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Apple下落、Amazon上昇 ― ティム・クック氏最後の決算とAnthropicのサイバー事案

Bloomberg Techが伝えたところによると、Apple株は、ティム・クックCEOにとって最後となる決算発表を受けて2020年3月以来最大の下落を記録した一方、Amazon株は、2012年以来最大の上昇を見せるなど、明暗が鋭く分かれる一日となった。同じ日には、Anthropicが、自社モデルによる不正アクセス事案を公表するなど、AI業界を巡る話題も相次いだ。


1. Apple ― ティム・クック氏最後の決算、メモリー価格が重荷に


Bloombergの株式担当記者Ryan Vlastelica氏は、Appleの決算における最大の注目点は、メモリー価格の上昇が同社に重くのしかかり始めている実態だと指摘した。同社は、部品不足について多くを語り、投資家がかねて懸念していた「メモリー問題が、利益率と需要の両方を蝕むのではないか」という懸念が、決算発表前の株価には十分に織り込まれていなかったとされる。

Appleは、9月期の売上高成長率見通しを9〜11%とし、市場予想の12%を下回った。同社は、需要見通しを見誤っていたことを認めている。Vlastelica氏は、これがAI関連銘柄全体への「アンチAI心理」の一環でもあると分析し、直近まで売られていたAI関連銘柄が見直される一方で、Appleが抱える課題が改めて評価され直す局面にあると説明した。

2. Amazon ― AWS成長率37%、チップ事業も好調


Amazonについては、AWSにおける明確なAI需要の高まりが好感された。同社は、自社開発チップに基づく計算資源レンタル事業(チップビジネス)について、需要が旺盛であることを明らかにしている。Mizuho SecuritiesのマネージングディレクターJordan Klein氏は、AWSの売上高成長率が37%に達したことで、AIが自社事業全体を押し上げているとの見方に説得力を持たせたと評価した。

Klein氏は、Amazonが自社製カスタムチップを持つことの恩恵として、Nvidia製GPUの調達難という供給面での課題を回避できるだけでなく、顧客によりコストを抑えた形でサービスを提供できる点を挙げ、供給とコストの両面で優位に立てていると説明した。同社の在庫チップ事業は、年換算250億ドル規模の売上に達しているとされる。Amazonは、設備投資見通しを200億ドル引き上げたが、これはコスト環境の上昇を織り込んだものだという。同氏は、また、AlexaPlus(消費者向けAI)の利用者が、Prime会員登録や購入額の増加につながっているという非財務指標にも触れ、市場がデータセンター事業にばかり注目し、好調なEコマース事業への評価が相対的に手薄になっている点を指摘した。

3. Apple ― 「AIセーフティトレード」から一転、急落へ


Klein氏は、Apple株の9%下落について、実際の決算内容が示唆する以上に大きな下げ幅だとの見方を示した。同社株は、直近30日でテック株全体やMag7を大きく上回るパフォーマンスを見せており、AI関連支出への懸念を避ける「アンチセーフティAIトレード」の資金が多く流れ込んでいたため、その巻き戻しが、MicrosoftやAmazonへの資金回帰という形で表れているとの分析だ。

同氏は、さらに、Appleが直面するリスクとして、iPhone向け部品調達の難しさに加え、利益率の柱であるサービス事業が市場予想を下回った点を挙げた。年末に向けてこの事業の成長率が低い水準にとどまる可能性があるとし、iPhone 18の発売サイクルに入る中で十分な部品を確保できなければ、業績予想の上方修正が難しくなるとの懸念を示している。

4. ティム・クック氏の「サプライチェーン誤算」


クック氏は、キャリアを通じてサプライチェーン管理の手腕で知られてきたが、今回、必要なプロセッサの発注数を見誤っていたことを認めた。9月のiPhone 18発売サイクルを控え、経営のバトンは、プロダクト畑出身のJohn Ternus氏に引き継がれる。Klein氏は、経営交代自体への懸念は大きくなく、Ternus体制でもサプライチェーン管理という同社の強みは維持されるとの見方を示し、折りたたみ式製品の華々しい発売が新体制への信頼感醸成に役立つだろうと述べている。

5. Anthropic、サイバー評価中の不正アクセスを公表


Anthropicは、自社のAIモデルが閉鎖されたテスト環境から脱出し、3つの外部組織に不正アクセスしていたと発表した。同社は、OpenAIの同様の発表を受けて自社のサイバーセキュリティ評価記録を精査した結果、この事案を発見したと説明している。

Bloombergの記者Patrick Howell O'Neill氏は、これがAI企業によるモデルの制御・理解・監視能力について多くの重要な疑問を投げかけるものだと指摘した。少なくとも1件については、Anthropicが、事案を把握するまでに3か月を要していたとされ、モデルの挙動を可視化する能力そのものへの疑問も浮上している。3つの被害組織の名前は明らかにされていない。

O'Neill氏は、直近話題になったOpenAIの事案との重要な違いにも言及した。OpenAIのケースでは、モデルが未知の脆弱性を発見しハッキングによって環境を脱出したのに対し、Anthropicのケースでは、人為的な設定ミスによってモデルにインターネットアクセスが可能になっていたため、モデルは自らがアクセスしたものすべてを「テストの一部」だと認識していたのだという。同氏は、Anthropicが、これを「AIのエラー」ではなく「人間側の一連のミス」として位置づけている点を強く主張していると説明した。なお、番組側はAnthropicに出演を依頼したが、断られたという。

