Google、6日間でAI幹部4名が離脱 ― AdlerとPritzel氏がAnthropicへ、ShazeerはOpenAIへ
2026年6月24日、Bloombergは、Googleの上級AI研究者2名がAnthropicへ移籍する計画であると報じた。これは単発の人事ニュースではない。わずか6日間で4人の有力なAI人材がGoogleから競合に流出するという、近年でも異例の集中度を持つ「人材エクソダス」の一部だ。OpenAIとAnthropicが共に上場準備を進めるなか、株式によるインセンティブが優秀な研究者を惹きつける構図が鮮明になっている。本稿では、ビジネスパーソン・投資家の視点からこの動きを整理する。
1. 新たに流出した2人 ― Jonas Adler氏とAlexander Pritzel氏
Bloombergの報道によれば、Jonas Adler氏とAlexander Pritzel氏は、いずれも社内でGoogleの主力モデル「Gemini」開発における重要な貢献者と見られている人物で、Anthropicへの移籍を計画しているという。
報道内容を整理すると、両者の役割は明確に異なる。
「Adlerは、同社のAIコーディング事業に取り組んでおり、Pritzelは、AIシステムの学習プロセスに関わっていた」
つまり、Adler氏は、Cursor・Codex・Claude Codeといった競合と直接対峙するAIコーディング領域の中核人材であり、Pritzel氏は、モデル学習そのものを担う基盤技術側の専門家だ。この組み合わせは、Anthropicが単なる人員補強ではなく、Geminiの内部知見そのものを取り込む狙いを持つとの見方を後押しする。
1-1. Googleが置かれている構造的なジレンマ
Bloombergは、Googleが生成AIブーム初期にOpenAIやAnthropicに後れを取り、昨年末になってようやく性能の高いモデルとチップで軌道に乗ったという文脈にも触れている。技術的な競争力を回復した一方で、人材面での引き留めという別の課題が浮上している格好だ。
2. わずか6日間で4人 ― 流出が加速する経緯
今回の2名の移籍報道は、孤立した出来事ではない。直前の1週間で、Googleはすでに2人の著名な人材を失っている。
2-1. Noam Shazeer氏のOpenAI移籍
Transformerの共同発明者として知られるNoam Shazeer氏は、2026年6月にOpenAIへの移籍を発表した。同氏は2000年からGoogleに在籍していたが、2021年に一度退社してChatbotスタートアップ「Character.AI」を創業。Googleはこの会社を実質的に27億ドルで「アクイハイア(人材獲得型買収)」し、Shazeer氏をGemini開発に呼び戻した経緯がある。それからわずか2年足らずでの再離脱となった。
2-2. ノーベル化学賞受賞者John Jumper氏のAnthropic移籍
Shazeer氏の発表からわずか数日後、Google DeepMindのディレクターであるJohn Jumper氏もAnthropicへの移籍を表明した。Jumper氏はDeepMind CEOのDemis Hassabis氏とともに、タンパク質の3次元構造予測モデル「AlphaFold」の研究で2024年ノーベル化学賞を受賞した人物であり、Googleの基礎研究力を象徴する存在だった。
3. なぜ今、人材流出が加速するのか
TechCrunchの記事は、この一連の流れの背景を次のように分析している。
「OpenAIとAnthropicが上場準備を進めるなか、この傾向は続く可能性がある。優秀なAI人材を株式の約束とともに引き込むには、今が絶好の機会だ」
上場前の企業に参画することは、株式が将来大きく価値を増す可能性を伴う。Googleのような巨大上場企業が提供できる報酬パッケージでは、こうした「アップサイド」を再現しづらいという構造的な差が背景にあると考えられる。
3-1. 計算資源の配分という内部要因も指摘
一部報道では、Shazeer氏の離脱表明の直前に、同氏が手がけていたプロジェクト向けの計算資源がロンドンのDeepMindチームに再配分されていたとも伝えられている。チーム間の連携強化や事前学習業務の効率化を狙った措置とされるが、こうした社内の優先順位の変化も、トップ研究者の動機に影響を与えた可能性がある。
