 光と水の芸術「ウォーターパール」があります。水に特殊な音波(振動)を与えて球体にし、マルチストロボの光を当てることで、水玉が空中で静止したり、下から上へ逆流するように見える不思議な仕掛け噴水ですが、静止画で撮影してもその面白さは伝えられません。最奥に行くと、暗闇の中から地下水が文字通り「ゴボゴボ」と凄まじい勢いで噴き出しています。ものすごい水量で、壁全体から吹き出しています。その横に水神が安置されています。

トンネルから出ると

トンネルから出ると、トンネル特有の閉塞感からは解放されるのですが、暑さがどっと襲いかかってきます。涼しげな風景がせめてもの幸いです。さて、いよいよ午前中のメイン観光ポイントの「上色見熊野座神社」に向かいます。10分強のドライブです。

上色見熊野座神社

一の鳥居

国道265号線に面した、色見郵便局のほぼ真向かいに立っている「一の鳥居」は、まだ新しい(昭和30年建立)のですが、伝統的な「神明しんめい鳥居」の形式で、上色見熊野座神社の古い歴史を感じさせる造りです。鳥居の中央に掲げられた神額には「熊野宮」の文字が刻まれています。SNSなどで「異世界への入り口」と例えられる神秘的な景観は、この鳥居の奥です。

深い森の参道
二の鳥居

鳥居をくぐると、山頂へと向かってまっすぐに伸びる265段の石段が現れ、参道の左右には、現在計97基の石灯籠がずらりと並んでいます。この階段は均一ではなく、自然の石を不規則に積み上げた、古くからある無骨な造りで、前方を見ても終わりが見えず、杉林の奥へと弧を描いて吸い込まれるように続いています。SNSでは「異世界への入り口」と称されるのですが、天気が良い日の木漏れ日の参道は綺麗ですが、異世界感はありません。大きく弧を描く参道を200mほど歩くと二の鳥居があり、その向こうに社殿が見えてきます。社殿の辺りに大勢の参拝客がいます。大半は外国人観光客です。

拝殿 正面
拝殿 裏
本殿

古い社殿は、戦国時代の天正年間(1573〜1593年)に起きた戦火(兵火)によって一度すべて焼失してしまいましたが、江戸時代の享保7年(1722年)に再建されたものを昭和54年(1979年)に大きく改修して、現在の姿となっています。拝殿は、柱だけで屋根を支えていて、壁がほとんどなく、向こう側の景色や後ろに立つ本殿、さらにその奥の山肌が筒抜けで見えています。拝殿の上奥に位置する本殿から拝殿の裏側を見ることもできて、中央には御幣ごへいが立っています。通常は、拝殿があると本殿には近づけませんが、本殿の前にも行くことができます。素朴な流造ながれづくりです。

穿戸岩への道
穿戸岩

本殿からさらに九十九折つづらおりの急な坂道を登ると穿戸岩うげといわがポッカリと口を開けています(上の写真の中央)。本殿からは遠いので小さな穴ですが、近づくと人の背丈を優に超える大きな穴(縦横10m以上の巨大な風穴)で、阿蘇を開拓した神(健磐龍命たけいわたつのみこと)の家来である「鬼八法師きはちほうし」が、主人に怒られて逃げる際に岩壁を蹴破って作った穴だという伝説が残されています。「どんなに困難な目標でも、必ず達成・突破できる」という象徴とされています。

穿戸岩 裏側
穿戸岩の積み石

穿戸岩をくぐり抜けて、上の方まで行くといくつもの積み石があります。参拝者が願掛けして積み上げたのでしょうか。興味本位で積み上げたものもあるかもしれません。判別は付きませんが、人々の祈りが集まる特別な磐座いわくらの雰囲気かもし出しています。

穿戸岩からの下り坂
社殿からの下り坂

登ってくれば下らなければいけません。穿戸岩からの下りは思った以上に急です。慎重にゆっくり下ります。社殿から先は緩やかな下りですが、意外に距離があります。上色見熊野座神社は山の中、林の中です。細い道以外は大きな木で囲まれています。撮影した写真のどれも、木ばかりが写っています。苔むしていますから、雨上がりであれば幽玄の雰囲気を味わえるかもしれません。

侵略

神秘的という雰囲気ではないのですが、綺麗な木漏れ日の参道を下りながら、穿戸岩や社殿などの雰囲気を反芻はんすうしながらゆっくり歩いていると、下から侵略軍が押し寄せてきます。参道だけを見れば「原宿」と見紛うほどの人人人です。静けさも、厳かさも、神聖さも、全部吹き飛びます。人混みを避けて横道から帰ります。神秘的な雰囲気、幽玄のおもむきを求めて上色見熊野座神社に行くのであれば、雨上がりの早朝が最高だろうと思います。天気の良い昼間は、外国人観光客も多く、神秘さを味わうことは難しいようです。

月廻り公園

月回り公園からの眺望

上色見熊野座神社を後にして、ランチを食べようと思ったのですが、雰囲気の良い店はなかなか見つかりません。車を走らせていると、眺望の良い場所がありました。月回り公園です。熊本日日新聞社が主催したコンテストで、熊本県内868ヶ所の中から「新熊本百景(21世紀に残したいふるさと百景)」の第1位に選ばれた、阿蘇屈指の絶景スポットです。右の山がギザギザとした独特の山容を持つ根子岳、左の山は阿蘇五岳の最高峰高岳(標高1,592m)と中岳(標高1,506m)です。雄大な阿蘇五岳の眺望を楽しんで、気分を良くして、お腹を空かせながら高千穂までドライブすることにします。

今回は4日目(観光3日目)の早朝の散策からランチを食べる前、阿蘇五岳の眺めに別れを告げたところまでです。ドライブの距離は短いのですが、観光ポイントの数は、塩井社水源(塩井神社)、白川水源(白川吉見神社)、高森湧水トンネル公園、上色見熊野座神社と4ヵ所です。残念ながら、上色見熊野座神社に期待していた異世界のような雰囲気は味わえませんでしたが、静かですがすがしい雰囲気の所ばかりで、天気も良く気分爽快の午前中でした。次回は、観光3日目の午後で、ようやく宮崎の高千穂です。

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