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SKハイニックス、米ADR上場で265億ドル調達 ― 公開価格149ドルから14%高の170ドルで取引開始

2026年7月11日、韓国の半導体大手SKハイニックスの米国預託証券(ADR)が、ナスダックで取引を開始した。公開価格は1株149ドル。取引開始後の値動きを見ると、初値は170ドル前後となり、公開価格から約14%高い水準で寄り付いた。その後、株価はさらに上昇し、一時172ドル前後まで買われる場面もあった。

Bloomberg Techの報道によれば、今回の調達額は265億ドルにのぼり、外国企業による米国での株式売り出しとしては過去最大の規模だという。番組に出演したアナリストのマンディープ・シン氏は、需要が「かなりしっかりしている」と評価しつつも、「指標はあくまで指標であり、実際の値動きとは異なることがある」と冷静な見方も示した。事実、過去にはSpaceXが上場前の指標では30%高の観測が出ていながら、実際の初値上昇率は10〜11%にとどまった例もある。


1. なぜ今、米国上場なのか ― チェ・テウォン会長のインタビュー


SKグループのチェ・テウォン会長は、Bloomberg Techのインタビューに応じ、今回のタイミングについて「長い間待ち望んでいたことだ」と振り返った。2012年(発言内では「15年前」とも語られている)にハイニックスを買収して以降、資本市場へのアクセスを模索してきたといい、「今が最も早いタイミングだった」との認識を示した。

会長は、また、今回のADR発行が一度きりのものではない可能性にも言及した。「期待できると思う」と述べ、将来的な追加発行の可能性を否定しなかった。ただし、当面の優先事項は「株価の安定」であるとし、需要と株価動向を見極めながら判断していく考えを示した。

2. AI需要とメモリ市場 ― 「サイクル」ではなく「新しい段階」


インタビューの中で最も印象的だったのは、AI時代における半導体メモリ需要の捉え方だ。チェ会長は、従来のメモリ需要がスマートフォンなど「人の数」に依存していたのに対し、AIエージェントの普及によって需要構造が根本的に変わりつつあると説明した。「一人が何十、何百ものAIエージェントを使うようになれば、それぞれのエージェントが大量のメモリを必要とする」との見立てだ。

同社のIPO関連書類によれば、SKハイニックスは、HBM(広帯域幅メモリ)市場において57%のシェアを持つとされる。この数字は、NVIDIAのAIアクセラレーターにおける採用実績と直結しているとアナリストのマンディープ・シン氏は指摘する。番組にゲスト出演したUCLAの研究者も、「SKハイニックスはHBM市場で支配的な地位にある」と評価し、主要ロジック半導体メーカーとの良好な供給関係が同社の強みだと分析した。

会長はさらに、需要の持続性について問われると、「供給が追いつくまでには時間がかかる。おそらく社会がAGI(汎用人工知能)に到達するまで、この状況は続くだろう」との見通しを語った。

3. AIバブル論への向き合い方


番組では、AI投資に対する「バブル」懸念についても質問が及んだ。チェ会長は「株式市場は行き過ぎることもあれば冷え込むこともある」としつつ、「株価の動きが実体経済のすべてを反映しているわけではない」との見方を示した。トークンあたりのコストは、この3年間で5分の1から10分の1にまで低下しており、今後もこの傾向は続くとの見通しを述べている。

出演したLaffer Tengler InvestmentsのCEO、ナンシー・テングラー氏も、今回の上場を高く評価する一人だ。同氏は、主要テック企業のデータセンター投資について、「1990年代のように誰も懸念を示さず買い続けていた状況とは異なる」とし、各社が3〜5年先までの受注残(バックログ)を確保している点を、今回のAI投資サイクルが持続的である根拠として挙げた。

4. 巨額投資計画と米国とのつながり


チェ会長は、SKグループとして今後10年間でAIデータセンター事業に約1兆ドルを投資する計画を明らかにした。目標として、韓国国内で約15ギガワット、海外で約5ギガワットの発電・データセンター容量を掲げており、米国もその投資先候補の一つに挙げられている。

すでにSKグループは、ハイニックスのインディアナ州新工場やSKテルコムによるAIスタートアップ投資などを通じて、米国内で350億ドル以上を投資済みだという。会長は「その金額よりもはるかに大きな計画を考えている」と述べ、さらなる投資拡大に強い意欲を示した。

5. 「メモリ・アズ・ア・サービス」という次の構想


インタビュー終盤、チェ会長は、「メモリ・アズ・ア・サービス」という新しい事業モデルの構想について語った。現時点では「まだアイデア段階」としながらも、AIの進化とともにメモリがボトルネックになる中で、単なるコモディティ製品としてではなく、顧客ごとにカスタマイズされたソリューションとしてメモリを提供する方向性を模索しているという。

UCLAの研究者もこの流れを補足し、「メモリはもはや単なるビット(データ)の塊ではなく、ロジックと統合されたより知的なチップになりつつある」と指摘した。

6. 市場の反応と今後の焦点


ナスダック上場後、SKハイニックスの株価は公開価格149ドルから最大で17%程度上昇した水準で推移した。Bloomberg Techのバリー・リプシュルツ氏は、SpaceXの上場時と異なり、SKハイニックスには、すでに韓国市場での取引実績があるため「明確な価格の基準点(フロア)がある」とし、比較的安定した値動きになりやすいと分析した。

一方で、ナスダックのネルソン・グリッグス社長は、今回の成功が他の非米国企業による米国上場の動きを後押しする可能性があると述べた。実際、今年の大型資金調達案件の上位10件のうち4件が国際企業によるものであり、SKハイニックスもその一つだという。

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