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レイ・ダリオ氏「AIバブルの兆候は古典的パターンと一致」― 資産防衛と世界秩序の行方を語る

Bridgewater Associates創業者のレイ・ダリオ氏が、ポッドキャスト「The Diary of a CEO」に出演し、AI市場のバブル的な兆候、資産防衛の方法、そして自身が提唱する「80年周期」の世界秩序論について語った。なお、本内容は情報提供を目的としたものであり、特定の資産配分や投資判断を推奨するものではない。


1. 「これは典型的なバブルの兆候だ」


ダリオ氏は、著名投資家Jeremy Grantham氏が、AIバブルとその崩壊リスクを指摘していた点について問われ、「彼は正しい」と述べた。同氏は、結論に飛びつくのではなく、その背景にある因果関係を説明したいとし、バブルとは、価格が大きく上昇し企業が好業績を上げた後に崩壊する現象であり、それが経済や市場全体に影響を及ぼす点を、1929年の大恐慌や2000年のドットコムバブルを例に説明した。

同氏は、革新的な新技術が登場すると、人々はそれに熱狂し、価格そのものへの注意を欠いたまま借金までして投資に走る傾向があると指摘した。「富(ウェルス)」と「お金(マネー)」は同じではなく、資産価値が上がっても、それを使うにはまず売って現金化する必要があるという。金利上昇や税制変更などをきっかけに資金需要が生じると、こうした資産の「売り」が連鎖し、バブルが崩壊するメカニズムを説明した。

2. バブル崩壊の具体的な仕組み ― 担保価値の逆回転


ダリオ氏は、AI関連株を例に、バブル崩壊のメカニズムを具体的に説明した。ある企業の株を100ドルで購入し、その評価額を担保に銀行から50ドルの融資を受けたとする。その後、何らかの経済的ショック(戦争など)が起きて投資家が一斉に資産売却に走ると、株価が25ドルまで下落する。しかし、借入は、50ドルのままのため、25ドルの「穴」が生じ、慌てて売却せざるを得なくなる。この連鎖が資産価格全体の下落と支出の縮小を招き、バブル崩壊が本格化するという。

同氏は、こうした急激な変化の局面では、AI事業を営む者自身でさえ、市場に流入する資金がどれだけになるかを正確に見通すことはできないと指摘した。投資が不十分であれば競合に後れを取り、逆に巨額投資をすれば見積もりの精度を欠くというジレンマが、この「問題」の本質だとしている。

3. 「5000万ドル調達すれば10億ドル企業のCEOになれる」仕組み


ダリオ氏は、現在よく見られる資金調達の形として、5000万ドルを調達し企業評価額を10億ドルとするケースを挙げた。実際に投じられた資金は、5000万ドルに過ぎないが、その評価額に基づけば創業者は、「億万長者」になるという。しかし、その株式の価値は、売却して現金化しない限り使えないとし、金利上昇局面では、債務保有者がより多くの資金を用意する必要に迫られ、これがバブル崩壊の引き金の一つになると説明した。

4. 「株式の大量発行」がバブルを崩壊させるもう一つの要因


ダリオ氏は、需要側の要因(前述の資金調達や富の創出)に加え、供給側の要因、すなわち株式の発行のしやすさもバブル崩壊を招く一因だと指摘した。株式ほど「発行しやすい」ものは他にほとんどなく、市場が株式を欲しがっている局面では、それに応じて株式の供給が増えていくという。この供給増と、前述の資金需要とが重なることで、バブルが弾けるメカニズムが完成するとしている。

5. バブルの兆候 ― 「弱い手」に渡っているか


現在バブルの兆候が見られるか問われたダリオ氏は、「典型的な兆候が見られる」と答えた。同氏は、バブルかどうかは白黒の判断ではなく「程度の問題」だと強調しつつ、誰がその資産を保有しているか(「強い手」か「弱い手」か)にも注目すべきだと述べた。知識の乏しい投資家が、レバレッジをかけて多額の資金を投じたり、レバレッジ型ETFのような商品に手を出したりする状況は、賭博に近い行動であり、バブルの兆候の一つだという。

同氏は、ある知人(AI企業を経営)から聞いた話として、「市場が下落し投資家が弱気になれば、経営難に陥る競合を買収できる」との考えのもと、今のうちに数億ドル規模の資金調達を進めているという事例を紹介した。同氏はこれを、株式供給の増加に寄与する典型例だと位置づけている。

6. 資産防衛の基本 ― 「分散」と生活防衛資金


一般の人々や起業家がバブル崩壊にどう備えるべきか問われたダリオ氏は、未来は本質的に予測不可能であり、洗練された投資家でさえバブルのタイミングを正確に読むのは難しいと述べた上で、「重要なのは、常に分散すること」だと強調した。同氏自身、無一文だった時期から巨額の資産を築くまでのサイクルを経験してきたとし、当時「もし収入が途絶えたら何か月生活できるか」を数えていたと振り返った。

