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過剰資本時代のVC論:Sequoia流“複利思考”と創業者への賭け方

「なぜベンチャーキャピタル(VC)は壊れているのか?」。
Sequoia Capitalのパートナーであり、同社を代表する投資家の一人であるRoelof Botha(ルーロフ・ボタ)は、近年の講演やポッドキャストでこの問いに真正面から向き合った。
彼が語るのは、単なる投資論ではなく、「資本の過剰供給」「成功企業の希少性」「世代交代による文化的進化」という3つの構造変化である。本稿では、Bothaの発言を軸に、Sequoiaがいかに“壊れた”業界の中で「長期的価値創造」を追求しているかを解き明かす。


1. 過剰な資本と“リターンなきリスク”


1-1. 資本は増えても「偉大な企業」は増えない

Bothaは、こう語る。

「今のベンチャー業界には資金が多すぎて、優れた企業が足りない。」

現在、VC業界全体では年間1,500〜2,000億ドルが投資に回っている。
しかし、実際に10億ドル以上の価値でエグジット(上場または買収)する企業は1つの年代でわずか20社前後。
「多くの人がVCを“儲かる産業”と誤解しているが、実態は“リターンなきリスク(return-free risk)”だ」とBothaは指摘する。

1-2. ベンチャーの工業化とその限界

90年代のVCは「小さな職人集団」だった。
しかし、今や巨大組織化し、マーケティング・採用・データ分析など“工業的プロセス”が導入された。
Bothaはそれを肯定しつつも、「最終的に創業者の想像力と執念こそが成功を決定づける」と語る。

2. Sequoiaの戦略:長期保有と“パートナーシップ文化”


2-1. “Sequoia Capital Fund”による新構造

Sequoiaは2022年に「Sequoia Capital Fund」を設立した。
これは、上場後の株式をすぐに売却せず、長期保有して複利的な成長を享受する新しい仕組みだ。
Bothaは、「配当を急ぐのではなく、“次の偉大な企業”の時間軸で伴走する」と説明する。

この戦略により、過去3年半で67億ドルの追加リターンを得たという。
「我々の仕事は“EXIT”ではなく、“COMPOUND(複利的成長)”だ」という一言が象徴的だ。

2-2. 世代を超えるパートナーシップ

Sequoiaは創業者ドン・バレンタイン以来、“自分の代で終わらせない文化”を重んじてきた。
Bothaは語る。

「前の世代から“無料で”受け継ぎ、次の世代にも“無料で”渡す。それが我々の信条だ。」

この哲学により、同社は半世紀以上にわたり3世代のリーダーシップ交代を実現。
企業よりも“組織そのもの”を永続させる稀有な存在となった。

3. 創業者論:世界を変えるのは“扱いにくい天才”


3-1. 「例外的で、扱いづらい」創業者こそが成功する

Sequoia創業者ドン・バレンタインは若きBothaにこう語ったという。

「我々が儲けるのは、“例外的で、扱いづらい人間”のときだ。」

スティーブ・ジョブズのように“常識を拒む”創業者ほど、世界を変える。
Bothaは「彼らは“不快な現実”を見て、世界を書き換える力を持っている」と強調する。

3-2. “想像力の欠如”こそ投資家の失敗

Botha自身もTwitterやYelp初期投資を逃した経験を語り、
「投資の失敗は、常に想像力の欠如から始まる」と反省を込める。
彼のメンターであるマイケル・モリッツの“未来を描く力”を称えつつ、
「VCの本質は、数字ではなく“未来を信じる能力”にある」と語る。

結論:壊れたのは「資本」ではなく「視野」だ


ベンチャーキャピタル業界は確かに飽和し、過剰な資本に埋もれている。
だが、Bothaが示したのは単なる批判ではなく、「長期・創造・継承」という再生の道である。

「我々は“金を配る産業”ではない。“未来を育てる産業”だ。」

Sequoiaの歴史は、資本主義のもっとも理想的な形——“世代を超える創造的共同体”の証明なのかもしれない。

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