SURIが示した“サステナブル×顧客体験”で電動歯ブラシ市場を制す戦略
電動歯ブラシ市場は、機能性やデザインで差別化が図られる一方、使い捨て文化や過剰包装が常態化し、消費者体験は、「平均」で止まっている。しかし、サステナビリティとユーザー体験を徹底的に追求した新興ブランド「SURI」は、この常識を覆し、立ち上げからわずか3年で売上30億円超、4.8/5.0のTrustpilot評価(10,000件以上)を獲得。創業者2名の出会いからプロダクト開発、マーケティング戦略、チームビルディングまで、その成功の軌跡には「真のイノベーション」を生む共通点がある。本稿では、Founder Podcastのインタビューをもとに、SURIがどのように世界で最も愛される電動歯ブラシを築き上げたのか、多角的に解説する。
1. アイデア誕生のきっかけ
1-1. Cannes Lionsでの運命的な出会い
創業者GyveとMarkは、広告業界の祭典「Cannes Lions」で偶然出会った。Gyveは、UnileverのCMOからの誘いでパーティへ赴き、そこでWPP創業者Sir Martin Sorrellと親交を深めた経験を持つ。
1-2. 大量廃棄への問題意識
「毎年40億本もの歯ブラシが埋め立て地に捨てられている」との調査結果に衝撃を受けた2人は、10年以上使われ続けるプラスチック製品の廃棄問題に目を向ける。「消費者体験を、Appleのように洗練できないか?」という問いが、サステナブルな歯ブラシ開発への原動力となった。
2. 顧客インサイトと差別化戦略
2-1. 5,000件の徹底インタビュー
市場調査には、SurveyMonkeyを活用し、男女・地域・所得層を問わず5,000人以上の消費者にヒアリング。
「毎回底部にたまるヌメリが不快」
「Bluetooth機能は使わない」
「旅行時には嵩張って持ち運びたくない」
といった“痛点”を洗い出し、競合が見落とす細部を徹底的に把握した。
2-2. サステナビリティ機能
バッテリー持続40日:標準的な歯ブラシの7倍以上
植物由来ブラシヘッド+無料リサイクル回収
アルミニウムボディ:耐久性向上と高級感
これらを組み合わせ、「環境に優しく、使うほどに愛着が湧く」プロダクトを実現した。
2-3. ミニマルで修理可能なデザイン
「修理して長く使えることが、本質的な持続可能性だ」との信念から、分解・洗浄が容易な構造を採用。ユーザーが自らメンテナンスできる点も差別化要素となった。
3. 立ち上げと資金調達
3-1. エンジェルラウンドで80万ポンド調達
アイデア段階からビジョンを提示し、エンジェル投資家から約80万ポンド(約1.4億円)を獲得。プロトタイプ開発と工場との交渉資金とした。
3-2. 工場交渉の苦闘
24社ものアジア工場を訪問し、「こんな仕様は不可能」と言われながらも粘り強く交渉。Markの“交渉力”とGyveの“情熱”が相まって、最適なパートナーを見つけ出した。
4. マーケティング/販路戦略
4-1. D2C起点の広告テスト
ランディングページABテスト:Meta広告でクリエイティブとメッセージを検証
事前登録ページ:製品ロイヤリティと価格感度を測定
この段階で得たデータをもとに、本格ローンチ時の広告予算配分を最適化した。
「広告で得た最初の売上が、ブランド成長の土台になる」
4-2. PRとアワード活用
主要ジャーナリストへサンプル送付:「英国No.1電動歯ブラシ」と絶賛レビューを獲得
Sunday Times Earth Fund賞(25万ポンド)受賞:無料広告枠を獲得し、富裕層読者への認知向上
4-3. オムニチャネル展開
D2C(自社サイト):ブランドストーリー訴求
Amazon/Boots/Selfridges:生活者が日常的に訪れる店舗・プラットフォームでの接点強化
GoopやArowana(ロサンゼルス):プレミアム店舗への出店でセレブ層へのリーチ拡大
「D2Cはチャネルの一つ。ブランドは“どこで買いたいか”を尊重し、顧客体験を設計すべきだ」とMark。
5. 顧客体験とリテンション
5-1. 手厚いカスタマーサポート
初期の物流トラブルでは、3,000件超の未出荷対応を全件パーソナルメールでフォローアップ。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。発送が完了次第、再度ご連絡します」
という丁寧なコミュニケーションが、逆に顧客ロイヤリティを高めた。
5-2. クチコミの拡大
Trustpilotで4.8/5.0(10,000件超)の高評価を維持し、実際に使ったユーザーが「歯磨きが楽しくなった」「毎日使うのが待ち遠しい」と発信。
口コミは第1の成長エンジンとなり、友人・家族への紹介が売上を押し上げた。
6. 成功要因と今後の展望
6-1. 持続可能なビジネスモデル
「利益を追わない事業に、持続可能性はない」という理念のもと、初年度から黒字化。過度な資金調達やブランド買収に頼らず、健全な成長を維持している。
6-2. 創業者間の信頼とカルチャー
オンライン会議が多い中、率直な対話を重ねる「Friday苦言セッション」を実践。
「Zoom越しの12時間対話で互いの誤解を解き、信頼を深めた」
この“ソフトスキル”がチームのスピードと品質を支えている。
6-3. 次なるイノベーションと海外展開
“ゲームチェンジャー”となる新機能を複数準備中。D2Cで得た知見を糧に、提携先との協業モデルや新市場開拓を視野に入れる。
7. 起業家へのアドバイス
7-1. 完璧主義を手放し、継続的に改善
初期のブランディングやUXは「完璧ではなかった」が、公開→改善サイクルを高速に回した。
「完璧を目指すな。今日できるベストを出し、明日また改良せよ」
7-2. 顧客の声を最優先に
投資家やメンターの意見よりも、実際のユーザー調査結果を重視。外部ノイズに惑わされず、消費者が示す“真の要望”を追求すべきだ。
7-3. ジャーニーを楽しむマインドセット
成功の先にある“出口”ではなく、日々の成長プロセスを楽しむことの重要性を痛感。
「最もエピックな瞬間は、ダウンタイムを乗り越えた後の小さな勝利の連続」
上記の7つの視点から浮かび上がるのは、SURIが“持続可能かつ真に顧客に愛される製品”を、徹底した顧客理解と柔軟な組織文化で実現した点だ。起業家はこの成功事例から、環境配慮とユーザー体験の両立、現場の声を重視する姿勢、そして旅(Journey)を楽しむマインドセットを学び取ることができるだろう。
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