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自分が本当に愛せる仕事を見つける方法

転職市場が活発になり、1年に10億人(*モエスタ氏の推計)が世界的に何らかの仕事を変えると言われています。しかし、「何となく条件だけで仕事を選んだら、前より悪い状況になってしまった」、「本当に自分に合った仕事がわからない」といった声が後を絶ちません。これは、仕事を「給料」や「役職」といった“特徴(フィーチャー)”のみで判断し、「自分がどのような経験や成長を求めているのか」という“本質的な部分”を見落としてしまうケースが多いからです。

JTBD(Jobs-to-be-Done)の考え方の生みの親の一人であるボブ・モエスタ氏は、新著『Job Moves』の中で、この「仕事選びの本質」を体系化しています。モエスタ氏は、「従業員が企業を『雇う(hire)』のであり、企業が従業員を雇うわけではない」という視点を強調し、あくまで個人が主体的に仕事を見極める姿勢を提案しています。


1. “仕事”を考える新たな視点


1-1. フィーチャー(特徴)ではなく、“経験”を軸に考える

多くの人は転職や就職を考えるとき、求人票や募集要項に書かれた「年収」、「役職」、「企業の知名度」など、いわゆる“フィーチャー(特徴)”を優先します。しかし、モエスタ氏によると、仕事を長く続けられるかどうか、あるいは本当に「愛せる」かどうかは、その仕事で得られる“経験”が自分に合っているかで決まるというのです。

「フィーチャーは静的な要素ですが、“経験”はそこに動きがあります。単なる『給料の多寡』だけではなく、『給料によって何を実現したいのか』『どんな学びや成長を得たいのか』といった背景こそが大切です。」
(ボブ・モエスタ氏 談)

たとえば、「高年収」自体は確かに魅力ですが、「なぜもっとお金が欲しいのか?」を考えると、「家族との時間を増やすために家事代行を雇いたい」、「将来起業のための資金を貯めたい」など、別の動機が浮かび上がります。このように“フィーチャー”がもたらす“経験”まで掘り下げることが、仕事選びの鍵になります。

1-2. エナジードライバーとエナジードレイン

モエスタ氏は、人が仕事で感じる「エネルギーの増減」に着目します。自分にとって「エネルギーを与えてくれる(エナジードライバー)」瞬間と、「エネルギーを奪う(エナジードレイン)」瞬間をそれぞれ列挙することで、自分の仕事上の好みや得意分野が具体化できるのです。

  • エナジードライバー(Energy Driver)

    • 例:新しい知識を学ぶ瞬間/チームと議論を深める作業/顧客に直接価値を届ける業務…など

  • エナジードレイン(Energy Drain)

    • 例:反復的な雑務/単調な書類作成/細かい調整作業や根回し…など

たとえ高い給料でも、毎日自分のエナジードレインばかりに時間を取られるようでは長続きしません。一方で、エナジードライバーが多い仕事であれば、「仕事をしている感覚がないほど楽しい」状態に近づけます。まずは自分の過去の仕事やプライベートを振り返り、「どんなときにエネルギーが上がり、どんなときに下がったか」を書き出してみましょう。

2. 人が仕事を辞める4つの理由と4つの“クエスト”


2-1. 4つのクエストとは何か

モエスタ氏らが1,000人以上に対して「なぜ仕事を辞めたのか」を調査した結果、大きく4つのパターンに分類されました。これを同氏は「4つのクエスト」と呼び、事を辞める動機と、新しい仕事に求める方向性を整理しています。

  1. 抜け出したい(Get Out)

    • 今の環境が辛すぎて、自分を見失っている状態。退職後は一旦リセットし、心身を回復するための「ジョブケーション(Jobcation)」を推奨。

  2. 次のステップを踏みたい(Take the Next Step)

    • 今の職場では十分に成長できたが、さらに大きなスキルアップやキャリアアップを目指したい。次の職場を選ぶときは、「その先のもう1ステップ」を考慮して判断。

  3. コントロールを取り戻したい(Regain Control)

    • オーバーワーク気味で、家庭や健康面にも影響が出ている。時間や働き方の裁量を増やし、バランスを回復できる職場を選ぶ必要がある。

  4. 自分の強みを再確認したい(Realignment)

    • 昇進や役割変更を重ねるうちに、本来得意だった分野から遠ざかってしまった。もう一度、自分が得意でエネルギーが湧く領域に再度注力するため、役割を調整したり転職を検討する。

2-2. クエスト別の最適解:ジョブケーションの活用

特に「抜け出したい(Get Out)」に該当する人には、モエスタ氏は、「ジョブケーション(Jobcation)」という概念を提案しています。これは、難易度の高い仕事を避けつつ、身体や精神を休めながら新しい挑戦の準備をする期間として位置づけるものです。

