SpaceX 上場4日目で初の下落、IPO後3日間で9300億ドルの市場価値増
2026年6月、テック業界では複数の重要な動きが同時に進行しました。AI企業Anthropicが米商務省から異例の「警告書」を受け取った一件、そして上場直後のSpaceX株が初めて下落に転じた一件です。本記事では、Bloomberg Techが報じたこれらのニュースを整理しながら、投資家が押さえておくべきポイントを解説します。
1. Anthropicへの異例の警告 ― 輸出管理を背景にした緊張
1-1. 商務長官からの書簡の内容
Bloombergが入手した書簡によれば、米商務長官ハワード・ラトニック氏が先週金曜の朝、Anthropicに対し、最先端のAIモデルへの外国人によるアクセスを許可した場合、severe(重大な)民事・刑事罰が科される可能性があると警告したとされています。
注目すべきは、この警告の根拠が明確にされていない点です。Bloomberg記者のマイク・シェパード氏は、ラトニック氏や米政府がこのような厳しい措置に踏み切った根本的な安全保障上の懸念については分からなかったと述べています。
一方で判明したのは、政府が、通常デュアルユース技術(民生・軍事双方に応用可能な技術)に適用される権限を用いていることです。これは、外国人がAnthropicの最上位2モデルを意図的・非意図的に米国の敵対国へ流出させることを防ぐ狙いがあるとされ、さらなる通知があるまでこの輸出管理を維持する方針だといいます。
1-2. G7サミットでの不自然な距離感
この緊張関係は、フランス・エビアンで開催されたG7サミットの場でも垣間見えました。AnthropicのCEOダリオ・アモデイ氏とトランプ大統領は、フランスのマクロン大統領主催の昼食会で同じ部屋にいたものの、互いに離れた席に座り、何らかの交流があったかは不明とされています。
トランプ大統領は、インドのモディ首相との会談後、Anthropicとの関係について問われ、「うまくいっている」と短く答えるのみだったと報じられています。
1-3. 「信頼できる同盟国」という落としどころ
この問題の解決策として、マクロン大統領は、機密性の高い技術について、安全保障当局による審査を受けた同盟国を「信頼できる同盟国」として位置づけ、Anthropicの2モデルのようなセンシティブな技術へのアクセスを回復させるという案を推進しているとされています。
ドイツのメルツ首相も、「すべての国がこの技術にアクセスする必要がある」と述べつつ、欧州が、この分野で米国に「追いつく必要がある」ことを認めたといいます。欧州には米国のような巨大AI企業が存在しないという構造的な課題が、この問題の背景にあります。
2. アモデイ氏が語る「Mythos」公開戦略
放送内では、AnthropicのCEOダリオ・アモデイ氏が、Bloombergのエミリー・チャン氏に語った内容も紹介されています。最新モデル「Mythos」がサイバー攻撃にも応用できる能力を持つことについて、同氏は次のように説明しています。
「Mythosを攻撃者より先に防御者へ提供しているのは、すべての脆弱性にパッチを当てるためだ」と述べ、脆弱性を発見できる箇所には限りがあり、すべての穴を塞げば、その対象は攻撃しづらくなるという論理を展開しています。
この方針について政府からの慎重な姿勢も受け入れているとし、「政府は対外諜報リスクを懸念しており、公開のペースを遅らせている。それは合理的だと思う」と述べています。同氏は顧客や各国政府からMythosへのアクセスを求める声と、米政府や自社のセキュリティチームからの慎重な声の両方を受けており、「どちらか一方が正しいわけではなく、その間にある」という立場を示しています。
3. SpaceX株、上場4日目で初の下落
3-1. 急騰の反動
番組内では、上場直後のSpaceX株の動向も取り上げられています。SpaceX株は上場後初めて下落に転じ、4%下落して1株193ドルとなったとされていますが、それでも上場後最初の3営業日で9300億ドルの市場価値を積み上げていたという実績があります。
Bloomberg記者のカルメン・ライニッキ氏は、この下落について「新規上場株の初期の取引で見られる典型的なボラティリティだ」と分析しており、流通株式数がわずか4%しかないため、株価の変動が通常より大きく見える可能性があると指摘しています。
3-2. バリュエーションの妥当性
注目すべき指標として、売上高に対する株価の比率についても言及がありました。SpaceXの昨年の売上高は約190億ドルとされ、similar(類似)の市場価値を持つマイクロソフトと比較すると、売上高は15倍の差があるとされています。この比較は、現在の市場評価がどれだけ将来の成長期待に基づいているかを示す材料といえるでしょう。
オプション市場の動きも活発化しており、著名投資家マイケル・バリー氏は、プット(売り)オプションを検討していたが、価格が高すぎて購入できなかったとメモに記したと報じられています。
4. 軌道上データセンターという新たな投資テーマ
4-1. SpaceXが描く2028年の構想
放送では、SpaceXの目論見書に記載された軌道上データセンター構想についても深く掘り下げられています。SpaceX出身者が設立したObservable Space社のCEOダン・ロエルカー氏は、レーザー通信技術が、地上の10倍から100倍のスループットを実現し、低レイテンシーを継続的に提供できる次世代の通信手段になると説明しています。
4-2. 専門家が指摘する技術的課題
一方で、NASAゴダード宇宙飛行センターの元ディレクターであるマッケンジー・リストラップ氏は、軌道上データセンターには3つの段階があると整理しています。すでに実用化が進んでいる「オービット・エッジ・コンピューティング」、防衛目的などで検討される「ソブリン・ストレージ&コンピューティング」、そして、SpaceXが目指す「ハイパースケールAIオービット」という最も野心的な段階です。
特に熱管理については、「軌道上のデータセンターは、まず何よりも熱機関であり、その次にコンピュート基盤だ」という指摘が印象的です。対流による放熱ができない軌道上では、熱を宇宙船全体を通して移動させ、放射する必要があり、放熱板の面積や姿勢制御が、一次的な経済変数になっているとされています。
電力面についても、適切な軌道では太陽光がより強く、より継続的であるとされ、Googleのプロジェクトでは適切な位置の太陽光パネルが地球上より8倍の生産性を持つ可能性があると主張されている一方、「宇宙エネルギーへのアクセスがあることと、宇宙エネルギーのインフラがあることは別問題だ」との冷静な指摘もなされています。
それでも、リストラップ氏は「SpaceXは、これまでに多くの技術的課題を実証してきた垂直統合型企業であり、可能性を排除しない」と評価しています。

