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Lightspeedのグル・チャハル氏が明かす、AIデータセンター「7つの層」― 土地・電力・冷却から演算まで解説

AIブームの裏側で急速に拡大しているのがデータセンターです。「水を大量に消費している」「電力網を圧迫する」といった懸念が広く語られる一方、その実態は必ずしも正確に理解されているとは限りません。今回は、Lightspeed Venture PartnersでAI・エンタープライズインフラ領域を担当するグル・チャハル氏が、AIデータセンターの構造と、よく語られる「神話」について解説した内容を整理します。専門用語をかみ砕きながら、投資家として押さえておくべきポイントを紹介します。


1. データセンターとは何か


1-1. 30年前から存在する経済のインフラ

まず前提として、データセンター自体は新しい概念ではありません。チャハル氏は次のように説明しています。

「データセンターは30年以上にわたり、経済の中核を支えてきた。Netflixで動画を見ること、銀行取引をすること、Amazonで買い物をすること、そのすべてがデータセンターを経由している」

つまり、コンピューターの集合体が建物の中に収められ、私たちが日常的に使うウェブサービスやアプリケーションを提供している、というのが基本的な構造です。

1-2. AI用データセンターは「セダン」から「レースカー」へ

では、従来型のデータセンターと、いわゆる「AIデータセンター」の違いは何でしょうか。チャハル氏はこの違いを比喩でこう説明しています。

「データセンターを工場だと考えると、従来型はセダンを作る工場、AIデータセンターはレースカーを作る工場のようなものだ」

より高性能なチップを搭載することでより多くの計算処理が可能になる一方、それに伴い電力消費量や冷却の必要性も高まります。チャハル氏は、この「電力や冷却の必要性が高い=悪い」という直感的な連想が、誤解のもとになっていると指摘しています。

2. よくある「神話」を検証する


2-1. 水消費量への懸念

AIをめぐる代表的な懸念の一つが、水の消費量です。チャハル氏は具体的な数字を挙げてこの点を検証しています。

「数年前の時点で、米国のデータセンター全体の年間水消費量は約170億ガロンだった。カリフォルニアの平均的なアーモンド農園は1日約4ガロンを消費するため、これはアーモンド農園のおよそ4日分の水に相当する」

さらに、次世代のAIデータセンターは閉ループ方式を採用しており、外部から水を継続的に取り込むのではなく、システム内で水を循環させる設計になっているといいます。加えて、Nvidiaが最近発表したVera Rubinアーキテクチャでは、水の代わりに冷却材を使う手法も導入されつつあると紹介されました。

2-2. 電力網への影響という懸念

もう一つの代表的な懸念が、電力網への圧迫です。チャハル氏はここでも具体的な数字を示しています。

「数年前の時点で、米国の電力消費のうち約4%がデータセンター向けだった。今後、2020年代末までにその割合は6%、8%、場合によっては10%程度まで上がる可能性がある」

ただし、これは「新たに生まれた電力需要」ではなく、多くの場合、都市部から離れた地域で余っていた電力が活用されているに過ぎないと説明されています。加えて、データセンター事業者は自ら発電設備を確保する「ビハインド・ザ・メーター」方式を採用するケースが増えており、家庭の電気料金への直接的な影響は限定的だといいます。むしろ、電気料金への影響としては、50年以上前から使われている送電網そのものの更新コストの方が大きい可能性があると指摘されました。

3. AIがAI自身を効率化する


3-1. Googleの40%効率化、Metaも追随

データセンターの効率化においては、AI自身がその改善に貢献しているという点も紹介されました。チャハル氏は次のように述べています。

「約10年前、Googleは自社の機械学習・AIシステムを使い、データセンターの電力・冷却効率の改善に取り組んだ。2016年時点で、データセンターの効率を40%改善したという結果が出ている」

