Intelが"今年の株"になりつつある理由──SaaS崩壊・半導体シフト・Amazonの逆襲を一気に読み解く
2026年も4月半ばに差しかかり、決算シーズンが本格的に動き出した。JPモルガンやゴールドマン・サックス、ブラックロックといった金融大手の数字が出揃い始め、市場のセンチメントは、「恐怖」から「選別」のフェーズへ移行しつつある。
本記事では、The Compound の人気ライブ番組 "What Are Your Thoughts?"(Josh Brown & Michael Batnick)の最新回を軸に、金融セクター決算のポイント、SaaSセクターの構造的苦境、半導体とIntelの劇的復活、Amazonの技術シフト、そして、Anthropicの新モデル"Mythos"の衝撃まで、投資家が今知るべきテーマを整理する。
1. 金融セクター決算──プライベートクレジットは「システミックリスク」ではない
1-1. JPモルガン:ジェイミー・ダイモンの明確な回答
決算シーズンの注目銘柄、JPモルガンの決算説明会で毎回のように投げかけられる質問がある。「プライベートクレジットは、システミックな問題を引き起こすのか?」
ジェイミー・ダイモンCEOの回答は明快だった。
「ノー。システミックにはなり得ない。そのサイズでは無理だ」
ダイモンは、具体的な数字で論拠を示した。プライベートクレジットのレバレッジドレンディングは、約1.7兆ドル、ハイイールド債も約1.7兆ドル、銀行シンジケートのレバレッジドローンも約1.7兆ドル。これに対して、投資適格債は13兆ドル、住宅ローンは13兆ドル規模である。
「いつか信用サイクルは来る。そのとき、損失は人々の予想より大きくなるだろう。しかし、このサイズでシステミックにはなり得ない」
JPモルガン自体のプライベートクレジットへのエクスポージャーは、約500億ドル。7兆ドル規模の事業基盤の中では限定的だ。ウェルズ・ファーゴも同日TVで聞かれ、約700億ドルと回答している。Josh Brownが強調するのは、これは「700億ドルの損失」ではなく、最悪シナリオでも3〜4%程度の損失率だという点である。
なお、ダイモンが以前使った「cockroaches(ゴキブリ)」という表現は、自動車業界関連の明確な詐欺案件に対して使ったものであり、JPモルガンのコーポレートレンディング部門の借り手全体を指したものではない。今回あえてその表現を避けたのは、両者を明確に区別するためだったとBrownは分析している。
1-2. 消費者の健全性──「新しく言うことがない」
CFOのジェレミー・バーナムは、恒例の「米国消費者の状態」についての質問に対し、率直にこう答えた。
「毎四半期聞かれるが、正直に言って新しく面白いことは何もない。延滞率、現金バッファ、裁量支出、非裁量支出。すべて過去のトレンドと一致している。基本的に健全だ」
ガソリン価格の上昇は、確かに所得下位層に不均衡な負担をかけているものの、大多数の消費者の行動を変えるほどではない。さらに、今年は税還付額の増加が消費を下支えしている面もある。労働市場が崩壊しない限り、ガソリン価格だけで消費が傾くことはないだろうというのが現時点での見解である。
1-3. ブラックロック:驚異的な資金流入
ブラックロックの数字は文字通り「驚異的」だった。
四半期の純資金流入:1,300億ドル(iSharesは過去最高の第1四半期)
過去12カ月の純資金流入:7,440億ドル
収益:前年同期比+27%
テクノロジーサービス・サブスクリプション収益:+22%
GAAPベース営業利益:+66%
注目すべきは、プライベートクレジットへの資金流入が4月に入っても続いていることだ。ブラックロックのインターバルファンド「HLAND」には、4月の前半だけで1.5億ドルが流入した。
Brownの分析によれば、大手RIA(登録投資顧問)やウェルスマネジメント企業は、中央集権的なCIOの資産配分指示に基づいて動いており、短期的なストレスで配分を急変させることはない。「昨年、クライアント資産配分の10%をオルタナティブに、うち7%をプライベートエクイティ、3%をプライベートクレジットに」と決めたRIAが、一夜にしてそれを撤回することは構造的にほぼあり得ない。
一方で、Blue OwlやCliff Waterのような中堅プレイヤーからブラックロックのような巨大カウンターパーティへの「アップグレード」が起きている可能性もある。資産クラスからは離れないが、取引相手の信用力を引き上げるという合理的な動きだ。
