【5/9 - 5/15】注目の海外スタートアップの大型資金調達
AIブームといえばソフトウェアやモデル開発というイメージが強いが、2025年5月9日~5月15日の米国大型資金調達ランキングを見ると、資金の流れに変化が見え始めている。防衛テック、エネルギーインフラ、ロボット、宇宙、バイオ、そして室内農業——今週の上位10社はいずれも「物理世界」に根ざした事業を展開している。
本稿では、今週の大型調達ラウンドトップ10を整理し、各案件の背景と投資テーマとしての意味を解説する。
1. 注目案件の詳細
1-1. Anduril Industries——防衛テックの評価額が1年で2倍に
今週最大の案件は、防衛テックユニコーンのAnduril Industriesによる50億ドル(約7,500億円)のシリーズH調達だ。評価額は610億ドルに達し、1年足らず前の305億ドルからほぼ倍増した。
リードインベスターは、Andreessen HorowitzとThrive Capital。累計調達額は114億ドルに上る。カリフォルニア州コスタメサに本拠を置く同社は、自律型兵器システムや防衛向けAIプラットフォームを開発しており、地政学的緊張の高まりを背景に投資家の関心が集まっている。
防衛テックは従来、VCが距離を置く分野とされてきたが、近年は大手ファンドの参入が相次いでいる。Andurilの評価額の急拡大は、その象徴的な事例といえる。
1-2. VoltaGrid——データセンター向け「移動式電源」に10億ドル
2位はヒューストン拠点のVoltaGridで、HalliburtonとBlackstoneから総額10億ドルの戦略的投資を確保した。うち7.75億ドルが新規資本、2.25億ドルが既存投資家からのセカンダリー購入という構成だ。
同社はデータセンターやマイクログリッド向けに移動式天然ガス発電機を提供している。AIモデルの学習・推論に必要な電力需要が急増する中、既存の電力インフラが追いつかない地域での需要を取り込んでいる。エネルギーインフラとAIの交点に位置するビジネスモデルとして注目される。
1-3. Mind Robotics——Rivianスピンオフが4億ドルを調達
パロアルト拠点のMind Roboticsは、Kleiner Perkinsがリードする4億ドルの調達を完了した。累計調達額は10億ドルを超えた。
同社は2025年にRivian(電動ピックアップトラックメーカー)のスピンオフとして設立され、AI搭載の産業用ロボティクスプラットフォームを開発している。製造業や物流における自動化需要を背景に、設立初年度から大型調達を実現した点は注目に値する。
1-4. Cowboy Space——Robinhoodの共同創業者が宇宙へ
シリーズBで2.75億ドル(評価額20億ドル)を調達したCowboy Spaceは、宇宙空間でのAIコンピューティング基盤の構築を目指すスタートアップだ。ロケット開発と衛星インフラを組み合わせたアプローチが特徴。
同社の設立者は、個人投資家向け証券アプリRobinhoodの共同創業者Baiju Bhattだ。金融テックから宇宙テックへの転身という異色の経歴を持つ創業者が、Index Venturesのリードで大型資金を集めた。
1-5. Oishii——イチゴの室内農業に150億円
Jersey City拠点のOishiiは、高度に自動化された室内イチゴ農場を運営するスタートアップで、SPARX Asset Managementがリードする1.5億ドルのシリーズCを完了。累計調達額は3.7億ドルに達した。
食料安全保障や気候変動への対応として注目される垂直農業(バーチカルファーミング)分野だが、コスト面での課題も指摘されてきた。Oishiiのケースは、特定作物への特化と自動化技術の組み合わせにより、持続可能なビジネスモデルを模索していることを示している。
2. 中規模調達——AI・防衛・バイオの広がり
2-1. Exaforce(1.25億ドル)——AIネイティブのセキュリティ基盤
サンノゼのExaforceは、AIを中核に据えたセキュリティオペレーションプラットフォームを開発。HarbourVest、Peak XV(旧Sequoia India)、Khosla Venturesなど複数の著名VCから1.25億ドルのシリーズBを確保した。
サイバーセキュリティ市場ではAIを活用した脅威検知・対応の自動化が急速に進んでおり、同社もその流れに乗る形での大型調達となった。
2-2. Create Medicines(1.22億ドル)——自己免疫疾患・がんのin vivo免疫療法
Create Medicinesは、体内で直接免疫細胞を操作する「in vivo(生体内)免疫療法」に取り組むバイオスタートアップ。ARCH Venture PartnersやNewpath Partnersがリードし、1.22億ドルのシリーズBを調達した。
細胞療法の課題である製造コストや患者へのアクセス問題をin vivoアプローチで解決しようとする点が、投資家の関心を集めている。
2-3. HavocAI(1億ドル)——海・空・陸をまたぐ自律システム
ロードアイランド州のHavocAIは、軍用・商業用の自律システム開発ツールを提供。設立2年で累計2億ドルの調達に達した。今回のシリーズAは1億ドル。
海上・空中・陸上の3領域をカバーする点が特徴で、防衛テック投資の広がりを示す一例だ。
2-4. Star Catcher(0.65億ドル)——宇宙空間の「電力グリッド」構築
Jacksonville拠点のStar Catcherは、太陽エネルギーを宇宙空間で集め、衛星にオンデマンドで送電するインフラを構築しようとするスタートアップ。設立2年未満でB Capital、Shield Capital、Cerberus Venturesから0.65億ドルを調達した。
コンセプトの壮大さと創業間もない段階での大型資金調達は、宇宙インフラ分野への期待値の高さを反映している。
2-5. GridCare(0.64億ドル)——AIデータセンターの電力効率化
Redwood Cityのスタートアップ、GridCareは、AIデータセンターへの電力供給を効率化する技術を開発。Sutter Hill Venturesがリードし0.64億ドルのシリーズAを完了した。VoltaGridと同様、データセンターの電力問題にアプローチする企業として注目される。
オススメ記事
いいなと思ったら応援しよう!
この記事は noteマネー にピックアップされました

