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「AIモデル企業こそ最大の競合」 ― SnowflakeCEOが語るAI時代のデータ戦略

世界有数の機関投資家であるノルウェー政府年金基金(NBIM)のCEO、ニコライ・タンゲン氏が、データプラットフォーム企業SnowflakeのCEOスリダー・ラマスワミ氏と対談しました。NBIMは、Snowflakeの投資家であると同時に、自社でも2ペタバイトのデータを同社のプラットフォーム上で運用するユーザーでもあります。

本記事では、このインタビューの内容をもとに、Snowflakeのビジネスモデルの本質や、同社が見据えるAI時代の競争環境について、投資家・ビジネスマンの視点から解説します。


1. Snowflakeとは何か ― ビジネスモデルの根幹


1-1. ストレージとコンピュートの分離という発想

Snowflakeは、2012年の創業時、ストレージ(データ保存)とコンピュート(処理能力)を分離するという、当時としては大胆な発想を採用しました。ラマスワミ氏はこれを次のように説明しています。

「過去50年間、人々はコンピューティングを箱として購入してきた。その箱には固定量のストレージ、固定量のコンピュート、固定量のメモリがあり、5年程度はそれに縛られることになる」

クラウドコンピューティングを基盤とすることで、Snowflakeは、事実上無限大のデータベースと、複数の顧客間で共有できる膨大な計算能力を提供できるようになったといいます。これにより、たとえば、「週末だけ1,000台のコンピュータを起動して分析を行い、終わったら停止する」といった柔軟な使い方が可能になったというエピソードが紹介されています。

1-2. 消費量に応じた課金モデルがもたらす優位性

多くのソフトウェア企業がシート数に応じた課金を採用する中、Snowflakeは、実際の使用量に応じた課金モデルを採っています。ラマスワミ氏は、その理由について、「価値創造と整合しているからだ」と述べています。

同社には、13,000社を超える顧客がいることから、需要の急激な変動(スパイク)を平準化することができ、顧客に対してより安定的かつ効率的な価格を提示できるという構造的なメリットがあるとのことです。分析業務の多くは「バースト型」、つまり、一時的に集中する傾向があり、こうした需要パターンを把握した上での価格設計が、同社の強みになっているといいます。

2. なぜAIモデル企業を「最大の競合」と見なすのか


2-1. ソフトウェア産業の構造変化

インタビューの中で特に注目すべきは、ラマスワミ氏が、AnthropicのようなAIモデル企業を競合として位置づけている点です。その理由について、同氏は次のように説明しています。

「ソフトウェアのコスト構造そのものが劇的に変化している。これは近い将来のAIモデルのコストに関する懸念とは明確に区別すべき話だ」

これまでソフトウェア開発は、いわば「コンサートピアニスト」のような特別な人材に依存する職人技だったとラマスワミ氏は表現しています。一万時間の練習を経て初めて身につく特殊な才能であり、量産することができないものだったという比喩です。

しかし、AIモデルが実現しているのは、これまでにない規模での「ソフトウェアの工業化」だとされています。これこそが、コーディングエージェントを生み出すAIモデル企業を最大の競合と見なす理由だと説明されています。

2-2. 「コンピューティングの入り口」としてのコーディングエージェント

ラマスワミ氏は、コーディングエージェントが、「コンピューティングへの入り口、そして、すべての人にとっての情報への入り口」になっていくと述べています。最初は、ソフトウェアエンジニアから始まるものの、その影響範囲はより広い層に拡大していくという見立てです。

一方、AmazonやMicrosoftなど、同じくデータプラットフォームを提供する大手企業については、「純粋なデータプラットフォームという観点では、常に上位に位置してきた」としつつも、巨大な企業を過小評価すべきではないとの姿勢も示しています。それでも、同氏が最大の課題として挙げるのは、あくまで「AI時代において生き残り、繁栄するための道筋を見出すこと」だとされています。

3. Snowflakeが描くAI活用の実際


3-1. 営業・エンジニアリングの両面での変革

Snowflake自身もAIの活用によって、社内のオペレーションを大きく変えています。営業チームには、必要な情報に即座にアクセスできるAIツールが導入されており、ソリューションエンジニアは30分で顧客企業のデータを反映したカスタムデモを作成できるようになったといいます。

エンジニアリング面では、「スペック駆動開発」という手法への移行が進んでいるとのことです。これは、求める仕様を自然言語で記述し、コードの初期実装からテスト、デプロイまでの工程を自動化するというアプローチです。ラマスワミ氏は、「ソフトウェアエンジニアリングは、2年前とは全く別物になっている」と述べています。

3-2. データ基盤の現代化を加速するAI

企業が抱える「汚れたデータ」の問題、つまり、重複やギャップ、数十年にわたる旧システムの積み重ねといった課題についても、AIが解決策を提供しているといいます。以前であれば1週間かかっていたパイプラインの変更作業も、今では「スキル」と呼ばれる自然言語ベースのプログラムによって自動化が進んでいるとされています。

レガシーシステムからSnowflakeへのデータ移行についても、従来は数四半期から数年を要していたものが、エージェント駆動型の移行によって数日から数週間で完了できる方向に進んでいるとのことです。

4. 規制環境への視点 ― GDPRの評価


欧州の投資家との対話という文脈もあり、GDPR(EU一般データ保護規則)についての言及も印象的です。ラマスワミ氏はアメリカ出身者としての立場を踏まえつつ、「GDPRには、本当に先見性のある側面も多くある」と評価しています。

特に、消費者が企業に対して自分に関するデータの削除を求められる仕組みについては、大きなプラスだったとしています。一方で、同意を求めるポップアップの羅列など、結果的に消費者が「とにかく同意する」ようになってしまった点は意図しない結果だったと指摘しています。さらに、規制対応コストを支払う余裕のある大企業が結果的に得をし、新興企業にとっては不利に働いたという、規制の二面性についても率直に語られています。

5. リーダーシップ論 ― 失敗から学んだこと


ラマスワミ氏は、Snowflake入社以前に検索エンジン企業Neevaを起業し、事業を終えた経験を持ちます。この失敗から得た教訓として、「消費者向け製品は、体験が劇的に優れていなければ採用されない」という点を挙げています。検索の質を改善できるという確信はあったものの、それを「10倍、100倍優れたものにする」具体的な計画がなかったことが、事業終了の主な要因だったと振り返っています。

SnowflakeのCEO就任直後には、成長鈍化という難しい局面に直面したことも明かされています。就任当日に、翌年度のガイダンスをコンセンサスより5ポイント低く設定したことが、株価下落の直接的な要因だったといいます。それでも、「最終的にものを言うのは、人々が愛するプロダクトを作れているかどうかだ」という原点に立ち返ることで、立て直しを図ったと述べています。

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