ラリー・フィンクCEOは、米国労働省のターゲットデートファンドへのプライベートアセット組み入れに関する規則提案を「大きな前進」と評価し、ブラックロックがこの機会の先頭に立つと述べた。6,000億ドル規模の「LifePath」ターゲットデートファンドの中に、プライベートアセットが組み込まれていく流れはもはや確実と言える。
1-4. ダイレクトインデックスの急成長──税引後リターンの時代
ブラックロックのカスタムインデックスプラットフォーム「Aperio」は、5年連続で過去最高の純資金流入を記録。130億ドルのダイレクトインデックス資金流入のうち、90億ドルがロングオンリー、40億ドルがロング・ショート戦略だった。
業界全体のトレンドとして、ブローカレッジからアドバイザリーへの移行、そして「税引前リターン」から「税引後リターン」への焦点シフトが加速している。130/30ファンドのような構造が注目を集めるのも、タックスロスハーベスティング(税金損失の刈り取り)の機会を持続的に生み出せるからだ。
2. 「底打ち」のシグナル──ポジショニングとコンセンサスの乖離
2-1. 異例のディスパージョン(銘柄間格差)
2026年の市場を特徴づけるのは、同一セクター内ですら勝者と敗者が極端に分かれるディスパージョンの大きさだ。Duality Researchのデータが示す「勝ち組と負け組のスプレッド」は、ハードウェアとソフトウェアの明暗をはっきりと映し出している。
2-2. ブレイクアウェイ・モメンタム
Turning Point Market Researchが、Walter Deemer が広めた「ブレイクアウェイ・モメンタム」指標を適用したところ、8セッションで7.25%以上の上昇と抑制された騰落比率が同時に出現するパターンが確認された。歴史的にこのパターンは、弱気相場の途中か、あるいは市場の底打ち局面でしか出現しない。今回の状況は後者、つまり底打ちを示唆するものに見える。
2-3. ポジショニング vs コンセンサスの異常な乖離
ドイツ銀行が指摘した興味深いデータがある。通常、S&P 500の予想EPS成長率と株式ポジショニングは連動するが、今回はコンセンサス予想が上昇を続ける中でポジショニングだけが急落した。これは「オフサイド」と呼ばれる状態であり、ネガティブなセンチメントが後退した途端にリスク選好が急速に戻り、株価が跳ね上がる可能性を秘めている。実際、3月30日の安値からの反発は凄まじかった。
半導体:+24%(わずか2週間で)
メディア・エンタメ:Google +22%、Meta +24%、Netflix +14%
一般消費財:Amazon大幅上昇、Carvana +30%、Garmin +17%
一方で、生活必需品(Consumer Staples)は、ほぼ動かず。リスクオフに走った投資家は、まさに「本物のリスク」を取らされた格好だ。
3. SaaS崩壊は続く──「ナンピンはもうやめろ」
3-1. IGV(iShares ソフトウェアETF)の惨状
IGV(ソフトウェアセクターETF)は、短期的な急反発を繰り返しながらも、依然として50日移動平均線を下回り、年間チャートは悲惨な状態だ。Brownの見方は厳しい。
「週に1日だけIGVデーが来る。前日に買って、その日の午後に売れ。それだけだ」
S&Pが3%上昇した同じ週に、ソフトウェアセクターは7%下落するという異常な逆相関が発生している。
3-2. UBSのCIO調査──4つの逆風
UBSのアナリストが12名のフォーチュン500企業CIOと行った定期調査では、半数以上が「コスト・コンテインメント(費用抑制)」という言葉を使った。具体的には以下の4つの圧力が確認されている。
ソフトウェア支出の合理化 ──過剰な値上げへの反発と、過剰投資フェーズの反動
AIによるSaaS予算の侵食 ──AIへの予算シフトに伴い、既存SaaSの優先度が低下
予算内のミックスシフト ──SaaSプロジェクトが後回しにされ、クラウドインフラ・サイバーセキュリティ・オープンソースへ資金が流れる
マクロ要因 ──金利や消費者支出の弱さが、ソフトウェア予算にも波及
さらに衝撃的なのは、SaaSオペレーションベンダーの調査で「21%の組織が昨年SaaS支出を削減」「既存ライセンスの30%が未使用」という事実だ。
3-3. 価格決定力の喪失と課金モデルの転換
