伝統金融の巨人がETHに賭ける理由──ジョセフ・チャロム、SharpLinkで新章へ
2017年ごろから始まった「仮想通貨=暗号資産」への関心が、今や単なる投機の対象にとどまらず、インターネットや金融の未来そのものを見据えた構造転換の一翼を担う存在へと進化しつつあります。そうした中、驚きともいえる転身を遂げた人物がいます。
かつて世界最大の資産運用会社・ブラックロック(BlackRock)のデジタル資産部門を率い、ビットコインやイーサリアムの現物ETFを成功へ導いたジョセフ・チャロム(Joseph Chalom)氏が、2025年7月に「イーサリアム財務企業」のSharpLink Gaming(NASDAQ: SBET)の共同CEOに就任しました。これは単なる人事ではなく、イーサリアムがいよいよ機関投資家のポートフォリオへ深く組み込まれるフェーズに突入した明確なシグナルともいえるでしょう。
本記事では、チャロム氏の経歴やブラックロック時代の功績、新天地への移行がもたらす意味、そしてそれが示唆する「ETH=高オクタン貨幣」たる新時代への展望を、多角的に整理しわかりやすく解説します。
「高オクタン貨幣」とは?
この用語は、チャロム氏がイーサリアム(ETH)を説明する際に用いた比喩表現です。以下のようなニュアンスが含まれます:
高い“パフォーマンス性”を備えた資産
燃料に例えるなら、高圧縮エンジンでも安定して“燃焼”し、力を引き出すオクタン価の高い燃料のように、ETHも高い安全性や流動性、プログラム可能性を備えた“強力な資産”という意味合いです。収益や機能を生み出す性質
ETHはステーキングやDeFiなどで実際に収益を生む“動的資産”として扱われます。これも「高オクタン」のイメージに合致します。
つまり、「高オクタン貨幣」とは、単なる保存価値以上の役割(機能性・収益性・信頼性)を備えた資産としてのETHを表現した比喩的な言い回しです。
1. ブラックロックでの軌跡:デジタル資産への布石と成果
1-1. デジタル資産戦略の開拓者
ジョセフ・チャロム氏は、ブラックロックで20年以上にわたり要職を歴任し、「戦略的エコシステムパートナーシップ部門」の責任者として、デジタル資産、技術提携、トークナイゼーションの推進を担いました。
その中で彼は、イーサリアムの現物ETFである「iShares Ethereum Trust(ETHA)」の立ち上げに尽力し、現在10億ドル以上の運用資産に成長してい。
また、ビットコインETF「IBIT」、そして「BUIDL」と名付けられた米国短期国債をトークン化したオンチェーン財務基金も発表し、伝統的金融とブロックチェーンの融合領域で先駆的な実験を展開しました。
1-2. イーサリアムへの機関資金流入をリード
ETFやトークン化基金の立ち上げは、機関投資家にとってアクセスの壁だった「カストディ、リスク管理、KYC/AML(本人確認など)」の問題を、既存プラットフォームと組み合わせた安全かつスムーズな枠組みでクリアするものでした。これにより、仮想通貨への投資が多くの機関のポートフォリオに自然に組み込まれるようになったことは、大きな社会的意義を持ちます。
2. SharpLinkへの移籍:イーサリアム財務の新たな旗手へ
2-1. SharpLinkのETH財務戦略とは?
