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20年の道のりと「転換点」——Waymo Co-CEO Dmitri Dolgov氏が語る自動運転の現在地

2009年にGoogleの自動運転プロジェクトに最初期のエンジニアとして参加し、2021年からCo-CEOを務めるDmitri Dolgov氏が、ポッドキャストに登場した。週50万ライド、3,000台の稼働車両、11都市への展開という現在の規模感から、技術アーキテクチャの詳細、ハードウェアの進化、そして、「ドライバーアシストから全自動運転への進化」という業界の根本的な誤解まで、幅広いテーマを語った。


1. 現在の規模——週50万ライド、4都市を1日で同時開業


1-1. 2026年時点の実績数字

Dolgov氏は、現在のWaymoの規模を詳細に開示した。稼働車両は約3,000台、週間ライド数は50万回、週間自律走行距離は400万マイル以上。米国11都市で稼働し、そのうち10都市で一般ユーザーが利用可能だ。

特に印象的なのは展開速度の変化だ。「完全自律型の外部ライダー向けサービスを初めて提供した2020年(アリゾナ州チャンドラー)から、最初の4都市展開まで約8年かかった。しかし、先週、4都市を1日で同時開業した」とDolgov氏は述べた。この非線形な加速こそが、Waymoが現フェーズに入ったことを示す最も分かりやすいシグナルだ。

1-2. 東京とロンドンへの国際展開

2026年中に東京とロンドンへの進出も予定している。「左側通行は実はコンピュータにとってそれほど難しくない。重要なのは、データ収集と専門化・検証の工程だ。コア技術の汎化能力は非常に高い」とDolgov氏は述べた。

2. 技術アーキテクチャ——ファウンデーションモデルから3つの「教師」へ


2-1. 基本構造:オフボードの大規模モデルが全体を支える

Waymo Driverのアーキテクチャは、オフボード(クラウド)の大規模ファウンデーションモデルを起点とする。そこから3つの専門化された「教師モデル」が派生する。

「ドライバー」は、Waymo Driverの本体となるモデル、「シミュレーター」は、合成世界を生成しトレーニングと評価を行う環境、「クリティック」は、何が良い運転で何が悪い運転かを判断する価値関数だ。これらの教師モデルが車載推論用の小型モデルに蒸留されて実際の車両で動作する。

「投資した改善がファウンデーションモデル段階で増幅され、システム全体に波及する。それが一種の魔法のように感じられる」とDolgov氏は述べた。

2-2. 「エンド・ツー・エンド」議論への実務的な答え

「ピクセルが入って行動が出る」という純粋なエンドツーエンドモデルについて、Dolgov氏は、「通常ケースでは驚くほどうまく機能する」と認めた上で、「しかし、完全自律に必要な『9の数』には桁違いに届かない。シミュレーターやクリティックと組み合わせるとなると、純粋なエンドツーエンドでは非常に非効率になる」と説明した。

Waymoのアプローチは、「エンドツーエンドでありつつ、中間表現(道路・標識・速度制限・物体概念)によって補強する」というハイブリッドだ。この中間表現があることで、シミュレーションの効率化、安全検証レイヤーの追加、報酬関数の設計が可能になる。

2-3. バスの陰に隠れた歩行者を検知した「驚きの事例」

Dolgov氏が紹介した印象的なエピソードが、センサー融合の威力を示している。赤信号で停車中、バスが部分的に車線を塞いだ状況で、信号が青になり車が動き始めた。バスの向こう側にいた歩行者をシステムが検知し、適切に減速・回避した。

「最初にログを見た時、信じられなかった。カメラもLiDARも、金属の巨大な箱を通り抜けて見ることはできないはずだ」とDolgov氏は述べた。実際に起きていたのは、周辺LiDARの光線がバスの下をすり抜け、歩行者の足の動きを微弱に反射していたのだ。AIモデルはその微弱なシグナルから「歩行者がいる可能性が高く、どのように動くかも予測できる」と判断した。

「これは純粋なエンドツーエンドのブラックボックスシステムでは、実現が非常に難しいか不可能に近い」とDolgov氏は指摘した。

3. ハードウェアの進化——第6世代Ojaiプラットフォーム


3-1. 第5世代から第6世代への飛躍

Waymoは、これまでのスケーリングをJaguar I-PACEへの改造車両で実現してきたが、2026年中に第6世代の専用設計プラットフォーム「Ojai」を一般向けに展開予定だ。

Ojai最大の特徴は、コストの大幅削減だ。「今日の高級ADAS(ドライバーアシスト)システムに匹敵するコスト」とDolgov氏は述べた。同時に車内スペースを大幅に拡大(フラットフロア・スライドドア・最後列でのフルストレッチが可能)しながら、外形サイズはI-PACEとほぼ同等を実現した。

3-2. センサーコスト低下の「LiDAR of Tomorrow」

「カメラは成熟した産業。レーダーは航空機搭載から自動車搭載に移行する中でコストが劇的に低下し、今や数十ドルで良品が手に入る。LiDARも同じ軌跡を辿っており、我々はその波に乗っている」とDolgov氏は語った。

第6世代ではソフトウェアはほぼ第5世代と共通だが、ハードウェアは完全刷新されている。さらに今年後半には第6世代Waymo DriverをHyundai Ionicにも搭載予定で、異なる車両プラットフォームへのソフトウェア汎化が一段と進む。

4. 「ドライバーアシストから全自動運転への進化は幻想」——本質的な難しさ


4-1. 段階的な改良では解決できない質的な違い

業界で議論される「レベル2→レベル3→レベル4」という段階的進化論に対し、Dolgov氏は明確に異論を唱えた。「ドライバーアシストシステムと完全自律システムは、解くべき問題が本質的に異なる。インクリメンタルな改良の延長線上に完全自律化があるという考え方は、欺瞞的だ」と述べた。

完全自律に必要なのは、エッジケースへの対応という「9の数」(安全性の桁数)の問題だ。「次の9は前の9の10倍の努力を要する」という工学の経験則通り、完全自律に必要な安全水準はドライバーアシストとは桁違いだ。

5. 投資家への示唆——Waymoと関連産業


5-1. 規模の転換点を示すシグナル

「4都市を1日で同時開業」という事実は、Waymoが、「実証フェーズ」から「グローバルスケーリングフェーズ」に移行したことを示す具体的なシグナルだ。Dolgov氏はこれを「今日最も重要な変化」と位置づけた。

現在Waymoは未上場(Alphabet傘下)だが、関連する上場株として、Alphabet(GOOGL)の中長期的な価値の一部としてWaymoの進展は注目に値する。またセンサーコスト低下の恩恵を受けるLiDARメーカー、EV充電インフラ企業、自動運転向けAIチップ(Nvidia Driveプラットフォームなど)も関連した投資テーマとして存在する。

5-2. 都市設計への長期的な波及効果

Dolgov氏が指摘した長期的な変化も投資家に示唆を与える。「現在の都市の最も重要な土地の多くが駐車場に割かれている。自動運転が普及すれば、それは不要になる。都市設計が根本から変わりうる」という見通しは、不動産・都市インフラへの長期的影響を考える上で重要な視点だ。

おわりに


Dmitri Dolgov氏のインタビューが示すのは、Waymoが技術的な開発フェーズを終え、スケーリングフェーズに本格移行したという認識だ。「コア技術に制限やギャップは見当たらない」という発言は、慎重な表現の中に高い確信を感じさせる。週50万ライドという数字は既に小さくない規模だが、週4都市同時展開という速度感は、これがまだ始まりに過ぎないことを示している。

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