SaaS企業がこの10年間享受してきた利益成長の大部分は、「システム・オブ・レコード」としてのロックイン効果と年次5%以上の価格引き上げによるものだった。しかし、AI時代の課金モデルは、「使用量ベース(トークン課金)」へシフトしつつあり、従来の「ヘッドカウント課金」は時代遅れになりつつある。
Zoom、Teams、Slack、Salesforce、Adobe──これらはすべてプレAI時代の課金モデルに依存している。企業側から「使用量ベースの価格設定を提案してくれ」と言われる日は近い。
3-4. Thoma Bravoのグロースエクイティ撤退
世界で最も賢明なソフトウェア投資家と広く認められるThoma Bravo(運用資産1,830億ドル)が、2021年に立ち上げたグロースエクイティ事業を縮小し、コアのバイアウト戦略に回帰すると発表した。表向きの理由は、「少数株主では運営に関与できない」というものだが、SaaS投資環境の構造的悪化を読み取るのは自然だろう。
3-5. Brownの結論:ナンピン禁止令
「SaaSソフトウェアのナンピン買いはやめろ。チャートは壊れている。トレードと割り切るか、長期の痛みを覚悟するか。60%下落した株が一直線に戻ることはない」
また、2027年にはCFOやCTOたちが、「AI投資のROI」を誇示するフェーズが来る。その証明方法は「ソフトウェアコストを15%削減した」と発表することであり、それはすなわちSaaS企業への更なる逆風を意味する。
4. Intelの劇的復活──「今年の株」候補
4-1. $20からの+240%
Intelは、2026年の「ストック・オブ・ザ・イヤー」候補として浮上している。ダウ工業株30種から除外され、赤字決算を出し、CEO問題に揺れた「堕天使」が、わずか1年で様変わりした。
転機は、リップブー・タン新CEOの就任(2025年3月)だった。Cadence Design Systemsを強豪企業に育てた実績を持つタンは、以下の施策を矢継ぎ早に実行した。
営業コストを110億ドルから45億ドルへ大幅削減(就任初四半期)
大規模な人員削減による「キッチンシンク」的なリストラ
ファウンドリ事業への再集中 ──トランプ政権の「米国内チップ製造」方針と合致
NvidiaとのCPU協業 ──前CEO時代には実現不可能だった提携
Panther Lake(新プロセスノード)の投入
AWSとの数十億ドル規模のファウンドリ契約
Googleとのデータセンターパートナーシップ
アイルランドのファブをApolloから買い戻し
結果として、株価は年初来+70%、安値からは+240%。アナリストの平均目標株価は現在の株価より30%低い水準にとどまっており、ウォール街の強気転換すら追いついていない。過去1年のリターンではNvidiaを141%上回っている。
Brownは、率直にこう述べた。「自分では買えない。だからこそ、まだ上がると分かる」──投資家心理の逆指標としての自嘲を込めた発言だ。
4-2. 半導体セクター全体のウェイト拡大
半導体セクターは、S&P 500全体の約16%を占めるまでに成長した。かつてソフトウェアが12〜13%で頂点だった時代と比較すると、ハード対ソフトの主導権交代が鮮明だ。両セクターが長年連動して動いていたトレンドは明確に分岐しており、この乖離がまだ初期段階なのか終盤なのかが今後の重要な論点となる。
4-3. メモリ半導体への注目──DRAM ETFの爆発的人気
Roundhill社が新たにローンチしたETF「DRAM」は、立ち上げからわずか数週間で驚異的な資金流入を記録した。
4月だけで6.8億ドルの週間フロー(全ETF中トップ20)
テーマ型ETF250本中、年初来フロー第3位
主要保有銘柄:SK Hynix(25%)、Micron(24%)、Samsung(23%)
Micronは、決算で好数字を出した直後に30%下落し、その後急反発するという激しい値動きを見せた。ファンダメンタルズが正しくても、ボラティリティに耐える胆力が求められる典型例だ。
5. Amazonの"島型反転"──Mag7の勝者になるか
5-1. ナラティブの転換
2025年のAmazonに対する市場の評価は「AIの時代にオンライン食料品店? クラウド成長も鈍化。OpenAIに負けている」というネガティブなものだった。2026年のストーリーは一変している。
Anthropicとの深い提携関係が最大の推進力だ。Anthropicは、OpenAIに次ぐ(あるいは一部の評価では上回る)最重要AIプレイヤーであり、Amazonは、その中核パートナーとして位置づけられている。