SharpLink Gaming(ティッカー:SBET)は、NASDAQ上場の企業でありながら、イーサリアム(ETH)を中心とした財務戦略へと大胆に舵を切っています。同社は公に、世界最大規模の企業ETH保有者の一つとして位置づけられています。
2025年7月時点で、その保有量は、およそ360,807 ETH、時価にして13億ドルに上ると報じられており、ステーキングによる追加収益も着実に積み上がっています。
2-2. チャロム氏の入閣は「イーサリアム財務の正当性」を象徴
ブラックロックでの経験と実績を背景に、チャロム氏はSharpLinkの共同CEOとして迎えられました。Joseph Lubin(イーサリアム共同創設者)からも「チャロム氏の移籍は、イーサリアムを中核に置いた財務戦略に対する強力な戦略的バリデーションだ」と評されています。
また、一部では、「マイクロストラテジーのイーサリアム版」との呼び声もあり、大胆なETH積み上げに対する注目が高まっています。
3. なぜ今、イーサ(ETH)なのか?──「高オクタン貨幣」としての資産価値
3-1. ETHが「高オクタン貨幣」である理由
チャロム氏は、インタビュー等で、イーサリアムが「高オクタン貨幣(high‑octane money)」であることを示す根拠として、以下のような構造的相関を提示しています。
イーサリアム上にある高品質で流動性の高い資産(ステーブルコイン、リアルワールド資産のトークン化、DeFiによる貸借や交換)は、“Total Value Secured(TVS)”として計測されるが、それらが増えるほどETHの時価総額が安定して上昇する。
過去5年間では、「高品質流動性資産2ドルに対し、ETH市場価値が1ドル」ほどの相関が見られたとしており、今後もこの相関が長期的に続く可能性を示唆しています。
この構造的視点は、価格予測ではなく、「価値基盤」の理解として非常に示唆に富んでいます。
3-2. ETHが選ばれる技術・制度的・流動性的背景
ETHが選好される理由として、以下の点が挙げられます:
セキュリティと稼働実績:イーサリアムは10年以上の稼働と堅牢なセキュリティを誇り、多くのL2がそのセキュリティに依存しています。
流動性の豊富さ:ステーブルコイン、DeFi、トークン化された現実資産などにおいて、イーサリアムが他チェーンを数倍上回る流動性をもつことが選定理由となっています。
許容される規制対応:パーミッションレスなネットワークでありながら、KYCアンチマネーロンダリング対応のもとで機関投資家が参加できる構造が整えられている点も、大きなアドバンテージです。
4. 金融資産のトークン化という世界観:ETHがつなぐ未来
4-1. トークン化の進展と市場規模
チャロム氏は、トークン化の進化を以下のような段階で語っています:
ステーブルコイン(tokenized money):現在約2,750億ドルの市場が、2028年には2兆ドルへ成長しうる。
リアルワールド資産(RWA)のトークン化:現在数十億ドル規模からジグザグな曲線の成長が見込まれるフェーズへ
DeFi上の資本活動(貸借・交換など):この区分を含めれば、総計で数兆ドル規模のインパクトが見込まれる。
こうした資産の増加はすべて、ETH上のTVS拡大を意味し、それがETH価格を押し上げる構造です。
4-2. イーサリアムと従来金融の融合未来
トークン化が進む未来イメージとして、チャロム氏は以下を描いています:
従来のETFや株もウォレットにトークンで並び、ETHやBTCと共に24時間取引できる世界。
ETH保有だけでなく、ETHを活動資本にDeFiやその他金融インフラに直接参加できる構造。
その構想こそ、「インターネット資産の最終形態」にも等しい変革視点です。
5. 後押しとリスク:光と影のバランスを見据えて
5-1. チャロム氏の楽観と慎重
楽観面:機関投資家のETHトレジャリーへの参入は「避けがたい趨勢」であり、今こそ積極的にETHを積み上げるべきとしています。
慎重面:資金調達にあたってはATM(at-the-market)やコンバーティブル債などの手法を使いつつも、過剰なレバレッジや運用コストの肥大化は避けると述べています。
懸念点:過度に高利回りを追う戦略は信用リスク、スマートコントラクトリスク、デフォルトリスクを伴い、不安定な結果をもたらす可能性があるとの警戒も共有しています。
5-2. トークン化やDeFi全体の普及には時間も必要
また、Chalom氏は機関によるDeFi全面採用にはKYC/AML対応の不足など、依然として障害が存在すると指摘しています。ただし、それが整備されれば、金融のオンチェーン化は確実に前進すると見ています。
6. まとめ:ETHと伝統金融の接点に立つ「時代の架け橋」
今や「ビットコイン=デジタルゴールド」が定番となりましたが、チャロム氏の「ETH=高オクタン貨幣」論は、より機能的・構造的な未来志向を反映しています。SharpLinkのような企業がその未来を具現化しようとする動きは、まさに金融資産のデジタルへの橋渡しとして、大きな注目に値します。

