爆発から数週間、Blue Origin CEO「年内に再飛行する」——史上最大の事故からの異例の早期復帰宣言
2026年5月末、Blue OriginのNew Glennロケットがフロリダ州ケープカナベラルのテスト中に爆発した。宇宙産業の多くの関係者が「復帰は早くとも2027年」と見ていた中、CEO・デイブ・リム氏は爆発からわずか数日後の6月2日(月)、「2026年中に再び飛ばす」と明言した。
この発言は単なる強気なコメントではなく、Blue Originが置かれた戦略的な状況と、それに対する同社の判断を反映している。本記事では、New Glennの経緯、今回の爆発が意味すること、そして、今後の課題を整理する。
1. New Glennのここまでの軌跡
1-1. 長い開発期間と3回の飛行
New Glennは、長年にわたる開発と複数の遅延を経て、2025年1月に初飛行を果たした。
初回打ち上げでは上段ステージが軌道到達に成功したが、ブースター段は帰還中に爆発した。続く2回目の飛行(2025年11月)では、NASA向けの火星探査機2機を軌道投入し、ブースターの洋上ドローン船への着陸にも初めて成功した。そして3回目(2026年4月)では、2回目で回収したブースターを再利用したが、上段が失敗し、顧客(AST SpaceMobile)の衛星を失うという結果になった。
1-2. 4回目の打ち上げ直前の爆発
4回目はAmazonの衛星群を搭載する予定だったが、打ち上げ前のテスト中に爆発が発生した。幸いなことに、Amazonの衛星はまだ搭載されていなかったため、ペイロードの損失は免れた。
2. 爆発後の状況と「年内再飛行」宣言
2-1. 発射台は「想定より良い状態」
リム氏はX(旧Twitter)への投稿で、発射台インフラの多くが「予想以上に良好な状態」だったと説明した。また、別の飛行済みブースターと3基の上段ステージも「良好に見える」と述べた。
「今年中に再び飛ぶ」という彼の宣言は、宇宙業界の一般的な見方を大きく上回るものだ。爆発の規模と、Blue Originが現時点でNew Glennに対応できる発射台をケープカナベラルに1基しか持っていないことを考えれば、この発言が注目を集めるのは当然だ。
2-2. 爆発原因はいまだ未公表
一方で、爆発の原因について、Blue Originはまだ公式発表を行っていない。原因究明と対策の実施が復帰の前提条件となることは明らかで、「年内」という目標がどこまで現実的かは、その調査結果次第という側面もある。
3. SpaceXとの比較——発射台の違いが生む構造的なリスク
3-1. SpaceXが2016年の爆発から素早く復帰できた理由
SpaceXは、2016年にFalcon 9がケープカナベラルで爆発した際、数カ月という短期間で飛行を再開した。その背景には「別の発射台がほぼ完成していた」という事情がある。バックアップがあったことで、1基の発射台が使えなくなっても迅速に対応できた。
3-2. Blue Originは「発射台1基」という制約
Blue Originは、New Glenn専用の発射台を現在1基しか持っていない。第2発射台の建設は開始されているが、報道によればまだ「非常に初期の段階」にある。
この制約は、単なる設備の問題にとどまらない。発射台に損傷が生じた場合の復帰期間、複数の顧客向けミッションを並行して準備する能力、そして信頼性の高い打ち上げ頻度の確保——すべてに直接影響する構造的なリスクだ。
4. NASAとアルテミス計画への影響
4-1. Blue OriginはNASAの月探査に不可欠
NASAは、アルテミス月探査ミッションの一連の打ち上げにNew Glennを活用する計画を持っている。Blue Originは、New Shepardによる宇宙観光フライトを少なくとも2年間停止し、月探査プログラムへの対応に注力していると1月に発表していた。
New Glennの復帰が遅れれば、アルテミス計画のタイムラインにも波及する可能性がある。NASAにとっても、Blue Originの「年内復帰」という目標が現実になるかどうかは重要な関心事だ。
4-2. ロケット構成の変更はなし
一部では「爆発を機に、より大型・強力なNew Glennの改良版に直接移行するのでは」という見方もあった。しかし、リム氏はこの可能性を否定した。
変更されるのはロケットの輸送・垂直立て起こしの方法だ。従来の「トランスポーター&エレクター」と呼ばれる一体型装置から別の仕組みへの移行が検討されているが、詳細はまだ公表されていない。