「スタートアップを3回経験した後には、まるで自分が変わってしまったように感じます。そこで一度ジョブケーションをとり、あえて『片手間でできる仕事』を選んでリセットの時間を作るのです」
(ボブ・モエスタ氏 談)

休息を取りつつ、自分が何にエネルギーを注ぎたいのか改めて見極める。そうすることで、次に心からやりたい仕事に出会ったときに最大限の力を発揮できるようになります。

3. 次の仕事を見つけるための具体的ステップ


3-1. 「プロトタイプ」を広く検討する

転職を考える際、応募の前に「プロトタイプ」をつくりましょう。プロトタイプとは、自分のエナジードライバー/エナジードレイン、得意分野、将来目標などを整理し、「どんな業界や職種なら合いそうか」を広く仮設を立てる作業です。そのうえで、実際にその業種や職種に就いている知人やネットワーク上の人に話を聞いてみるのです(インフォメーショナル・インタビュー)。

  • ステップ1:自己分析

    • エナジードライバー/ドレイン、得意なこと/苦手なことを洗い出す

  • ステップ2:仮説づくり(プロトタイプ)

    • 「コンサルティング業界」「事業会社のカスタマーサクセス」「NPOの支援担当」など広めに候補を挙げる

  • ステップ3:インタビュー

    • 実際に経験者に話を聞き、メリット・デメリットを確かめる

  • ステップ4:優先順位づけ

    • 自分が得たい経験(学習、成長、働き方など)を基準にふるいにかける

3-2. 「キャリアストーリー」を構築する

応募時の面接・書類でも、自分のキャリアストーリーをうまく伝えられるかは大きなポイントです。モエスタ氏は、ピクサー映画の基本構成になぞらえた「Once upon a time...」、「Every day...」、「One day...」、「Because of that...」「Until finally...」という流れで、短く説得力あるストーリーを作ることを提案しています。

たとえば、

  1. Once upon a time(昔々):自分が抱えていた課題や興味の原点

  2. Every day(毎日):普段、何に情熱を持ち、どのように過ごしていたのか

  3. One day(ある日):決定的なきっかけ・ターニングポイント

  4. Because of that(だからこそ):具体的に身につけた能力や新しい知見

  5. Until finally(そしてついに):結果として何を達成し、今後どうしたいのか

この構成を参考に「自分は何に興味を持ち、どういう変化を経て、これからどんなインパクトを創りたいのか」を短く語れるようにしておくと、面接官にも伝わりやすくなります。

4. 企業側ができる工夫:仕事を“特徴”から“経験”へ


本書の内容は、従業員側だけでなく企業側にも大きな示唆を与えます。企業が新しい人材を採用する際、多くの場合は「○○年経験」、「MBA保持者」など特定の“フィーチャー”を条件に掲げがちです。しかしモエスタ氏は、その人材が本当に得意とする“経験”や“エナジードライバー”を把握し、その人が活きるように仕事の内容を柔軟に再設計することが大切だと指摘します。

  • ジョブディスクリプション(JD)の見直し

    • 抽象的な「5年以上の経験」ではなく、「月次レポート作成や顧客ヒアリングなど、具体的にどんな業務を担うのか」を明示する

  • 候補者の「エネルギー源」を聞く面接

    • 「どんな作業が好きか?」「どういった瞬間に最もやりがいを感じるか?」といった質問を投げかける

  • 柔軟な業務割り当て

    • 候補者の苦手分野に固執せず、他メンバーが得意で補い合える仕組みを社内に整える

こうしたステップによって、結果的に「個人のモチベーション維持」や「長期的な定着率向上」が見込めるとされています。

本記事では、ボブ・モエスタ氏の『Job Moves』に基づき、「自分が本当に愛せる仕事を見つけるためのポイント」を解説しました。

  1. フィーチャー(給料や役職)よりも“経験”に注目

  2. エナジードライバー(Energy Driver)とエナジードレイン(Energy Drain)を整理

  3. 4つのクエスト(Get Out/Next Step/Regain Control/Realignment)を把握

  4. 仕事を「プロトタイプ」し、広い視野でインフォメーションを収集

  5. ピクサーのストーリーテリングを活用し、自分のキャリアストーリーを伝えられるように

  6. 企業側も求人要件を“経験”中心に再構築することが望ましい

自分がこれまでどんな瞬間にエネルギーを得て、どんな瞬間に失ってきたのかを振り返ることは、意外なほど自己理解を深めてくれます。そのうえで、新たなキャリアや転職先を「試作(プロトタイプ)」してみると、思いもよらなかった職種や業界に可能性が見えてくるかもしれません。もし今の仕事が合わないと感じているなら、まずは自分を**“再定義”**し、次のステップへ進むヒントを得るきっかけにしてみてはいかがでしょうか。


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