「危険すぎるAI」と政府に名指しされた企業が、なぜビジネス利用シェアでOpenAIを逆転したのか
AIラボのアンソロピック(Anthropic)が、トランプ政権との対立を深める中で、むしろビジネス顧客からの支持を強めているという興味深いデータが報じられました。TechCrunchが企業向け決済プラットフォームRampのデータをもとに伝えた内容によると、政府との緊張が高まるたびに、同社の事業利用シェアが伸びているという逆説的な現象が起きています。
本記事では、この状況を整理しながら、規制当局との対立が必ずしも企業価値を損なうわけではないという、投資家にとって重要な視点を解説します。
1. アンソロピックを取り巻く「激動の1ヶ月」
1-1. 資金調達とIPO準備が同時進行
報道によれば、アンソロピックは、5月末に965億ドルの評価額で650億ドルを調達し、これはOpenAIを上回る規模だったとされています。さらに同社は初の四半期での利益計上が伝えられる中、6月にはIPOに向けた非公開の書類提出に踏み切ったとされています。TechCrunch
このように、事業面では極めて好調な滑り出しを見せていた中、政府との関係が再び緊張を迎えることになります。
1-2. 政府からの「アクセス禁止」要請
報道によれば、トランプ政権は、最先端モデルであるMythos 5および、その3日前に一般公開されたばかりのFable 5について、アンソロピックの従業員を含む非アメリカ人によるアクセスを禁止するよう要求する書簡を送付したとされています。
この要請により、アンソロピックは実質的に最新モデルを市場から完全に撤退させることを迫られたと報じられています。
政府が根拠として挙げたのは輸出管理に関する規定でしたが、正確な理由は明らかになっていません。一部では、Fable 5のガードレールがハッカーによって容易に回避されたという指摘があり、このモデルはソフトウェアのセキュリティ上の欠陥を見つける能力が非常に高く、アンソロピック自身が「危険」だとして公開を制限していたという経緯があります。
2. なぜ「対立」がビジネスを後押しするのか
2-1. ラムプ社のエコノミストの分析
今回の一件について、Rampのリードエコノミストであるアラ・カラジアン氏は、興味深い見解を示しています。同氏は、「これがあったとしても、おそらくむしろアンソロピックを後押しするだろう」と述べ、過去の事例を引きながら次のように説明しています。
「事業導入の観点で見ると、アンソロピックの過去最高の月は、国防総省が同社をサプライチェーンリスクと認定した月だった」と指摘し、「自社のモデルが特に危険すぎて使用できないと名指しされることには、ある種の『オーラ』が付随する」と分析しています。
2-2. 過去にも繰り返されたパターン
この構図は今回が初めてではありません。今回の騒動の背景には、アンソロピックが政府によるアメリカ国民への大規模監視や完全自律型兵器へのモデル利用を拒否してきた経緯があり、その結果として3月にはトランプ政権から「サプライチェーンリスク」として認定されていました。
しかし、これは企業向け販売を妨げるどころか、データが示す通りむしろ正反対の効果をもたらしたと報じられています。
3. 数字で見るビジネスシェアの逆転
3-1. サブスクリプションシェアでOpenAIを上回る
Rampのデータによれば、アンソロピックは、5月末時点で、企業の支出におけるAI市場シェアで初めてOpenAIを上回ったと報じられています。
具体的には、企業が支払うAIサブスクリプションにおけるアンソロピックのシェアは5月に2.5ポイント上昇し41%に達した一方、OpenAIは39.5%で前月とほぼ変わらなかったとされています。なお、消費者全体の利用では依然OpenAIが大きくリードしている点も付記されています。
3-2. 法人利用の中心は「Claude Opus」
サブスクリプション以外では、企業の支出の大部分は、APIコール、つまり、コーディングなどの用途におけるトークン使用に向けられており、アンソロピックのClaude Codeは強力なAIコーディングツールとして高い評価を得ているとされています。
さらに、モデルの詳細が確認できる取引(全体の約3分の1)では、企業は主にClaude Opusの各バージョン、特に新しいバージョンに支出していることが分かっています。Opusは、Mythosより前の世代のモデルでありながら、現在も一般に公開されている点が特徴です。なお、5月末にはOpus 4.8という新バージョンもリリースされているとのことです。
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