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AI時代を支える“核の力”:ビッグテックが描くSMR(小型炉)戦略

近年、AIの急速な発展に伴い、データセンターの電力需要は急増しています。従来の火力発電や再生可能エネルギーだけでは安定供給が難しく、24時間365日稼働が求められるデータセンターにとって、電力の安定性・予測可能性は最大の課題です。こうした背景を受け、ビッグテック各社は再び「核分裂」に注目し、小型炉(SMR: Small Modular Reactor)をはじめとした新規原子炉スタートアップへの投資・電力購入契約を相次いで締結しています。本稿では、主要なスタートアップ6社を取り上げ、その技術的特徴やビッグテックとの関わり、今後の展望と課題を整理します。


1. ビッグテックと原子力「リバイバル」

AIモデルの訓練や推論処理には膨大な電力が必要です。従来の原子力発電は大型プラントを前提としており、建設コスト・期間・規制対応などでハードルが高いのが現状でした。しかし、小型炉(SMR)やモジュール型炉の登場により、「大量生産によるコスト低減」「柔軟な出力調整」が可能となりつつあります。

  • 24時間稼働の安定性

  • 低炭素であることによる企業のESG対応

  • 長期的な電力価格の予見性

これらを背景に、Amazon、Google、Meta、Microsoftなどが次世代原子炉スタートアップに資本参加し、電力購入を約束する動きが加速しています。

2. Kairos Power:溶融フッ化塩冷却SMR


2-1. Googleとの電力購入契約

Kairos Powerは2024年にGoogleと「2030年までに最初の原子炉を商用稼働させ、2035年までに約500MWの電力を購入する」契約を締結しました。

「フッ化塩を冷却材に用いることで、低圧運転が可能となり、安全性が飛躍的に向上する」

2-2. 技術的優位性と規制対応

  • 溶融フッ化塩:高い沸点(1400℃以上)を活かし、圧力容器を軽量化

  • 燃料ペブル:炭素・セラミック被覆によりメルトダウン耐性を強化

  • 2024年11月には米原子力規制委員会(NRC)からテネシー州での試験炉建設許可を取得(35MW×2基)

2-3. 政府支援

米国DOE(エネルギー省)から計6.29億ドルの支援を獲得し、うち3.03億ドルは直接補助金として交付。公的資金と民間資本を組み合わせた開発モデルが注目されます。

3. Oklo:液体金属冷却炉とOpenAIの関与


3-1. Sam Altmanの参画

OpenAI CEOのサム・アルトマン氏は、Okloへの資本参加のみならず、SPAC合併による同社の上場(2023年7月)を主導。2024年4月まで同社取締役会長を務め、データセンター向け電力供給契約に向けた交渉を進めています。

「DOE由来の設計をベースに、廃棄物抑制技術を統合したい」

3-2. 技術概要と課題

  • 液体金属冷却:ナトリウムや鉛ビスマス合金による高熱伝導性冷却

  • 廃棄物最小化:燃焼効率を高め、使用済み核燃料量を抑制

  • ライセンス申請は2022年1月に一度却下され、2025年に再申請予定

  • データセンター運営のSwitch社と「2044年までに12GW供給」契約を締結

4. Saltfoss:海上パワーバージ構想


4-1. 発電バージのメリット・デメリット

旧社名SeaborgのSaltfossは、2~8基の溶融塩冷却SMRを船舶上に搭載し、港湾や沖合で稼働させる「パワーバージ」を提唱。

  • メリット

    • インフラ不要で建設期間短縮

    • 複数モジュールの組み合わせによる柔軟な出力調整

  • デメリット

    • 海洋環境規制への対応

    • 船舶設計・建造コスト

4-2. 出資・提携状況

PitchBookによれば、ビル・ゲイツ氏、ピーター・ティール氏、Unity共同創業者David Helgason氏らがシードラウンドに参加。サムスン重工業と共同でバージ建造を推進中。

5. TerraPower:Natriumと蓄熱システム


5-1. Natriumの特徴

ビル・ゲイツ氏が創業したTerraPowerは、345MW級の中型炉「Natrium」を建設。

  • 液体ナトリウム冷却+溶融塩蓄熱タンクを組み合わせ、

  • 需給ギャップを熱エネルギーとして蓄え、ピーク時に放出

5-2. 現状と今後

2024年6月にワイオミング州で着工済み。大規模出力と蓄熱を両立するアプローチは、再生可能エネルギーとのハイブリッド運用にも適応可能です。主要投資家はCascade Investment、Khosla Ventures、CRV、ArcelorMittalなど。

6. X-Energy:ガス冷却型ペブルベッド炉


6-1. Amazon Climate Pledge Fundのリード投資

2024年、AmazonのClimate Pledge Fund主導で7億ドルのシリーズC-1を調達。これに合わせ、北西部とバージニアで合計300MWの開発契約を発表しました。

6-2. 技術的優位性

  • ヘリウム冷却:中性子損失・放射化生成物を抑制

  • ペブルベッド燃料:20万個の球状燃料が連続循環し、点検・交換も容易

  • 出力80MW級のXe-100モジュールを想定し、複数モジュールによる拡張性を担保。

7. 今後の展望と課題


  1. 規制・ライセンスの迅速化

    • NRCやDOEとの協調が開発スピードを左右。

  2. コスト競争力

    • 大量生産による1kW当たりコスト低減の実現が鍵。

  3. 地元コミュニティとの信頼構築

    • 海外では反原発運動も根強く、透明性ある情報開示と安全性担保が必須。

  4. 再生可能エネルギーとの共存

    • 蓄熱技術やハイブリッド運用で、変動電源とのシナジーを模索。

核分裂スタートアップは、技術革新と規制対応の双方をクリアしながら、ビッグテックの強力な後押しで次世代エネルギー市場を切り拓こうとしています。データセンター向け電力需要の急増を背景に、安全性とコスト競争力を両立するSMRや中型炉の実用化が進めば、再び原子力がエネルギー・インフラの最前線に返り咲く可能性があります。今後の動向に注目が集まるでしょう。


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