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Binanceから次のステージへ——CZが語るクリプトの未来

ARK Investのポッドキャスト「FYI(For Your Innovation)」に、Binance創業者のCZ(Changpeng Zhao)が登場した。聞き手は、ARK InvestのCEOであるKathy WoodとリサーチディレクターのLorenzo。テーマは、CZの半生と、クリプト産業の現在地、そして、今後の展望だ。

CZは、2023年末にBinanceを離れ、米国司法省との和解・4ヶ月間の収監を経て、現在は投資活動とWeb3教育に注力している。その立場から語られる業界観は、一線を退いた後も鮮度を保っている。本稿では同ポッドキャストの内容を整理し、投資家・ビジネスマンにとって参考になるポイントを解説する。


1. CZのキャリアとBinanceの軌跡


1-1. 中国からカナダ、そして暗号資産の世界へ

CZは、中国の農村で生まれ、12歳でカナダに移住。McGill大学卒業後は東京に勤務し、その後、ニューヨークのBloombergで開発者としてキャリアを積んだ。Bloomberg時代には60〜80人規模のチームを率い、2005年には上海に戻りフィンテックスタートアップを創業。2013年にBitcoinと出会い、業界に転身する。

「2013年にBitcoinを発見して、これは面白いと思い、そこに全力で賭けることにした」とCZは語っている。

1-2. Binanceの誕生と世界一への道

2017年にBinanceを設立。ICOブームで既存の取引所がERC20トークンに対応しきれていない中、Binanceは、いちはやくEthereumトークンの取引に対応し、わずか5ヶ月で取引量世界最大の暗号資産取引所に成長した。以来、約8年間その地位を維持している。現在の登録ユーザー数は3億2000万人に達する。

1-3. 米司法省との和解と現在の活動

2022〜2023年にかけて米国DOJの調査を受け、CZは銀行秘密法(BSA)違反の一件に対して有罪を認め、Binanceは、40億ドルの罰金を支払った。CZは、4ヶ月間収監された後、現在は、YZI Labsを通じた投資活動、Web3教育機関「Giggle Academy」の運営、そして著書『Freedom of Money』の執筆・出版に取り組んでいる。

2. クリプト産業の現状——予想と現実のギャップ


2-1. 想定より遅れたペイメント利用

CZが予想していた「クリプトによる決済の普及」は、まだ主流にはなっていない。クリプトカードを通じて間接的に暗号資産で支払うことは可能になったが、一般的な決済手段としては定着していないというのが現状認識だ。

2-2. 米国の規制環境の激変——「180度の転換」

CZが最も驚いたのは、米国の規制スタンスの急転換だという。

「1年半前、米国はかなり暗号資産に否定的だった。上院議員エリザベス・ウォーレン氏は、暗号資産への"宣戦布告"をし、私はバイデン政権下で収監された。それが180度変わったことには驚いた」

ただし、その「抑圧的な規制環境」がもたらした副作用も指摘する。前政権の4年間で、米SEC(証券取引委員会)は、多数の大型クリプトプロジェクトを提訴した結果、開発者はミームコインへと流れ、実用的なアプリケーションの開発が停滞したという。

2-3. 想定外の成長——ステーブルコイン・金・石油

CZが予想以上に大きくなったと感じる領域がステーブルコインだ。2017年当初は「一時的なドルペッグの代替手段」程度に考えていたが、現在では市場の中心的インフラになった。

さらに驚くべき変化として、Binanceが、金(ゴールド)と石油のトレードを開始したことを挙げた。金はBinanceが上場後わずか2ヶ月で「伝統的市場以外では最大の金取引所」になり、先物取引量の約10%を金が占めるほどになった。

「トークン化された株式や伝統的資産がここまで大きくなるとは思っていなかった」とCZは率直に述べている。

3. AIとブロックチェーンの融合


3-1. AIエージェントが生む取引量の爆発

CZは、AIとクリプトの融合について明確な見解を持っている。AIエージェントは人間が行う取引の「1000倍」の頻度でトランザクションを実行するようになり、その決済手段としてクリプトを選ぶようになると予測する。