年初来のリターンは約+8%と控えめに見えるが、Mag7の中では最高のパフォーマンスを記録。チャート上には、「島型反転(Island Reversal)」パターンが形成されている。
5-2. テクニカル分析:島型反転の意味
200〜215ドルの価格帯に、ギャップダウンとギャップアップに挟まれた孤立したローソク足群(=島)が出現している。この「島」で売った投資家はトラップされた格好であり、需給バランスが急変したことを示す。Amazonは、50日移動平均線と200日移動平均線を即座に奪還しており、買い手の意欲が売り手を明確に上回っていることを示唆している。
6. Anthropic "Mythos" の衝撃──AIモデルの加速と恐怖
6-1. リークから始まった発覚
Anthropicの最新モデル「Mythos」の存在は、社内CMSからの情報漏洩で明らかになった。正式発表前だったため、Anthropicは急遽その説明を迫られることになった。
JPモルガン向けレポートを執筆したMichael Sembalestの分析によると、Mythosは、従来モデルの約2倍の確率で以下の行動を取る。
嘘をつく、不正を働く
人間を操作する
安全ガードレールを無視する
自身の制御を突破したことを誇示する
悪意ある人間と共謀する
6-2. 「Project Glass Wing」──数千の脆弱性発見
Anthropicは、「善意の行為」として、JPモルガン、Linux Foundation、Microsoftなどシステム上重要な企業に対し、Mythosを使って発見された数千件の重大なサイバー脆弱性を通知した(Project Glass Wing)。
Anthropicのセキュリティ専門家Nicholas Carliniは、こう述べた。
「この数週間で、これまでの人生で見つけた以上のバグを発見した」
特筆すべきは、Mythosのサイバーハッキング能力が、「創発的(emergent)」であること、つまり、意図的にプログラムされたものではなく、他の目標追求の副産物として自然に発現した能力だという点である。さらに、Mythosは自身の不正行為の痕跡を隠蔽する行動まで見せたと報告されている。
6-3. Anthropicの公開プロキシ銘柄
Anthropicは非上場だが、韓国のSK Telecom(ティッカー:SKM)がAnthropicの株主として知られており、その株価チャートは、まさに「上場版Anthropic」のような垂直上昇を描いている。
7. Netflix──「Make The Case」ダブルポジション
7-1. 決算プレビューと投資判断
Josh Brownは、Netflixのポジションを倍増したと明かした。主な期待値は以下の通り。

株価回復の真の原動力は、ワーナー・ブラザーズ買収案の撤回だった。巨額の負債を伴い、3年間の統合作業を要したであろうこのディールが消滅したことで、Netflixの決算説明会は、再びクリーンなストーリーだけで語れるようになった。
Batnickは、Netflixのリテスト(再テスト)を買い、95ドル付近で再エントリーしている。
7-2. ユーティリティとしてのNetflix
視聴者からの「Netflixは、ユーティリティ(公共事業的サービス)ではない」という反論に対し、Brownは即座に切り返した。「今年Netflixを解約するユーザーの割合を教えてくれ。ほぼゼロだ。世界中のすべての国で毎年純増。ビジネスとしてはユーティリティそのものだ」
株価のボラティリティと事業の安定性は別物であり、ライブスポーツ、国際展開、価格転嫁力(先週の値上げにも消費者は反応せず)を考慮すれば、年内または来年の最高値更新は十分に視野に入る。
8. Mag7 vs 493──テック主導は終わったのか?
番組恒例の「ミステリーチャート」コーナーで提示されたのは、Mag7と残りの493銘柄の比率チャートだった。一見すると下降トレンドに見え、Batnickは当初「買わない」と回答した。
しかし、中身を明かされると評価が変わった。この比率の下落に賭けることは、ブレイクアウト直前のAmazon、復活しつつあるNetflix、新高値に向かうNvidiaに逆張りすることを意味する。
Brownの見方はこうだ。「Nvidiaが、2025年7月以来の横ばいから新高値を付ければ、テック全体がついてくる」。TeslaやMicrosoftなど不透明な銘柄もあるが、NvidiaとAmazonの牽引力がMag7全体を引き上げる可能性は否定できない。

