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Blue Origin、発射場破損からわずか数週間で復旧開始 ― ジェフ・ベゾス氏とCEOデビッド・リンプ氏「年内に再飛行」と明言

元NASA宇宙飛行士マイク・マッシミーノ氏をモデレーターに迎え、Blue Origin創業者のジェフ・ベゾス氏とCEOのデビッド・リンプ氏が登壇したトークセッションが行われた。ハッブル宇宙望遠鏡の修復にも関わったマッシミーノ氏の進行のもと、発射場のトラブルからの復旧、月面開発、そして、AIによるエンジニアリング革新まで、幅広いテーマが語られた。


1. 発射場の破損から数週間、「年内に再飛行」と明言


数週間前に発生した打ち上げ施設の損傷について、ベゾス氏は率直に振り返った。

「あれは厳しい一撃だった。誰も望んでいなかった出来事だ」

ただし、燃料タンク群や組み立て施設にあったブースターなど、長期間かけて準備してきた重要設備は被害を免れたという。近隣で稼働していた建設クルーの協力もあり、400台の重機を投入して24時間体制で復旧を進め、すでに瓦礫の撤去と再建が始まっている。リンプ氏とベゾス氏は、年内の再飛行を目指す方針を改めて示した。

1-1. 「It's worth it」――社員が自発的に作ったTシャツ

印象的だったのは、事故発生からわずか24時間のうちに、社員たちが自主的に「It's worth it(やる価値がある)」と書かれたTシャツを作っていたという話だ。ベゾス氏はこれを、チームの士気の高さを示す象徴的な出来事として紹介した。

2. NG2ミッションの成果 ― ブースター着陸とエンジンの新記録


直近のNew Glenn 2号機(NG2)ミッションでは、NASAの火星探査計画「Escapade」の衛星投入と、ブースターの海上回収という2つの目標が共に達成された。リンプ氏によれば、このロケットは、LEOへ45トンの輸送能力を持ち、開発中の次世代型「9x4」では70トン超の輸送が見込まれているという。

エンジン開発の面でも節目となる成果が報告された。月着陸船に搭載予定のBE7エンジン(推力10,000ポンド)が41分間の連続燃焼試験に成功し、約30年前にスペースシャトルのメインエンジンが記録した36分の連続燃焼を上回ったという。量産面では、主力エンジンであるBE4が現在4日に1基のペースで生産されているとのことだ。

3. 月への本格進出 ― Mark1・Mark2着陸船とArtemis 3


Blue Originが描く月面計画は、複数のミッションが連続する形で進む。来年早々に打ち上げ予定の「Mark1」は、月面に3トンの機体を届けるパスファインダーミッションで、これまでに月面着陸した物体としては最大級になるという。

年央には、有人対応の「Mark2」着陸船との連携ミッションが予定されており、これは先週発表されたばかりのArtemis 3計画と連動する。イタリア出身の宇宙飛行士ルカ氏がこのミッションに搭乗予定で、地球低軌道の高度約450kmでランデブーし、環境制御システムの試験を行うとされている。さらに年内に2機目のMark1がNASAの月面探査車「VIPER」を運ぶ計画だという。

4. 製造インフラという発想 ― 自社工場とエンジン量産


リンプ氏は、ロケット開発において驚いたことの一つとして、極めて高い垂直統合の必要性を挙げた。極限の高温に耐えるエンジン部材のため、社内の材料科学チームが新たな合金を独自開発し、3Dプリンティングによる製造工場で実際にエンジン部品を生産しているという。

「インフラを作るとは、新しいインフラそのものを発明することでもある」

エンジン工場はアラバマ州ハンツビル、ロケット工場はフロリダ州オーランドにそれぞれ設置されており、原材料の調達から量産体制までを自社で統合的に構築している点が強調された。

5. AIで「発明から製造までの時間」を圧縮する ― Prometheus構想


最近発表されたAI関連の新規事業「Prometheus」について、ベゾス氏は、「人工的な総合エンジニア」を育てるためのツール群だと説明した。従来の大規模言語モデルがテキストデータの大量学習によって言葉の操作には優れる一方、物理的な設計には不向きだとし、こう比較した。

「本を千冊読んでも、優れた体操選手にはなれない。物理的な設計には別種の学習データが必要だ」

ベゾス氏は、ジェットエンジンの開発が通常10年規模のプロジェクトになる例を挙げ、Prometheusのようなツールによってこのサイクルを5年、3年、最終的には1年程度まで短縮できれば、人類の「発明から実用化までの速度」そのものが変わると述べた。AIによって雇用が失われるという見方には同意せず、むしろ未着手のアイデアが増えることで労働需要が拡大するとの見解を示した。

6. 宇宙経済はなぜ「今」なのか ― 需要は供給を上回る


打ち上げ需要については、リンプ氏が、「現在は供給制約であり、需要制約ではない」と明言した。低軌道通信衛星群、安全保障関連のミッション、将来的な軌道上コンピューティングや月面資源の活用など、複数の需要源が重なっている状況だという。

同社が進める衛星通信網「Terrowave」は、第一段階で5,000基超を低軌道に、さらに約100基を中軌道に配置する計画で、企業や政府機関向けの高帯域通信を想定している。また、「Project Sunrise」は太陽光が常時得られる準同期軌道を活用した軌道上コンピューティング構想だとされ、コスト面の課題が解消されれば地上のデータセンターに対する優位性が生まれる可能性があるという。

組織規模についても言及があり、Blue Originの従業員は、現在1万4000〜1万5000人規模に達しているという。リンプ氏は、意思決定の速度を保つために「すべての決定を同じ重さで扱わない」ことの重要性を強調し、不可逆な大きな決定は慎重に、可逆な決定は個人の判断で迅速に下す体制づくりを進めていると述べた。

宇宙関連インフラへの投資が拡大する中で、ロケットの再使用化やエンジン量産、AIによる設計支援といった要素がどのようにコスト構造を変えていくかは、関連セクターへの投資判断において注目すべき視点になりそうだ。

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