【4/7】注目の海外スタートアップの資金調達5選
近年、飲食業界や金融サービス、AIツールなど、さまざまな分野で革新的なスタートアップが次々に誕生し、大規模な資金調達を実現しています。世界的な不況が懸念される中でも、魅力的なプロダクトを提供する企業は投資家の目を引きつけ、新規サービスの拡張や技術開発が加速しているのが現状です。
本記事では、5つの注目すべきスタートアップの事例をご紹介します。それぞれが抱えている課題や市場背景、実際に獲得した資金額や投資家の動向などを整理しつつ、「なぜ資金調達に至ったのか」「今後どのように事業を拡大していくのか」をわかりやすく解説していきます。
1. Blackbird Labs:ブロックチェーンを活用した新時代の飲食店向け決済・ロイヤルティ
1-1. 資金調達の概要と企業の背景
米国のBlackbird Labsは、飲食店向け決済アプリやロイヤルティ・プログラムを提供するスタートアップです。代表のベン・レヴェンタル氏は、これまでに「Resy」や「Eater」といった飲食関連スタートアップを創業し、いずれも大手に買収された実績をもつシリアルアントレプレナーとして知られています。
同社は今回、5,000万ドルの資金調達を実施しました。リード投資家を務めたのはSpark Capitalで、コインベース(Coinbase Ventures)やアメックス(Amex Ventures)、アンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz, a16z)といった著名ベンチャーキャピタルも参加しています。これにより、累計調達額は8,500万ドルに達しました。
1-2. プロダクトの特徴とブロックチェーン活用の意義
Blackbird Labsが提供するプラットフォームは、「Flynet」という独自のトランザクションプロトコルを備え、コインベースが新たに立ち上げたブロックチェーン基盤“Base”の上で動作する点が特徴です。飲食店においては、以下のようなメリットを打ち出しています。
決済手数料の削減:従来のクレジットカード決済等と比較し、数%のコストダウンを実現
ロイヤルティプログラムとの連動:顧客が会計時にアプリ上で簡単にポイントを獲得・利用できる
同社によれば、ブロックチェーン技術は必ずしも「絶対不可欠」というわけではなく、現行のクレジットカードネットワークが果たす役割とも似通っているといいます。しかし、今後の拡張性や顧客データを顧客自身が保持できる仕組みを設計する上で、オンチェーンでの管理が大きな優位性をもたらすと強調しています。
1-3. 今後の拡大戦略と注目ポイント
Blackbirdは、1,000店以上のレストランがすでに導入を決定し、ニューヨークやサンフランシスコ、さらにはチャールストン(サウスカロライナ州)へと事業を拡大中です。今後、地域ごとに独自のロイヤルティシステムや「Blackbird Club」というクロスレストラン向けポイントサービスを展開し、レストランの収益性向上を狙います。
飲食業界は近年、SNSの普及によるトレンド加速こそあれど、利益率が著しく低下しているという課題を抱えています。Blackbirdは、その課題をテクノロジーとロイヤルティ戦略で解決しようとしており、今後の動向が注目されています。
2. Sizl:シカゴ発、新しい“ダークキッチン”モデルへの挑戦
2-1. クック・トゥ・オーダーと資金調達
「ゴーストキッチン」や「クラウドキッチン」と呼ばれる業態は、近年急速に増加している一方で、品質面での不安や信頼性の問題が取り沙汰されてきました。こうした状況下で注目されているのが、シカゴを拠点とするスタートアップ「Sizl」です。
Sizlは、350万ドルのシードラウンドを調達し、1,200万ドルのポストマネーバリュエーションを獲得しました。出資元はYellow Rocks!のリードのもと、Kinetikや複数のエンジェル投資家が参加しています。
2-2. プロダクトの特徴:フレッシュな食材とゲーミフィケーション
Sizlのダークキッチンでは、ウクライナ出身の料理人を中心とする少数精鋭のチームが料理を作り、配達専任のスタッフが素早く届けることで、注文から30分以内の提供を実現しています。メニューは60品目に厳選されており、東欧料理を中心に一部は家庭のレシピも採用しているため、“本格感”と“親しみ”の両立が魅力です。
また、自社アプリ上でゲーミフィケーションを活用し、注文のたびに集められるカードや仮想通貨(mojis)を導入している点も特徴です。3%のキャッシュバックやミニゲームでの報酬獲得により、リピート率の向上を狙っています。
2-3. 今後の展開
現在はシカゴで2拠点を運営しており、今年中に追加で最大4店舗を開設予定です。ボストンやシャーロット、サンフランシスコ・ベイエリアへの進出も視野に入れています。さらには、シリーズAの調達を2026年初頭までに計画しており、ダークキッチン市場に新たな価値をもたらす存在として注目度が高まっています。
3. Sipay:トルコ発“エマージング市場のStripe”がグローバルへ躍進
3-1. 資金調達と評価額
トルコを拠点とするフィンテック企業「Sipay」は、7,800万ドルのシリーズBラウンドを実施し、時価総額が8億7,500万ドルに達したと発表しました。この大型調達には、米国のElephant VCやRevolut共同創業者ニック・ストロンスキー氏のQuantumLightが参加しています。
3-2. プロダクトの特徴:オールインワンの決済・金融プラットフォーム
Sipayは「Stripeを模したサービスを、新興国市場で広く提供する」というビジョンを掲げ、ウォレットや投資、ロイヤルティプログラムなどを一本化したアプリを展開しています。具体的には以下の機能を提供しています。
デジタルウォレット
為替取引(FX)
埋め込み型金融サービス(Embedded Finance)
