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Accenture CEOが語る「AIは仕事のやり方そのもの」——7兆円企業が実践するAIファースト経営

「AIを使うことは、コンピューターを使うことと何が違うのか?」——Accenture CEOのJulie Sweetは、こう問いかける。売上高700億ドル(約7兆円)、120カ国・9,000クライアントを持つグローバルコンサルティングファームのトップが、AI活用を社員の昇進条件に組み込んだことが話題を呼んでいる。Rapid ResponseのBob Safianによるインタビューで、Sweetは企業がAIから本当の価値を得るために何が必要か、そして経営者として何を学んできたかを率直に語った。


1. 「待つ」のも戦略——不確実性の時代のリーダーシップ


1-1. イランの地政学リスクと「レジリエンス」

インタビューは、現在進行中の中東情勢への言及から始まった。エネルギー価格の不安定化はヨーロッパを中心に影響が懸念されるが、Sweetは「2022年のウクライナ戦争開始時と比べ、ヨーロッパは今はるかに強いレジリエンスを持っている」と指摘する。関係者の間では、エネルギーリスクよりもサイバー攻撃や重要インフラへの攻撃が波及するリスクへの関心が高まっているという。

「何を知っているか、何を知らないかを透明にする。それが今の経営者に必要な姿勢だ」とSweetは語る。あらゆるシナリオを計画に織り込もうとすること自体が、むしろ会社への悪影響をもたらしかねない。「知らないことが本当に自分の実行を妨げるのかどうかを問え」というのが、彼女のメッセージだ。

1-2. 「行動しない」という選択肢はない

「CEOたちが凍りついているように見える」という問いに対し、Sweetは明確に否定する。「常に行動している。意図的に何もしないという判断も、行動の一つだ」。不確実性の高い環境では、完璧な情報を待つより、現時点でとれる行動——たとえばサイバーレジリエンスの強化——を積み上げることの方が価値があると説く。

2. AIが本当の価値を生む前に直すべきこと


2-1. 「AIが魔法を起こす」という誤解

Sweetが繰り返し強調するのは、AI導入前の「基盤整備」の重要性だ。ある製薬会社の事例を挙げる。新薬承認後の医師向け説明資料の作成には従来数ヶ月かかっていたが、これはプロセスの標準化とデータの一元化によって短縮できる——Gen AIを使わなくても。多くの企業がこの「基本的な改善」をやり切れていないままAIに期待しているのが現状だと指摘する。

「現在の構造にAIを乗せても、せいぜい改善止まりだ。本当の価値は、すべてを再発明することにある」

2-2. エージェントで代替すべきでない管理職の存在

「そもそも不要な中間管理職を、AIエージェントで置き換えるためにお金をかける意味があるのか」というSweetの言葉は、企業のAI投資の優先順位を問い直す視点として興味深い。断片化したプロセスを整理し、余剰な管理層をなくすことは、AIとは独立して実行できる——そしてすべき——課題だという論点だ。

3. AIファースト経営——何が「デジタル化」と違うのか


3-1. リーダーが技術を理解しなければならない理由

SweetはChatGPT登場直後の2022年11月、最初にAI研修を受けさせたのはトップ50のリーダーだったと明かす。「クラウド移行の時代は、技術は配管のようなものでリーダーは知らなくてよかった。AIは違う。何ができて、何ができないか、どこでコストに見合う価値が出るかを、経営者自身が理解しなければならない」。

「今のAI第一の問いは、"これはAIに任せられないか?"と自分に問うことだ」——情報収集にエージェントを使い、合成・要約させる。それだけで、仕事の進め方が根本的に変わると語る。

3-2. 全社員向けに設計したAI研修

2025年9月、AccentureはHR担当から技術者まで全社員を対象にエージェンティックAIの研修を導入した。構成はコンピューター学習1時間、対面研修2時間、スタンフォード大学と共同開発したコース2時間の計5時間。Sweetは「誰もがどこにいても理解する必要がある。なぜなら、AIは私たちの事業運営においてますます大きな部分を占めるようになるから」と説明する。

4. 「AI活用を昇進条件に」——これは強制か


4-1. コンピューターとの比較

AIツールの活用度を昇進評価に組み込んでいることが「強制では?」という問いに対し、Sweetは明確に否定する。「コンピューターを使うことを強制と言う人はいない。それが今の仕事のやり方だから。AIもAccentureではそれと同じだ」。新卒の社員からは「なぜ使っていないのか」と問われるほど、使うことが当たり前の前提になっているという。

ただし、ゼロから一気に移行したわけではない。3年間かけてツールを整備し、使いやすさを確認しながら段階的に浸透させてきた結果だ。

4-2. エントリーレベルの採用を増やす理由

「AIにより初級職は不要になる」という見方が広がる中、Accentureは昨年比で主要市場での新卒採用を増加させている。その理由として、Sweetは「大学卒業生はAIに流暢だ。2〜3年のベテランよりも使いこなしている」と語る。AIネイティブな若い人材を取り込むことが、会社全体のAI活用能力を底上げする戦略的な判断だという。

またエントリー職の廃止は、次世代リーダーを育てるパイプラインを断つことになりかねない。「エントリーレベルがなければ、経験豊富な人材をどうやって育てるのか」——この問いに向き合い、Accentureはエージェントが担うべきタスクを定義し、「エージェントに置き換えられない」スキルを持つ新しい初級職を再設計したと説明した。

5. 再発明の障壁——「やり方を手放すこと」の難しさ


5-1. 失敗への耐性よりも「謙虚さ」

Sweetは「再発明の最大の障壁は失敗への恐れではなく、これまでのやり方を手放す謙虚さだ」と語る。特に自分が作り上げてきた仕組みやキャリアを積んできた人ほど、それを問い直すことは難しい。**「30年やってきたことが今でも正しいかを問える謙虚さ」**が、リーダーに求められる最も重要な資質の一つだという。

5-2. 多様な視点が意思決定の質を上げる

弁護士時代の経験を引きながら、Sweetは「健全な緊張感のあるチーム」の価値を語る。セクションレベルの意思決定には常に曖昧さが伴い、100%の確信は得られない。だからこそ、保守派と革新派、社内育ちと社外出身、性別・バックグラウンドの異なる人材が同じテーブルに着くことが、結論の質と説得力を高めると語る。

まとめ——「AIで何を不可能から可能にしたか」が問われる時代


Sweetは、最後にこう問いかける。「3年後に、AIを使って何を不可能から可能にしたと言えるか」。この問いに答えられない企業は、単なる効率化の範囲にとどまり、本質的な競争優位を得られない可能性が高い。

Accentureの事例が示すのは、AIファーストへの転換が一夜にして起きるものではないという事実だ。リーダーの学習、プロセスの基盤整備、全社員への研修設計、エントリー職の再設計——これらを積み上げた上に初めて、AIによる「再発明」が機能する。規模やセクターを問わず、この問いは今すべての経営者に突きつけられている。

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