「NULL ― 何も定義されてない世界」について
連載前のご案内
「現場責任者の問い」では、ある現象を観察してきた。
トラブルが起きたとき、複数の人が関わっているはずなのに、最後には一人の名前に責任が貼り付く。
誰かが意図して押し付けたわけではない。
説明し、整理し、記録する。その流れの中で、責任が一つの場所に集まっていく。
そういう構造だった。
──────
もし、その構造がさらに整理され、判断の多くが最初から「外部の仕組み」によって管理されていたらどうなるか。
誰が判断するのか。
誰が責任を引き受けるのか。
その配置が、人ではなくシステムによって決められていたら。
──────
舞台は、AIによって管理された学園都市。
安全で、効率的で、争いのない社会。
人々は迷わず、間違えず、安心して生きている。

読み終えたあと、世界の見え方が少しズレる。そんな物語だ。
──────
この都市に外部から派遣された新任管理者、ノア(NOA)。

彼女は「教師」ではない。「担任」でもない。
あくまで、管理者だ。
正しさを教える立場でも、導く立場でもなく、ただ"管理する側"として、この街の違和感に最初に気づき始める。
──────
学園には、四人の生徒が登場する。

アキラ(AKIRA)
感覚で動く。授業中に窓の外を見て、意味のない行動をする。この街では珍しく、「楽しい」という感覚を探している。

レン(REN)
芸術分野に所属する。作品を作ることより、"評価されること"に安心を感じている。

カナタ(KANATA)
工学分野に所属する、観察型。構造を見ることが得意で、物事を静かに分析している。

スバル(SUBARU)
常に正しく、常に最適。規則を守り、期待された答えを自然に選び続けている。
──────
四人は同じ環境にいながら、まったく違う方向に揺れていく。
誰も極端な行動は取らない。でも、確実に「何か」が変わっていく。
──────
この作品が扱っているのは、こういう問いだ。
正解がある社会は、本当に楽なのか。
判断を外部に委ねることは、救いなのか。
「選ばなくていい世界」は、人を幸せにするのか。
最後まで読んでも、答えは渡されない。
その代わり、読者自身が考える余地だけが残る。
──────
こういう方には、引っかかる部分があるはずだ。
AIや管理社会に関心がある方。
正解主義や評価社会に疲れた方。
「自分で選ぶ」ことについて考えたい方。
──────
この物語は、読むための作品ではない。
読後に考え続けるための装置として書いている。
連載を追うかどうかは、この説明を読んでから決めてほしい。
それでは、「NULL ― 何も定義されていない世界」連載を7月2日(木)より開始する。
※連載日は月曜日、木曜日の週2回となります。
──────
次回
NULL ― 何も定義されてない世界|第1話|違和感
前回
現場責任者の問い|第6回|条件は性格ではなく構造
──────
▼思考の分岐点シリーズ一覧
この順番で読むと理解しやすくなっています。(思考の進行順)
①思考の分岐点(ステップ1|選択)
②現場責任者の問い(ステップ2|責任)
③分岐点の問い(ステップ3|体験)
ノベル連載マガジン
