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石油王国から“AI超大国”へ──サウジの野望を率いるターリク・アミンの挑戦

接続性は人権だ」。通信業界の改革者として知られるターリク・アミン(Tareq Amin)は、サウジアラビアで新たな挑戦を始めた。彼が率いるのは、AIとデジタル基盤を統合する新興企業「Humane(ヒューメイン)」だ。目的は明快──石油依存からの脱却と、AIを中心とした新しい経済モデルの構築である。アミンは言う。「サウジには土地も電力も若い才能もある。世界が求めるデジタル・インフラの中心になれる」。


1. サウジの「第2のルネサンス」──Vision 2030のAI戦略


1-1. 政治と産業を動かす“Vision 2030”

ムハンマド・ビン・サルマン皇太子(MBS)が掲げる「Vision 2030」は、石油以外の産業育成を軸に国家構造を変える壮大な計画である。アミンが語るように、サウジ社会全体がこの目標に共鳴している。「タクシー運転手から政府高官まで、誰もが2030年を語る。これほどの一体感は他国では見たことがない」。

1-2. 若い才能が支えるAI国家

過去30年にわたり、サウジ政府は数千人の若者を米英の大学へ留学させてきた。その成果が今、AI・データサイエンス分野で実を結びつつある。Humane社の研究チームには、スタンフォードやMIT出身の博士号保持者が40名以上在籍しており、アミンは「もはや“人材流出”ではなく“人材回帰”の時代」だと述べる。

2. Humaneの構想──AIインフラを“国内生産”する


2-1. 立ち上げの背景:AIインフラの欠如

アミンが最初に驚いたのは、AIスタートアップが使える基盤インフラの不足だった。アラムコ(国営石油会社)でのAI導入に9か月を要した経験が、Humane創設の原点だ。「米国では30秒でアクセスできる計算資源が、サウジでは数か月。これを変えなければ、未来はないと思った」。

2-2. 国家主導の“AIエコシステム”

その後、皇太子から直接「AI戦略会議」に招かれ、Humaneが誕生する。政府と民間を統合し、AI研究からモデル開発、アプリケーションまでを一元化する“国家級AI企業”として設計された。Humaneは「データセンター事業」「基盤モデル」「アプリケーション」「ベンチャー投資」の4部門を擁し、すでに米国進出も計画中だ。

3. アラビア語モデルへの挑戦──文化とAIの融合


Humaneは、2024年、アラビア語を母語優先で訓練した基盤モデルを発表した。これはOpenAIやAnthropicの英語優先モデルとは異なるアプローチで、文化的偏りを排した設計だ。アミンは語る。「私たちは“英語に翻訳された中東”ではなく、“中東の言葉で語るAI”を作りたい」。このモデルを搭載したチャットアプリ「Humane Chat」はサウジApp Storeで首位を獲得し、国内デジタル主権の象徴となった。

4. エネルギーとAI──サウジの“隠れたアドバンテージ”


アミンは、サウジの強みを「電力インフラ」に見る。AIモデルのトレーニングや推論には膨大な電力が必要だが、同国のエネルギー供給能力は世界屈指だ。「石油で世界を支えた国が、今度は“エネルギーをAI計算力として輸出”できる」。アミンは、米国・中国に次ぐ第3のAIインフラ大国を目指すと明言する。

5. 米中の狭間で──サウジのAI外交戦略


サウジは米中の技術競争の中で巧みに立ち回る。HumaneはNVIDIA、AMD、Qualcommなど米企業と提携する一方で、中国の影響も警戒する。投資家デイビッド・サックスは語る。「中東がAIデータセンターを持つのは必然。問題は、それがアメリカ製か、ファーウェイ製かという二者択一だ」。サウジは前者を選び、米国と技術同盟を築くことで、西側AI圏の一翼を担おうとしている。

結論:AIを通じて再定義される国家


ターリク・アミンは言う。「私は日本で“精度”を、インドで“スケール”を学んだ。そしてサウジで“ビジョンと楽観”を学んでいる」。
Humaneは単なるAI企業ではなく、国家戦略の中核を担う“AIオペレーティングシステム”だ。石油からAIへ、そしてデータから主権へ──サウジアラビアの次なる物語は、すでに始まっている。

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