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テスラ、2年ぶりのフリーキャッシュフロー赤字 ― イーロン・マスク氏「無駄にならない範囲で最大限投資する」

2026年7月、米テック業界の決算シーズンが本格化する中、AI投資をめぐる市場の評価が大きく揺れています。アルファベット(Google親会社)は、設備投資計画を上方修正した一方でフリーキャッシュフローが上場来初めてマイナスに転じ、テスラも、2年ぶりのキャッシュ流出を記録しました。さらに、モビリアイの創業者兼CEOが退任を発表し、IBMは、メインフレーム事業の減速で通期見通しを引き下げるなど、AI関連の設備投資と収益性のバランスをめぐる論点が一気に噴出した一日となりました。本稿では、Bloomberg Techの番組内容をもとに、各社の決算・経営動向を整理し、投資家・ビジネスパーソンが押さえておくべきポイントを解説します。


1. テスラ:過去最大級の資本支出とキャッシュ流出


テスラの株価は、前年の下落幅として最大級を記録し、2025年8月以来の安値水準まで下落しました。背景にあるのは、電気自動車(EV)の四半期販売が好調だった一方で、AI関連投資による2年ぶりのフリーキャッシュフローのマイナスです。

イーロン・マスクCEOは決算説明会で、設備投資の方針について次のように述べています。

「無駄にならない範囲で、できる限り速いスピードで投資すべきだ」

さらに、「極端な資本効率の高さを狙っているわけではない」とも説明し、資本効率とスピードのバランスを取りながら投資を進める姿勢を示しました。

Tigris Financial PartnersのCOOは、番組内で、テスラが自動車企業ではなく、一貫して「テクノロジー企業・AI企業」として評価されてきた経緯を指摘し、ロボタクシーやヒューマノイドロボット「オプティマス」など今後の成長ドライバーが実現するまでには相応の時間がかかるとの見方を示しました。同氏は、過去の値動きを踏まえれば今回の下落も押し目買いの機会になり得るとの見解も述べています。

1-1. 非財務指標は着実に進展

決算で示された事業進捗としては、サイバーキャブの生産開始、従業員向け試乗の実施、ロボタクシー展開エリアのオースティンをはじめとする拡大、オプティマスの量産開始が年内に予定されていることなどが挙げられます。ただし、投資家からは「いつ・どのように収益化するのか」という具体性を求める声が強く、株価の下落につながったとみられます。

2. アルファベット:設備投資は最大2050億ドルへ、株価は急落


アルファベットは、今期、設備投資計画の上限を最大2050億ドルまで引き上げました。クラウド部門の売上は前年同期比82%増と好調でしたが、同社史上初めてフリーキャッシュフローがマイナスに転じたことが市場に強く意識され、株価は2025年5月以来の下落率となりました。

ゴールドマン・サックスのエリック・シェリダン氏(テクノロジー・メディア・通信グループ責任者)は、買い推奨を維持しつつも目標株価を440ドルから435ドルに引き下げました。同氏は、今回の決算について「シグナルとノイズが混在した内容」と評価し、YouTubeの成長継続やクラウド事業の再加速など長期的な強みは健在としながらも、外部との計算能力(コンピュート)契約拡大に伴う短期的なコスト増が投資家心理に影響したと分析しています。

2-1. 「トークン最大化」から「トークン最適化」へ

シェリダン氏は、さらに、AI業界全体が「トークン最大化(token maxxing)」から「トークン最適化(token optimizing)」へ移行しつつあると指摘しました。Gemini 3.5 Proの遅れなどにより、アルファベットが、一時的にモデル性能で最先端から後れを取った可能性があるものの、次世代モデル「Gemini 4」で巻き返しを図る姿勢をスンダー・ピチャイCEOが示したとされています。同氏は、AI経済の成長にはコスト低下(デフレ)が不可欠であり、これは過去のあらゆる技術シフトに共通する現象だと説明しました。

