テキサス州が初めて公開した自動運転データ、Waymo 577台 vs Tesla 42台
2026年5月、自動運転車(AV)業界で注目すべき2つのニュースが同日に報じられた。一つは、テキサス州が新法に基づくAV登録データを初めて公開し、各社のフリート規模が可視化されたこと。もう一つは、Waymoが、Zeekr(中国・Geely傘下)製ミニバンをベースにした新型ロボタクシー「Ojai(オーハイ)」の試乗受付を開始したことだ。
両ニュースを合わせると、自動運転ビジネスの「現在地」がかなり鮮明に浮かび上がる。
1. テキサス州が初めて公開したAV登録データ
1-1. 新法による透明性の向上
テキサス州は、2026年5月28日に施行された新法により、AV企業に対して同州DMV(陸運局)へのフリート登録を義務付けた。これに伴い、州DMVは、ウェブサイト上でAVトラッカーツールを公開。各社が保有するAV台数やその他の安全情報が誰でも閲覧できるようになった。
公開データによれば、Alphabet傘下のWaymoはテキサス州に577台の自動運転車を登録しており、次いでAvride(317台)、Nuro(47台)と続く。Teslaは42台にとどまった。
1-2. 数字が示す各社の立ち位置
ただし、台数だけでは実態の全てを語れない点には注意が必要だ。NuroやZooxなどは現時点で商業運行を行っておらず、登録台数が実稼働数を意味するわけではない。また、Waymoは、この月、洪水問題への対処のため一部テキサス都市でのサービスを一時停止してもいた。
とはいえ、商業ロボタクシーサービスを展開する企業間での差は明確だ。Waymoは、2025年3月にオースティンで商業サービスを開始し、その後ダラス、ヒューストン、サンアントニオへと拡大している。一方、Teslaも昨夏オースティンでロボタクシーを始動させ、ダラス・ヒューストンへ展開したと公表しているが、登録台数での差は現時点で13倍以上ある。
1-3. 自動運転トラック分野も活発化
ロボタクシー以外の分野では、商業自動運転トラックを展開するAuroraが91台を登録。KodiakAIが33台、Waabiが13台、Gatik AIが64台と続く。自動運転の商業化は乗用車だけでなく、物流・輸送分野でも着実に進んでいる。
2. Waymoの新型ロボタクシー「Ojai」
2-1. 中国メーカーとの協業が生んだ量産モデル
Waymoが今回投入した「Ojai」は、中国のGeely Holdings傘下ブランドZeekrが製造したミニバンをベースにした電動ロボタクシーだ。スウェーデンでデザインされ、中国で製造された車体に、Waymo独自のハードウェアとソフトウェアを搭載している。
両社の提携は2021年に始まり、2022年末にコンセプト車両が公開された。以来、Waymoは約2年間にわたって公道でのテストを重ねてきた。
2-2. 第6世代システムと量産戦略
Ojaiには、13台のカメラ、4基のLiDAR、6基のレーダー、外部音声受信機アレイからなるWaymoの第6世代システムが搭載されている。この第6世代システムの特徴はモジュール性にあり、Zeekrミニバンのほか、すでに発表済みのHyundai Ioniq 5にも同じシステムを展開できる設計になっている。
現在Waymoのフリートは、約3,700台のJaguar I-Paceで構成されているが、Ojaiの量産によって年間数万台規模への拡大を目指している。
2-3. コスト削減と乗客体験の両立
Ojaiは、フラットな床面、低いステップイン高、両側へ開くゴンドラ式ドア、充電ポート、カップホルダー、拡張された足元・頭上スペース、点字ボタン、3枚の大型アダプティブスクリーンなどを備える。ルートの確認、音楽・空調の変更、チップの支払いなどがスクリーン上で操作できる。
内装の清掃のしやすさ、高速充電、モジュラー設計、バッテリー容量の増加なども特徴で、運用コストの削減と整備効率の向上を意識した設計になっている。
2-4. 課題も抱えるタイミングでの投入
Ojaiの登場は、Waymoにとって困難な時期と重なった。同社は高速道路での工事区間での挙動改善のため、ロサンゼルス・マイアミ・フェニックス・サンフランシスコで高速道路ライドを一時停止。アトランタとサンアントニオでも洪水対応のためにサービスを停止していた。
新型車両の投入がこれらの課題を一気に解決するわけではないが、規模拡大と収益化に向けた実質的な一歩である点は評価できる。
3. 競争構図と投資家への示唆
3-1. WaymoとTeslaの対比
テキサス州のデータが示すように、商業ロボタクシー市場での現時点のリーダーはWaymoだ。毎週50万回以上の有料ライドを提供してきた実績は、技術的な信頼性とオペレーション能力を示している。
Teslaは「FSDによる完全自動運転」というアプローチで独自路線を歩んでいるが、商業フリートの規模という観点では大きく差をつけられている状況だ。
3-2. 中国サプライチェーンの活用という選択
Waymoが、Zeekr(中国製造)を採用した背景には、コストと量産性の優先がある。車体はZeekrによって製造された後、米アリゾナ州のWaymo工場に送られ、そこで中国製コネクテッドカー技術を含まない形でWaymoの自動運転システムが搭載される。
米中関係の緊張が続く中で、ハードウェアのサプライチェーン選択は政治的リスクを内包している点も、投資家としては意識しておく必要がある論点だ。
