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「AI・原油・FRB」の三重リスクが同時進行 ― 市場関係者「体感的にはもっと厳しい1年」

投資業界の月例ポッドキャスト「Breaks of the Game」に、2人の市場関係者(ドミニク氏、ジョシュ氏)が出演し、AI関連株の動向、原油・イラン情勢の再燃、そして、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策という、現在の市場を取り巻く複数のテーマについて議論しました。本稿では、その対話をもとに、市場が直面している複雑な状況を整理します。


1. 市場の三大テーマ ― AI、原油・イラン情勢、FRB


一人目の登壇者は、現在の市場テーマを単一に絞ることの難しさを指摘しつつ、次のように整理しました。

「複雑にしているのは、相互に影響し合う『2つ半』の大きなテーマがあるからだ」

1つ目は、AIテーマで、投資ブームとその恩恵を受ける企業を巡るナラティブであり、依然として市場における最も高次のテーマだといいます。2つ目は、原油価格とイランを巡るリスクの再燃・再エスカレーションで、ここ数カ月市場が向き合ってきた課題への回帰だとされました。3つ目は、FRBで、これは、前者2つの動向に左右される「サブテーマ」的な位置づけだと説明されています。

「FRBは、より短期的な論点、原油問題はしばらく続く可能性が高い論点、そしてAIテーマはより広範に市場を動かし得る包括的な論点だ」

同氏は、さらに、一言で凝縮するなら「不足(shortages)」がキーワードになると述べました。

「AIのサプライチェーンにおける電力・半導体・メモリの不足が支配的だ。そして、商品市場においても、意図的な形も含めて不足が生まれつつあり、そこに摩擦が生じている」

2. 「体感」と「実態」のギャップ


もう一人の登壇者(ジョシュ氏)は、市場を巡る印象について興味深い指摘をしました。

「俯瞰して見れば、今年は、市場にとって素晴らしい1年だった。S&P500は、2桁近い上昇、一部の海外市場も大きく上昇、米国経済も非常に強く、失業率は低水準にある。しかし、日々の値動きを見ていると、はるかに厳しく感じる」

同氏は、S&P500が、高値からわずか2.5%程度しか離れていないにもかかわらず、市場参加者にとっての「体感」ははるかに厳しいものになっていると指摘しました。

「表面下のボラティリティ、人気だったトレンドの反転、原油のボラティリティ、金融引き締めの可能性といった要因が積み重なり、俯瞰した見え方よりもずっと厳しく感じさせている」

同氏は、この「体感の悪さ」が、相場の転換点を示す予兆なのか、それとも一時的な現象なのかは分からないとしつつ、少なくとも現時点では表面下のボラティリティの高さが特に顕著だとの見方を示しました。

3. AIテーマの「次のフェーズ」


決算発表シーズンの真っ只中というタイミングで、AIについての議論も深掘りされました。一人目の登壇者は次のように分析しています。

「私たちは、すでに新しいフェーズに移行しつつある。投資フェーズは、依然として堅調に軌道に乗っており、今週の決算でもそれが確認された。この領域における収益性も総じて底堅い」

ただし、同氏は、システムに投入された価値の総量が大きく、その大半がここ半年から9カ月の間に「インフラ提供者」に流れ込んでいる点を指摘し、これが、「パイ全体の大きさ」と「その分配のされ方」の両方に対する市場の脆弱性を高めていると述べました。

「個別銘柄レベルのボラティリティは、過去半年から9カ月、かなり持続的に上昇している。指数レベルへの影響ははるかに小さいが」

同氏は、決算シーズンが進む中で、ハイパースケーラー(大手クラウド企業)が、設備投資を実際の収益化にどれだけ結びつけられるかに、改めて注目が集まるだろうと述べています。

「投資の拡大自体は、サプライヤーにとって良いことだが、その投資プロファイルの持続可能性に疑問を持ち始めると、それがより広範な市場に波及しないか懸念せざるを得ない」

4. クライアントとの会話の75〜80%はAI


この点について、もう一人の登壇者は、直近1週間でクライアントと重ねてきた会話の内容に触れ、次のように述べました。

「AIは、依然として、あらゆる会話の75%から80%を占めている。しかるべき理由から、圧倒的な関心領域であり続けている」

同氏は、モメンタムファクターが、過去45年間で(景気後退期を除き)最高水準のボラティリティを記録した局面を経たことに言及し、これが表面下で市場に大きな負荷をかけ続けていると指摘しました。ただし、同時に、先週まで「その1点だけが話題だった」状況から一歩進み、FRBという変数が短期的な相場方程式に「再び組み込まれつつある」との見方を示しています。