同様の取り組みは、2021〜2022年ごろにMetaでも実施されたとされ、今後もAIによるデータセンター運用の効率化が進むと見込まれています。

4. AIデータセンターの「7つの層」


4-1. 土地・シェル・電力・冷却

チャハル氏は、データセンターをゼロから構築する際の構造を7つの層に分解して説明しています。まず必要なのは、土地とシェル(建屋)で、サッカー場数面分に相当する規模になることもあるといいます。ここにラック(機材を収める棚)を設置し、物理的なセキュリティも確保します。次に、必要なのが電力と冷却です。近年は空気による冷却ではなく、液体を配管に通して熱を取り除く液冷方式が一般的になりつつあります。

4-2. ストレージ・ネットワーキング・メモリー・演算

残る4つの層は、ストレージ、ネットワーキング、メモリー、そして、演算(コンピュート)です。特に、ネットワーキングの重要性についてチャハル氏はこう強調しています。

「AIのワークロードは、答えを生成する前にチップ同士が非常に頻繁に通信し合う。そのため、AIデータセンターにおけるネットワークの重要性は桁違いに高まっている」

演算層では、NvidiaやAMD、Intelが供給するGPU・CPUが中心的な役割を担います。1台のサーバーには複数のGPUが搭載され、消費電力は1台あたり1キロワットを超えることもあるとされています。

5. スタックを支えるスタートアップ群


5-1. Base Power、Periodic Labs、Nexthop AI

Lightspeedは、このデータセンタースタックの各層に投資を行っています。まず、住宅街のバッテリーを連携させて仮想発電所を構築するBase Powerは、電力網への負荷を分散する取り組みです。Periodic Labsは、より冷却効率や電力効率に優れた新素材の開発にAIを活用しています。ネットワーキング層では、Nexthop AIが、市場平均より10〜15%電力効率の高いネットワークスイッチを手がけているといいます。

5-2. Unconventional AIとRecursive Intelligence

演算層では、人間の脳の仕組みを参考にしたAIチップを開発するUnconventional AIが紹介されました。チャハル氏はこの取り組みの野心的な目標をこう語っています。

「人間の脳はわずか5〜20ワットで動作し、現在のデータセンターの演算より100万倍効率が良い。同じクエリへの応答を、消費電力10%、1%、あるいは0.1%で生成できたらどうなるかを考えている」

また、チップ開発そのものを高速化するRecursive Intelligenceにも言及がありました。

「最先端のAIモデルを動かせるチップを最初に作るには、約1億ドルかかる。開発には通常2〜3年を要するが、これをAIの活用によって半年、場合によってはさらに短い期間に縮められる可能性がある」

6. 宇宙データセンターという構想


6-1. 土地・建屋が不要になる発想

番組の最後では、データセンターを衛星として宇宙に打ち上げるという構想にも触れられました。チャハル氏は次のように説明しています。

「基本的な演算装置を衛星にまとめて宇宙に送り出せば、土地も建屋も不要になる。宇宙には十分なスペースがあり、豊富な太陽光と放射冷却が利用できる」

放射線対策や保守の課題については、人工衛星がすでに70年以上にわたり宇宙で稼働してきた実績があるとして、技術的には解決可能な範囲だと述べられています。むしろ最大の課題は、打ち上げコストをどれだけ引き下げられるかという経済性にあるとの見方が示されました。

7. まとめ ― データセンターは「誤解されたインフラ」


今回の解説が示すのは、AIデータセンターをめぐる懸念の多くが、実際の数字を確認すると印象と異なる場合があるという点です。水消費量や電力への影響は、しばしば語られるほど大きくない一方で、ネットワーキングやチップ開発、素材科学といった分野では、AIを活用した効率化が着実に進んでいます。

投資家にとっては、GPUやデータセンター建設といった目に見えやすい部分だけでなく、電力・冷却・ネットワーキングといった「縁の下の力持ち」的な領域にも、投資機会が広がっていることを押さえておく価値がありそうです。

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