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地方から未来を掴む──Drive Capital流ベンチャー投資

米国のベンチャーキャピタル(VC)業界は、シリコンバレーやニューヨークなど沿岸都市に集中する構造が長らく続いてきた。しかし、2020年代に入り、その地理的偏重に一石を投じる動きが広がっている。その象徴とも言える存在が、オハイオ州コロンバスに拠点を置くDrive Capitalだ。かつて共同創業者の離脱という危機に直面しながらも、独自の投資哲学と地方都市への着目で復活を遂げ、注目を集めている。

本稿では、Drive Capitalの再起とその戦略、成功と失敗の両面を検証しつつ、従来のVCモデルに対する挑戦の意味を読み解く。


1. 共同創業者の「離別」と岐路


Drive Capitalは、元Sequoia Capitalのパートナーであるクリス・オルセン(Chris Olsen)とマーク・クヴァム(Mark Kvamme)によって2012年に設立された。中西部の経済再生とテック分野での活性化を目指してコロンバスを拠点に活動を開始。初期にはDuolingoなどの成長企業にも出資し、注目を集めた。

しかし、2021年、クヴァムがDriveを離れ、「The Ohio Fund」を設立。これは不動産や製造業も含む州全体の経済開発を対象としたファンドであり、Driveとは異なる進路を選択した。この決別により、Driveは一時的にアイデンティティの揺らぎと投資家の不安を招いた。

それでも、オルセンは舵を握り続け、従来の戦略を深化させることでDriveの「第二幕」を切り拓く。

2. 新たな戦略:ユニコーンより「着実な3Bドル企業」へ


オルセンが掲げる投資戦略は、「ユニコーン幻想からの脱却」にある。彼は次のように語る。

「新聞やシリコンバレーのカフェでは、500億ドルや1000億ドルの企業の話ばかり。しかし、過去20年でそうした超巨大EXITはたった12件。一方で、30億ドル規模のIPOやM&Aは毎月のように起きている」

このリアリズムに基づき、Driveは、「現実的なEXIT」を多数狙う方針へ転換。特に、Thoughtful Automation(AIによる医療業務の自動化企業)の売却は象徴的だ。同社は10億ドル以下のバリュエーションでプライベートエクイティのNew Mountain Capitalに買収されたが、それでもファンド全体の収益に貢献する規模でのEXITとなった。

さらに、Driveは、単なる小口出資ではなく、平均30%の保有比率で深く関与するスタイルを取っており、「唯一のベンチャー出資者」であることも多い。この点がシリコンバレーの典型的な10%前後の出資と一線を画す。

3. 実績と失敗──成功の背後にある痛み


Driveの成功例には以下がある:

  • Duolingo:初期段階(収益ゼロ)で出資し、現在の時価総額は約180億ドル。

  • Vast Data:データストレージ企業で、2023年時点の評価額は90億ドル。

  • Root Insurance:IPO後の株価下落を経ても、部分売却で利益確定。

だが、全てが順調だったわけではない。最大の失敗例は、地元コロンバスのOlive AIだ。医療自動化を手がけるこの企業は、約9億ドルを調達し一時は評価額40億ドルに達したが、最終的には資産売却の「ファイヤーセール」に追い込まれた。

オルセンはこのような失敗も含め、地方企業への支援という信念を貫いている。

4. シリコンバレー外への集中──地理が生む競争優位


Driveは、あえてシリコンバレーを避け、「地理的な非対称性」をチャンスと見なす。オルセンはこう語る。

「シリコンバレー外の企業は、ベンチャー投資を得るために、より良いビジネスでなければならない。逆に、私たちがシリコンバレーの企業に投資する際も、より高い基準を適用している」

Driveが投資先を持つ都市は、コロンバス、オースティン、ボルダー、シカゴ、アトランタ、トロントなど。いずれも「テクノロジー × 伝統産業」の融合が起きている地域だ。

たとえば、自動溶接スタートアップ次世代歯科保険のように、従来型の産業にテクノロジーを適用した企業が主なターゲットである。これは米国の18兆ドル市場の中核をなす領域であり、競合が少ないという利点もある。

5. 今後の展望と資産運用成績


Driveは現在、2022年6月に立ち上げた10億ドル規模のファンドを運用中で、投資余力の約30%が残っている。資産総額は22億ドルに達し、オルセンによれば「すべてのファンドがトップ・クォータイルのパフォーマンス」であり、最も成熟したファンドではネット4倍以上のリターンを実現しているという。

さらに、2025年5月には、1週間で5億ドルものリターンをLP(出資者)に分配。Root Insuranceの株式約1.4億ドルをはじめ、複数案件のEXITが重なった成果であった。

6. テックハブとしてのコロンバスの未来


Driveの成長と並行して、コロンバス自体も「次世代テックハブ」としての地位を高めている。象徴的なのが、Palmer LuckeyやPeter Thielといったテックビリオネアが、仮想通貨専門銀行「Erebor」の設立拠点としてコロンバスを選んだことだ。

オルセンは言う。

「Driveを、2012年に始めた時、人々は私たちを狂っていると思っただろう。でも今は、エロン・マスクやラリー・エリソン、ピーター・ティールといったテック界の知性がシリコンバレーを離れ、新たな都市に拠点を構えつつある」

Drive Capitalの軌跡は、「地方都市からでもグローバルなイノベーションを起こせる」という新しいVC像を示している。ユニコーン幻想にとらわれず、リアル経済と地理的特性を踏まえた投資アプローチが奏功しつつある今、同社の「第二幕」は、中西部に新たなベンチャーの潮流をもたらしている。

今後、Driveが資金調達を再加速させ、さらに地域を超えた影響力を発揮するのか。その動向は、ベンチャー投資の未来を占う試金石となるだろう。

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