「米国とイランの緊張が明らかに再び高まっている。公開市場や新規発行(IPO)市場も、この数週間でやや摩耗している。ほとんどは懸念材料側の話だ」

もう一人は、これに対し、AI関連の懸念そのものについては次のように補足しました。

「最大の支出企業たちが支出を続ける意欲に、明確な変化はまだ見られない。市場が問うているのは、それをいつ最も直接的に収益に結びつけられるかだ。今週の決算ではそれは実現しなかった」

来週には、さらに3社のハイパースケーラーの決算が控えており、市場が前向きなシグナルを求め続けている状況が続くとされています。

5. FRB会合を巡る綱引き ― 利上げ確率は約38%


来週に控えるFRB会合についても議論が交わされました。

「金融政策担当者にとって厳しい局面だ。コアインフレについては、良いニュースがあり、米国では非常に低い数値が出た。世界的に見てもコアインフレの動きはここ短期間、比較的落ち着いていた。しかし、そこに原油価格の再加速が重なり、インフレ動向に改めてスポットライトが当たっている」

同氏は、これからはFRBの会合ごとに「ライブ」(利上げ・利下げの可能性がある)状態に入ると見ており、政策維持のためにはインフレ動向がより穏やかな形で推移する必要があると述べました。興味深い点として、長期金利の上昇が主に「実質金利」の上昇によるものであり、ブレークイーブン・インフレ率(市場が織り込むインフレ期待)の上昇によるものではない点も指摘されています。

「これはFRBがよりタカ派的な姿勢を取ってきたことの表れだと考えている。もしインフレの状況が依然として厳しいままなら、いずれ利上げに動くと予想する。もしそうしなければ、そのバランスは崩れ、インフレ期待が拡大していくだろう」

同氏によれば、直近の利上げ確率は、約38%とされ、この数字自体も「非常に流動的な状況」の中で日々変化しているといいます。原油価格がこの日だけで6ドル上昇するなど、極めて動きの速い局面にあるとのことです。

6. イラン情勢と原油価格 ― 紅海での攻撃で新たな供給制約


イラン情勢についても掘り下げた議論がありました。

「先週まで、少なくとも広範な市場はこの巻き戻し(原油価格の反落)についてかなり落ち着いていた。それは、いつでも和解が起こり得るという継続的な期待感があったからだと思う」

同氏は、市場が本当に注目しているのは、軍事衝突の「大規模なエスカレーション」や「新たな供給ルートの遮断」であり、原油価格自体の高低は多くの資産にとって相対的に重要度が低いと説明しました。しかし、ここ数日、両方のリスクがエスカレートしたと指摘しています。

「紅海での攻撃が起きており、解決すべき新たな潜在的供給制約が生まれつつある。同時に、より激しい軍事行動やその拡大の可能性も高まっているようだ」

同氏は、解決への道筋を定義することが依然として難しい状況にあるとしつつ、「もし事態が解決すれば、原油価格はかなり下落する余地がある一方で、いくつかの新たなリスクにも直面し続けている」と述べました。フーシ派による侵入・攻撃がここ数日で力学を大きく変えたとの認識を示しています。

7. AI以外で最も確信を持つ投資対象


番組終盤では、「AI以外で最も確信を持てる投資領域」について両者に問いが投げかけられました。

一人目の登壇者は、利回り曲線の長期ゾーン(バックエンド)に最も強い関心を示しました。

「FRBや7月のFOMCに注目が集まる一方で、30年債利回りが5%を超えて上昇したこの動きは、驚くほど静かに進行していた。長期ゾーンのオプション性は、短期ゾーンに比べてはるかに割安なままだった」

同氏は、30年債の実質利回りが約3%に近づき、史上最高値の水準にあることを指摘し、この「長期金利」こそが市場や経済にとって最も重要な金利であるにもかかわらず、注目度がここ数日でようやく高まり始めた段階だと述べました。円相場が1ドル=164円に接近し日銀への利上げ圧力が高まっていること、英国の指導部交代を控えていることなども、長期ゾーンへのリスク要因として挙げられています。

もう一人の登壇者は、クレジットスプレッドに着目していると述べました。

「クレジットスプレッドは、非常にタイトな出発点にあることを踏まえると、非対称なリスクを感じる。供給の増加、地政学リスクへの懸念、金融引き締めからの圧力など、拡大に向かう複数の経路が見えている」

同氏は、また、今年初めて「ドルが上昇し始める兆し」が見え始めているとも指摘しました。FRBが金融引き締めに動く一方で、米国経済が原油高の中でも強さを維持するという組み合わせは、ドルにとって追い風になり得るとの見方です。同氏は、市場が典型的に流動性の低下する8月に入りつつある点にも触れ、「確信度の高いポジションにシンプルに絞っておくのも悪くない」と述べました。

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