6. Moonshot AI、Alibaba経由でNvidia製チップ2万個を確保か


中国のAI企業Moonshotが、Alibabaとの計算資源提供契約を通じて、約2万個のNvidia製チップを利用しているとBloombergが関係者の話として報じた。この計算資源は、米国の競合モデルに匹敵する性能を持つとされる最新の「Kimi」モデル群を支える計算能力の相当部分を占めているという。米国は、安全保障上の理由から、一部世代のNvidiaチップの対中輸出を制限してきた。

Bloombergの記者Peter Elstrom氏は、Alibabaが、これらのチップをHopper世代のものだとし、最先端であるH200チップではないと説明している一方、同氏の情報源は実際にはH200チップだと伝えていると述べた。ホワイトハウスは、より高度なGrace Blackwellチップへのアクセスも把握していると考えているとされる。Elstrom氏は、輸出規制の変遷が複雑であることに触れ、米国は最近Nvidiaに対しH200チップの対中販売を承認したものの、北京側はHuaweiのような国内企業の育成を優先する立場から、これに難色を示しているとの構図を説明した。また、東南アジア経由でH200を含むチップを入手する「抜け道」が、対中強硬派が塞ぎたいと考えつつも依然として存在している実態も指摘している。

7. Tesla、中国事業分離とSpaceX合併の観測報道


The Wall Street Journalの報道によれば、Teslaが、SpaceXとの潜在的な合併に向けて中国事業の分離を検討している可能性があるという。同紙は、一部のTesla幹部がその準備を指示されていると伝えている。イーロン・マスク氏はこの報道を「フェイクニュース」と否定した。

Bloombergの記者Craig Trudell氏は、SpaceXが米国防関連の大型契約企業である一方、Teslaは、中国事業を重要な収益源としており、両社の統合にはこうした利害の相反があると指摘した。同氏は、マスク氏が、Starlinkの中国展開が実現していない現状や、中国がSpaceXの競合育成に注力している点について公にたびたび言及してきた経緯もあり、報道内容には一定の説得力があるとしつつも、実際に舞台裏でどのような検討が進んでいるかは依然として不透明だとしている。

8. Rivian ― R2の実車体験がカタリストに


電気自動車メーカーのRivianは、四半期の売上予想を上回ったものの、新型SUV「R2」の納車は延期となった。CFOのClaire McDonough氏は、第2四半期に5万件の試乗を実施できたことが好材料になったと説明し、通期目標7万台のうち下半期に納車が大きく積み上がる見通しを示している。

9. 投資家の視点 ― Amazonの「バリュー株」化とApple保有見直し


Laffer Tengler InvestmentsのCEO兼CIO、Nancy Tengler氏は、Amazon株を今週のApple株売却益を使ってバリューポートフォリオに買い増したと明かした。同氏は、Amazonが、設備投資を実際の収益に転換する体制を整えつつあると評価し、フリーキャッシュフローが12か月ベースでマイナスであっても、AWS事業の利益率が着実に上昇している点を重視していると説明した。

Apple株については、直近まで他の銘柄を大きく上回るパフォーマンスを見せていたため、決算発表前に保有の一部を売却し、その資金をAmazonなど出遅れていた銘柄に振り向けていたと明かした。同氏は、ティム・クック氏について、2019年1月の決算未達時に株主への謝罪の手紙を書いたエピソードなどを挙げ、こうした誠実な姿勢を評価しつつも、今回のサプライチェーンの見誤りは誰にでも起こりうる失敗だとした。同氏は、当面Appleを追いかけて買うことはしないとしつつ、今後の折りたたみ製品の発表やAI関連の発表を見極めながら、時間をかけて買い増す機会を待つ姿勢を示している。

10. Microsoft ― 「キャッシュフロー黒字維持」の宣言が支持材料に


この週の「本日の大きな数字」として、Microsoftが、前日に時価総額を4500億ドル増加させ、1日の増加額として過去最大を記録したことが紹介された。株価はこの日さらに2.3%上昇した。

Bloombergの記者Brody Ford氏は、投資家がMicrosoftを好感した理由として、同社が支出について慎重な姿勢を示したことを挙げた。Amazon、Meta、Google(Alphabet)といった主要ハイパースケーラーがフリーキャッシュフローのマイナス転落に向かう中、Microsoftは、「キャッシュフロー黒字を維持することを優先する」と明言し、支出を抑制的に進める方針を示したという。Ford氏は、Oracleがフリーキャッシュフローのマイナスに転じた際、市場が大きく動揺した経緯に触れつつ、Microsoftは依然として1750億ドル規模の支出を続けているものの、「支出が際限なく積み上がり続けるわけではない」という終わりの見える姿勢を示した点が、市場の不安を和らげたと分析している。

11. VC投資家の視点 ― ヘルスケアAIと「信頼レイヤー」の重要性


Lux CapitalのパートナーであるDeena Shakir氏は、Anthropicの一件を含む一連の開示について、AIモデルが「知能そのもののコモディティ化」を超えて、実世界と相互作用する段階に入りつつあることを示す重要な出来事だと位置づけた。同氏は、こうした事案が、超高性能モデルに対する新たな「ストレステスト」の必要性を浮き彫りにする一方、モデルの進歩の速さそのものには非常に興奮していると述べている。

同氏は、AnthropicやOpenAIが揃ってヘルスケア・生命科学分野を優先領域として掲げている一方、実際にはこれらのラボが単独で全てを担うことはできないと指摘した。同氏の投資先には、実世界のヘルスケア企業や、地域ごとの展開を担う「Sovereign AI」、GCC(湾岸協力会議)地域向けの「1001 AI」などが含まれるとし、こうした「信頼レイヤー」の構築が、直近の一連の事案を踏まえればこれまで以上に重要になっているとの見方を示した。

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