資産クラスとしては、現金(預金・MMFなど)、株式、金、債券、住宅、ビットコインを挙げた。現金は、最も安全だと思われがちだが、インフレの影響で長期的には最も低いリターンしか得られない資産だと指摘し、現在のインフレ率(年3.5〜4%程度)を踏まえれば、預金にはその分の目減りがあり、さらに得られた利息にも課税されると説明した。

7. 金・債券・住宅・ビットコインの位置づけ


ダリオ氏は、株式・現金・金・債券・住宅・ビットコインがそれぞれ異なる要因で値動きするとし、これらを分散して保有することがリスクを抑えつつリターンを維持する鍵だと述べた。同氏の個人的な見解として、住宅購入には、「強制貯蓄」効果や税制優遇があるとしつつ、資産全体の中では金を特に興味深い資産だと位置づけた。理由として、金は、1971年まで「貨幣」そのものであり、現在も世界第2位の準備通貨としての地位を保っている点、そして、株式や債券などの資産価値が下落する局面でむしろ値上がりする傾向がある点を挙げている。

ビットコインについては、自身のポートフォリオの約1%を保有しているとしつつ、金とは異なりテクノロジー(量子コンピューティングなど)によって影響を受けうる点、そして、各国政府が、「望まなければどうにでもできる」権限を持つ点を理由に、中央銀行が大量に保有することは考えにくいと指摘した。同氏は、資産の5〜15%程度を「印刷できない資産」として金のような「ハードマネー」に配分することを推奨するとしつつ、この点については、ビットコインより金を選好していると述べている。

8. AI時代の勝者と敗者


AIとロボティクスが雇用と社会に与える影響について、ダリオ氏は、人類の歴史を農業時代・産業革命(機械が人間の肉体労働を代替)・そして、現在(AIが人間の思考・推論の一部を代替)という進化の延長線上に位置づけた。同氏は、この進化から恩恵を受けるのは、「労働者を代替するアイデアを持つ資本家」であり、企業収益に占める労働者への分配率は低下し、資本の所有者への分配率が上昇していると指摘した。

同氏は、株式を保有しているかどうかで大きな格差が生まれている実態にも言及し、米国成人の約61%が、何らかの形で株式を保有しているものの、その大半は退職金プランを通じた間接保有であり、証券口座を通じて直接個別株を保有しているのはわずか20%程度に過ぎないと説明した。上位10%の世帯が株式全体の約90%を保有しているというデータも紹介している。

9. 「シリコンバレーの楽観論」への懐疑


「産業革命でも同様の懸念があったが、結局新しい仕事が生まれた」というシリコンバレー発の楽観的な語りについて問われたダリオ氏は、この語りが技術を作る側の経済的利害と無関係ではない可能性があると示唆した。同氏は、身体的労働に続いて頭脳労働までもが代替される今回の変化は、過去の産業革命とは質的に異なると指摘し、「身体と頭脳の両方が代替された時、人間には何が売れるのか」という問いを投げかけた。同氏の答えは、「感情」と「直感」――AIが持ち得ないものだという。当面は、卓越した人間の知性とAIとをパートナーシップとして活用できる人々が、この変化の最前線に立つだろうとの見方を示している。

10. 「80年周期」と現在の位置づけ


ダリオ氏は自身が提唱する「大きな周期(ビッグサイクル)」の枠組みについて説明した。同氏によれば、この周期は平均して人の一生に相当する約80年続き、通貨秩序・国内政治秩序・地政学的秩序が同時に崩壊と再編を繰り返すという。前回の大きな転換点は、1945年だったとし、現在の米国・英国など複数の国は、過剰債務、国内の分断、覇権の変化という複数の要因が重なる「衰退・崩壊期」にあると分析した。

同氏は、この大きな周期とは別に、平均6年程度(前後3年の幅)で繰り返される、より短い好況・不況のサイクル(金融引き締め→景気後退→金融緩和→好況→バブル→引き締めの繰り返し)も存在すると説明し、両者を区別して理解する必要があると強調している。

11. 富の格差と「金メッキ時代」


産業革命がもたらした「金メッキ時代(ギルデッド・エイジ)」との類似性についても言及があった。ダリオ氏は、資本主義そのものは支持しつつも、それが所得・富の大きな格差を生み出す現実は認識すべきだとし、富裕層が、子どもに質の高い教育を与えられることが、機会格差の拡大にもつながっていると指摘した。同氏は、コネチカット州(1人当たり所得で全米2位相当)の自宅周辺の例を挙げ、高校生の22%が中退または出席率25%未満の状態にあり、これがギャング・銃撃・薬物問題、そして、収監コストの拡大(教育予算を上回る規模)につながっている実態を紹介した。