VisaやMastercardとの連携
大手ECサイト(Trendyol等)との統合
さらに、ホワイトラベル製品として他社がカード発行やウォレット機能を利用できるソリューションも展開しており、いわゆる「BaaS(Banking as a Service)」に近い事業モデルと言えます。
3-3. 今後の展開
Sipayは2024年6月に行われたシリーズA(1,500万ドル調達)に続き、ここまで順調に成長を遂げ、現在年間6億ドル規模のランレートを達成しています。代表のネジ・シパヒオール氏は「新興国でこそ求められるオールインワンの決済プラットフォーム」を強調しており、クロスボーダー領域や送金サービスを強化する計画を表明しています。
4. Moonvalley:動画生成AIスタートアップが4,300万ドルを追加調達
4-1. 資金調達の概要
ロサンゼルスに拠点を置く「Moonvalley」は、AIによる動画生成ツールを開発するスタートアップです。最近、米国証券取引委員会(SEC)への提出書類から4,300万ドルの追加調達が明らかになりました。既存投資家としてはGeneral CatalystやKhosla Ventures、Bessemer Venture Partnersが名を連ねており、同社はこれまでに合計7,000万ドル以上の資金を調達してきました。
4-2. Mareyモデルと著作権への配慮
Moonvalleyが新たにリリースした「Marey」モデルは、30秒程度のHD動画を生成でき、カメラアングルや動きの詳細な調整が可能という点を大きな強みとしています。
一方、著作権を巡る問題が頻発している現在のAI業界において、Moonvalleyは「正規ライセンスを取得した動画データセットを利用する」「モデルから自分のコンテンツを除外するリクエストを受け付ける」「著作権問題からユーザーを保護するインデムニティポリシー(賠償責任免除策)を提供する」といった施策に取り組んでいます。
4-3. 今後の動向と課題
動画生成AIはRunwayやLumaなどの新興企業、さらにはOpenAIやGoogleといった大手がしのぎを削る領域です。Moonvalleyは、著名なアニメーションスタジオ「Asteria」との共同開発や、安易な「有名人の顔の無断挿入」などを防止するガードレール機能を整備することで、差別化を図っています。映画やテレビ業界、広告制作など幅広いクリエイティブ業界への影響を見据えつつ、ユーザー保護にも力を入れており、今後の大手企業の動向や法規制の行方にも注目が集まります。
5. Krea:複数の生成AIモデルを“一元管理”するクリエイター向けプラットフォーム
5-1. 調達概要と背景
サンフランシスコに拠点を持つ「Krea」は、AIによる画像生成や動画編集などを一括管理できるプラットフォームを提供しています。同社はこれまでに合計8,300万ドルを調達しており、最新のシリーズBラウンドは4,700万ドルに達しました。Bain Capital Venturesがリード投資家として参加し、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)やAbstract VenturesといったVCからの出資も受けています。
5-2. クリエイター向け“統合プラットフォーム”としての強み
クリエイターにとって、複数のAIモデルをその都度使い分けるのは手間がかかるうえ、モデルのアップデートや法的リスクの把握なども大きな負担となっています。Kreaは「複数のモデルを裏で統合管理し、ユーザーはKreaのUIを介して高度なカスタマイズや修正を簡単に行える」ことを強みとしています。
複数のモデルを一元化
文字入力のみならず、GUI(グラフィカルユーザーインターフェイス)で画像の一部をドラッグ&ドロップ操作しながら修正できるクリエイターの作業効率向上
モデルごとの学習データやパラメータを追う必要がなく、純粋にクリエイティブな作業に集中できる
今後は音楽や音声、動画にも対応させる予定で、さらなる市場拡大を目指しているとのことです。
5-3. 共同創業者の背景と将来像
Kreaを創業したCEOのビクター・ペレス氏とCTOのディエゴ・ロドリゲス氏は、バルセロナの大学で出会ったエンジニア仲間であり、自身も音楽やアートといったクリエイティブに深く親しんできました。彼らはコーネル大学のフェローシップを得ながらも、起業のアイデアに熱中してわずか1日で大学を去ったというエピソードを持ちます。
Bain Capital VenturesのパートナーであるAaref Hilaly氏は、「モデルの進化が目まぐるしい現在、最新ツールを包括的に利用できるKreaの価値は高い」と評価し、同社への投資を決断したと述べています。Kreaは今後、エンタープライズ向け機能の拡充やさらなる国際展開を目指しており、ユーザーコミュニティの声を積極的に取り入れながら“クリエイターのためのオールインワンプラットフォーム”を構築していく計画です。
以上5つの事例を通じて、さまざまな業界でのスタートアップが独自の技術・サービスを軸に大規模な資金調達を実施していることがお分かりいただけたと思います。金融、飲食、AIといった多彩な領域であっても、「ユーザーの課題をどう解決するか」を明確に示し、優れたサービス運営や技術力を持つ企業には、グローバルの投資家が注目し続けています。
特に、最近のスタートアップは既存の常識を塗り替えるテクノロジーや極めてニッチな課題に対する革新的なアプローチで、急速に市場を獲得しているのが特徴です。今後も新たなプレイヤーの登場や多種多様な資金調達が続くと見られ、我々が目にするサービスやプロダクトの変革スピードはさらに加速していくでしょう。今後の動向にもぜひ注目していきたいところです。
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