「AIは国境を越えた人物と取引する際、SwiftやVisaカードよりもクリプトの方がはるかに使いやすいと判断するだろう」

3-2. 開発スピードの加速

もう一つのインパクトとして、AIによるコード生成がブロックチェーンアプリケーションの開発速度を大幅に向上させる点を挙げた。より使いやすいウォレット、より安全なウォレット、高速なブロックチェーンの構築が加速するという見立てだ。

3-3. Kathy Woodの補足——変化の速度

Kathy Woodはこの点に賛同しつつ、変化の速度そのものに注目した。

「ブロックチェーンとAIが急速に融合しており、AIは過去のどんな技術よりも速く進化している。対応しなければ市場シェアを失う時間軸は、歴史的に比べて大幅に短縮されている」

CTOがAIを導入しなければ解雇される時代がすでに来ており、次はブロックチェーンを無視したCTOも同様になると、CZは述べた。

4. ステーブルコイン競争の行方


4-1. テザー(USDT)の優位性と課題

CZは、テザーとBinanceの間に資本関係や収益シェアは存在しないと明確に否定した上で、テザーが支配的地位を築けた理由として、かつての困難な銀行口座確保の問題を克服できた点を挙げた。現在はその参入障壁が大幅に下がっており、多くの新規参入者が競争に加わっている。

4-2. 今後の競争構図

CZの基本的立場は、「ステーブルコインはユーザーに利息を還元すべき」というものだ。現状、テザーはその方向に動いていないが、利回りを提供する新興ステーブルコインが台頭しつつある。USDC(Circle)やUSD1も存在感を増しており、

「ユーザーへのリワード、手数料の低さ、使いやすさ、安全性——この4つで優れたステーブルコインが勝つ」という見解を示した。

また、ドル建てステーブルコインが米国債の実質的な販売チャネルになっている点にも注目し、他国も自国通貨建てのステーブルコインを通じて同様の効果を狙うようになると予測した。

4-3. 非ドル建てステーブルコインが普及しない理由

ユーロ建てステーブルコインが普及しない背景として、CZは規制上の保険要件や資本要件が非常に高く、スタートアップには参入障壁が大きいことを指摘。鶏と卵の問題として、市場が小さいから挑戦者が少なく、挑戦者が少ないから市場が育たないという構造的な課題がある。

5. 量子コンピュータへの対処と業界のコーディネーション


CZは、量子コンピュータの脅威について、専門家ではないと前置きしつつ「対処可能な問題」として比較的楽観的な見解を示した。

「量子耐性のある暗号アルゴリズムはすでに存在している。移行する際のコーディネーションが課題だが、解決できない問題ではない」

また、Googleが2029年という目標を掲げていることについては、「そういった予測は往々にして楽観的すぎる」とも述べ、過度な不安を持つ必要はないとした。Bitcoin以外のブロックチェーン(Ethereum、TronなどCZが挙げたもの)の方が、より柔軟にアップグレードしやすい構造にあるとも指摘した。

6. ビットコインの相場観と機関投資家の動向


6-1. 四年サイクルと現在地

CZによれば、2025年が強気相場のサイクル年に相当し、2026年に入って価格が調整局面に入っているのはある意味で想定内だという。一方で、以下の2つのポジティブ要因を挙げた。

トランプ大統領が、株式市場をパフォーマンスの指標として重視していること、そして、地政学的リスクが高まる中で金やビットコインへの逃避需要が高まる可能性だ。

「$60,000台が前回の高値からのサポートラインになっているとすれば、最悪の局面は過ぎたかもしれない——ただしこれは投資アドバイスではない」とCZは述べた。

6-2. 機関投資家の長期保有がもたらす安定性

Kathy Woodは、ビットコインETFへの機関投資家の流入が直近で加速していると述べた。機関投資家は意思決定に時間がかかる分、一度保有すれば数年単位で保持する傾向があり、これが価格の安定要因になり得ると分析した。

CZも同意し、「機関投資家がETFを通じて入ってきたことは、長期的な価格安定と上昇の基盤を作る」という見解を示した。

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