12. 富裕税を巡る論争 ― 「良いアイデアか」


英国や米国で議論されている富裕税(純資産1000万ドル超への2%課税など)について問われたダリオ氏は、その仕組み上の難しさを指摘した。富裕層に課税するには資産を売却して現金化する必要があり、それ自体がバブル崩壊の引き金になりうるという。同氏は、資産の正確な評価が難しい点や、富裕層の国外流出リスクにも言及しつつ、「富の大部分は投資に使われている」ため、単純な富裕税や移転支払いは社会全体の生産性向上に使われるべき資金を消費に回してしまうリスクがあると指摘した。

同氏は、望ましいアプローチとして、富の集中を防ぐための「巨額の資産を長期間にわたって溜め込ませない」仕組みや、死亡時の資産評価の見直し(ステップアップベーシスの調整)など、経済への悪影響を抑えつつ税収を確保する方法があるとしつつ、教育・生産性向上への投資と組み合わせる必要があると述べている。なお、この論点については賛否両論があり、支持派・反対派それぞれに一定の論拠があることも付言しておきたい。

13. 英国は「古典的な衰退サイクル」の只中に


英国が最近7年のうち6回も首相交代を経験している点について、ダリオ氏はこれを「古典的なサイクル」の表れだと分析した。過剰債務・生産性の低さ・十分な資金の欠如が重なると、国内政治の対立が激化し、新指導者への期待とその失望が繰り返されるという。同氏は、こうした局面では通貨の増発によるインフレと債務再編(満期の延長など)の組み合わせ、そして資本規制(資産を持って国外に出られなくする措置)が講じられる傾向があるとした。

解決策として同氏は、党派を超えた「強い中道」の必要性を強調し、経済に精通した両党の専門家からなる超党派委員会が、痛みを伴う困難な改革プランを共同で策定し、それを実行するという歴史的な前例(米国憲法制定など)を挙げている。ただし同氏はこれが「非常に困難で、実現の見込みは薄い」現実的な道だとも認めている。

14. 21歳の起業家なら ― 「国境を越えて存在せよ」


もし自身が21歳の起業家だったら、英国で起業するかと問われたダリオ氏は、「国境にとらわれず存在すること」を勧めると答えた。世界には活力と資本、そして、必要な要素が揃った「ルネサンス国家」とも言える場所があり、そうした場所に身を置き、かつ一箇所に留まらないことが重要だとした。中国の格言を引用し、「賢いウサギは3つの巣穴を持つ」という考え方を紹介している。英国については、困難な状況を全体としては抱えつつも、その中に活力ある「ポケット」も存在するとし、米国にも同様の構図があると分析した。

15. 米中の覇権交代 ― 「地域化」がもっとも望ましい結末


過去500年の歴史を踏まえ、世界秩序が複数の超大国の並立に向かう可能性について問われたダリオ氏は、第一次世界大戦以前は世界が「一つ」ではなく、複数の地域にそれぞれ強国が存在していたと説明した。今後最も望ましい結末として、米中両国がそれぞれの地域(米州圏とアジア太平洋圏)における影響力を保ちつつ、世界規模の大戦を回避する「地域化」のシナリオを挙げている。台湾を巡る問題についても、軍事的な衝突ではなく、経済的・外交的な圧力を通じた「統一」に向かう可能性が最も高いとの見方を示した。

16. イラン紛争が示す「米国の脆弱性」


イランを巡る米国の軍事的関与について、ダリオ氏はこれを「大きな誤りだった」と評した。同氏は、アジア諸国の指導者たちと話す中で、米国が、戦争を望んでおらず、ガス価格や人的損失への国内世論の懸念から長期戦を続けられないという実態が、国際的に露呈しつつあると指摘した。同氏は、これが台湾海峡やフィリピンなど他の地域における米国のプレゼンスへの信頼にも影響し、覇権国としての影響力が徐々に侵食されていく構図を、かつての大英帝国の衰退になぞらえて説明している。なお、この評価はダリオ氏個人の分析であり、異なる見方をする専門家も存在する点には留意されたい。

17. 若者への助言 ― 「自分の"性質"を知ること」


自身に16歳の子どもがいたら何を助言するかと問われたダリオ氏は、まず「幸福と収入の間には、基本的な生活水準を超えると相関がほとんどない」と述べ、収入の最大化だけを目指すべきではないとした。同氏は、自身が孫たちに伝えている考えとして、「仕事と情熱を一致させること」、そして「お金の部分を忘れないこと」の両立を挙げている。

同氏は、人にはそれぞれ生まれ持った、あるいは幼少期に培われた「性質(ネイチャー)」があり、それに合った道を見つけることが重要だとした上で、将来どんな仕事が生き残るかを正確に予測するのは不可能であり、それよりも「AIのようなツールを最大限活用する能力を磨き、自分の有用性を高めること」こそが唯一の確実な指針だと述べている。同氏は自身が開発した無料の性格診断テスト「Principles You」(所要約30分)も紹介し、自身の「性質」を知る手がかりになるとした。

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