なお、アルファベットは、SpaceXの株式評価額約940億ドルを保有していることも明らかにしており、Anthropicへの出資と合わせ、前四半期だけで1,000億ドル規模の評価益を計上したとされています。ただしSpaceX株の多くはロックアップ制限下にあり、即座の現金化はできない点には留意が必要です。

3. モビリアイ:創業者シャシュア氏がCEO退任へ


自動運転技術大手モビリアイは、創業者兼CEOのアムノン・シャシュア氏が27年ぶりにCEOを退任すると発表しました。同時に発表された第2四半期決算は市場予想を上回り、売上高は5億800万ドルと2025年で最も好調だった四半期の水準を上回りました。それにもかかわらず、株価は2024年8月以来最大となる15%の下落を記録しています。

シャシュア氏は、退任の理由について次のように語りました。

「完璧なタイミングというものはないが、今がベストな時期だ」

同氏は、ソフトウェアスタックにおける未解決の科学的課題がなくなり、ロボタクシー事業などの技術基盤が整った一方、事業拡大には、「事業運営(オペレーション)」の専門性がより求められる段階に入ったとの認識を示し、自身は会長として長期的な技術戦略に専念する意向を明らかにしました。

3-1. 事業の軸は変わらず

シャシュア氏は、モビリアイの中核である半導体(SoC)事業について、年間約20億ドルの売上、約4億ドルの利益を生む「安定収益源」であり、これを縮小する考えはないと明言しました。その上でロボタクシー事業は、「目前」であるとし、フォルクスワーゲンとの協業によるオーランド・レイクノーナでの実証実験が順調に進んでいること、年内の商用展開開始を目指していることを説明しました。

4. IBM:メインフレーム減速で通期見通しを下方修正


IBM株は、2024年11月以来の安値水準まで下落しました。要因はメインフレーム関連の結果が予想を下回ったことによる通期売上見通しの引き下げです。

アービンド・クリシュナCEOは、未達となった大型商談について「取引自体は実在していたが、四半期末にかけて設備投資の再優先化が起きた」と説明し、案件の3分の1はすでに戻ってきていると述べました。同社はフリーキャッシュフローを維持しており、これは事業の生産性と確信の表れだとしています。

コスト面については、人員削減ではなく第三者(サードパーティ)支出の効率化を通じて対応する方針であることも示されました。

4-1. 1990年代との違いは「コスト構造」

Bloombergのロメイン・ボスティック氏は、1990年代のメインフレーム不振との類似性について質問しましたが、クリシュナ氏は、「当時と異なり、現在はメインフレームが単位コストで5〜15倍安い」と反論しました。最新機種「z17」は容量ベースで130%の成長を記録しており、購入企業の85%が容量を増強しているとのデータも示されました。

同氏はまた、テクノロジー支出が企業予算全体に占める割合について「30年前の約3%から現在は5〜6%程度まで拡大しており、2035年までに10%に達しても驚かない」との見通しを述べています。量子コンピューティングについては「もはやムーンショットではなく、今後5年でエンジニアリングの領域に入る」とし、2029年までに1億回規模の大規模量子計算を実現するマシンの提供を目指す考えを明らかにしました。

5. その他:半導体・ベンチャーキャピタル動向


このほか番組では、OpenAIの初期投資家であるコースタル・ベンチャーズ(Khosla Ventures)が新規ファンドで55億ドルの調達を進めているとの報道や、中国Moonshot社のAIモデル「Kimi K3」をめぐり、米ホワイトハウス科学技術政策局のマイケル・クラツィオス局長が「タイを経由したNvidiaチップの不正調達」および「米国製モデルからの蒸留(distillation)」の疑いを指摘したことも取り上げられました。真偽については米国内でも議論が分かれており、今後の展開が注目されます。

なお、メモリ価格の高騰を背景に、Micronが、テスラ向けに大口のメモリ供給枠を確保したことも明らかになっており、半導体関連株の一部に買いが入る場面も見られました。

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