伝説VC Sequoia Capital が再び仕掛ける9.5億ドル―“次”を掴む創業期投資の新戦略
AIバブルとも評される熱狂の渦中で、世界有数のベンチャーキャピタル、Sequoia Capital(セコイア・キャピタル) が再び原点に立ち返った。
同社は、2025年10月、シリーズA向けの7億5,000万ドルファンドとシード向けの2億ドルファンドを新設。合計9億5,000万ドル(約1,440億円)を、次世代の起業家支援に投入する。
パートナーのボゴミル・バルカンスキー氏はこう語る。
「市場は上下する。しかし、私たちの戦略は一貫している。世代を超えて残る企業を築く創業者を探し続けるだけだ。」
1. Sequoiaの原点回帰 ― 早期投資へのフォーカス
Sequoiaが再び“初期段階”に焦点を当てた背景には、AIバリュエーションの高騰がある。
スタートアップの企業価値が膨張する中、「早く入ること」が低価格で株式を確保する唯一の手段となっている。
同社は近年、Clay、Harvey、n8n、Sierra、Temporal など、AI関連スタートアップへの初期投資で大きな成果を上げた。
これらの企業は、いずれもシリーズA以降の資金調達で何倍もの評価額を獲得している。
「私たちには、創業期から企業と伴走する伝統がある。今や“プリシード”と呼ばれる段階こそ、最も価値がある。」
― ボゴミル・バルカンスキー(Sequoiaパートナー)
2. 試練と再構築 ― FTX損失と分社化の教訓
2021年、Sequoiaは大胆な構造改革を行い、永続型(evergreen)メインファンド+複数のサブファンドという仕組みに転換。
しかし、翌年には暗号資産取引所FTX破綻で約2億ドルの損失を被り、さらに2023年にはインド・中国部門との分離を経験した。
それでもSequoiaは、Airbnb、Google、Nvidia、Stripeといった“伝説的投資”の遺伝子を失っていない。
この数年の混乱を経て、同社は「創業者との最初の一歩」に再び集中する姿勢を鮮明にした。
3. 次のNvidiaを探せ ― 現場での支援強化
Sequoiaの強みは単なる資金提供ではない。投資後の“実務支援”における密度が群を抜いている。
たとえば、セキュリティテスターXbowには、元DatabricksのCROを取締役として紹介。
AI信頼性企業Traversalには30社以上の顧客候補をつなぎ、
生成AI企業Reflection AIにはNvidiaのジェンセン・フアンCEOとの面談を実現させた。
この出会いが、後にNvidiaによる5億ドル投資へと直結したという。
こうした「実働支援」は、Sequoiaが“資本”だけでなく“産業ネットワーク”を提供する存在であることを象徴している。
4. 「We are only as good as our next investment」― 伝統の再確認
Sequoia本社の新オフィスには、全ての投資家が直筆でこう記した壁がある。
“We are only as good as our next investment.”(私たちは次の投資がすべてを決める)
創業から半世紀、同社が最も重んじるのは、「継続的な自己刷新」である。
AI時代の熱狂を前にしても、Sequoiaの視線は常に「次の起業家」に向けられている。
結論
AIバブルの中で多くのVCが短期的なリターンを追う中、Sequoiaはむしろ創業初期の不確実性の中にこそ価値を見出す。
彼らが繰り返し語る「Outlier Founders(突出した創業者)」とは、時流ではなく構想力と粘り強さを備えた人物だ。
Sequoiaの新ファンドは、単なる資金の再投入ではなく、
「次のNvidiaを生むための、もう一度の原点回帰」である。
