【4/30】テック冬の時代に備えよ──米国経済とAIインフラの逆風を読む
2025年5月、米国経済は関税戦争の影響などで2022年以来最悪のGDP伸び悩みを記録し、テクノロジー企業にも逆風が吹き荒れている。AIインフラ需要の先行きを巡り、Super MicroやSnap、Grabといった企業が相次いで業績見通しを修正・警戒。さらにNVIDIAのジェンセン・フアンCEOは米議会での証言を通じ、国家レベルでのAI推進政策を訴えかけた。本記事では、これら主要テーマを以下の6つの視点から詳解する。
1. 米国GDP悪化と関税戦争の現状
1-1. 2025年第1四半期GDPの落ち込み
米国の2025年第1四半期GDPは、前年同期比でかつてないほど鈍化し、「関税戦争の重みで経済がたわんでいる」と市場関係者は指摘する。S&P 500やナスダックもこの発表を受けて急反落し、テクノロジー株を中心に売りが広がった。
1-2. 関税戦争の影響
対中関税を主軸とする「関税戦争」は多国間のサプライチェーンに混乱を招き、「輸入コストが上昇し、企業の設備投資意欲をそいでいる」(Bloomberg報道)。その結果、データセンター建設やAIサーバー導入の判断が一時的に先送りされ、関連メーカーの業績にも暗い影を落としている。
2. Super Microの受注停滞―AIインフラ需要の先読み
2-1. ブラックウェル移行待ちの顧客動向
Super Microは最新四半期でアナリスト予想を大幅に下回る業績を発表し、「顧客が旧世代チップの在庫消化を続け、新世代Blackwellチップの発表を待っている」(同社声明)と明かした。
2-2. サーバメーカーのリードタイムと課題
サーバーメーカーには製品ロードマップ上、次世代チップ対応までに2年以上のリードタイムが必要とされる。しかし、顧客側が「140キロワット/ラックから600キロワット/ラックに至る冷却インフラ整備の難易度」(インタビューより)を嫌い、導入を躊躇。製造側は計画調整を迫られている。
3. NVIDIAの政策提言と製造戦略
3-1. ジェンセン・フアンCEOの議会証言
AIインフラへの約5000億ドル投資を要請したジェンセン・フアンCEOは、「新工場を自前で建設せねばAI需要には応えられない」と議会で強調。また、現行の技術輸出規制について「世界は根本的に変化したため、旧ルールを再検討すべきだ」と訴えた。
3-2. 国産ファウンドリの必要性
同CEOは、ファウンドリ(半導体受託製造)を国内に取り戻すことで米国の競争力を維持すると提言。「政策がAI技術の普及を後押しし、世界への技術拡散を加速すべきだ」と述べ、政府主導の大規模補助金やインセンティブ制度を求めた。
4. Snapの広告収益悪化とガイダンス不在
4-1. 期待を下回るガイダンスの背景
Snapは2025年第1四半期決算で収益がアナリスト予想をかろうじて上回ったものの、今期ガイダンスの提示を見送った。これは「中国小売業者が既に広告予算を抑制している」(シニアアナリスト談)ことが要因で、プラットフォームの売上成長に陰りが見える。
4-2. 広告主の支出動向
広告主はMetaやTikTok、Google等の大手プラットフォームに資金を集中させる傾向が強まり、Snapへの投資が後回しに。特に北米市場では月間アクティブユーザーが1億人から9900万人に減少し、収益性の高いユーザー減少が長期リスクと見なされている。
5. Grabの業績予想上方修正―東南アジア市場の強み
5-1. 多角的プラットフォーム戦略
東南アジアのライドヘイリング&フードデリバリー大手Grabは、2025年第1四半期に過去最高の売上と収益性を実現し、通期見通しを引き上げた。「1つのアプリで複数サービスを提供し、価格感度の高い層から高付加価値層まで幅広くカバーしている」(Sameer氏)ことが特徴。
5-2. AI活用によるコスト最適化
Grabは社内でAIアシストツールを導入し、エンジニアの生産性向上やオペレーションの自動化を推進。結果として採用抑制と生産性向上が両立され、人件費増加率が鈍化している。
6. 今後の展望と企業戦略
6-1. インフラ投資の長期的視点
AIサーバーやデータセンター建設は一過性の需要ではなく、10年以上続く「無限レース」と位置づけられる。企業は短期の業績変動に左右されず、中長期的な設備投資計画を維持する必要がある。
6-2. マクロ要因とテック企業のバランス
景気減速、関税、地政学リスクを背景に、テック企業は柔軟なサプライチェーン設計と多国間分散投資を同時に進めることが求められる。政策支援と民間投資の連携が、米国のAI・半導体競争力を左右すると言える。
米国経済の失速と関税戦争がテック企業の業績見通しを揺るがす一方で、NVIDIAのように政策提言を行う企業や、Grabのように地域特化戦略で成果を上げる企業も存在する。短期的な景況感に振り回されず、中長期的視点でAIインフラや広告プラットフォームの進化を見据えることが、次世代の競争優位を築く鍵となるだろう。
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