「バブル?」に動じない男:ロン・バロンが語る“次の10年”とテスラの勝ち筋
数日市場が下げただけで「バブルでは?」と騒がれる——そんな局面でも、バロン・キャピタルのロン・バロンはほとんど動じません。彼が語ったのは、短期の値動きではなく「インフレでお金の価値が削られる世界で、どう複利を取り戻すか」、そして、テスラ/SpaceX/xAIに賭ける“次の10年”の設計図でした。
1. 「バブルか?」への答えは、ほぼ“何もしない”
司会が「評価(バリュエーション)やバブル懸念」を振ると、彼の返答は拍子抜けするほどシンプルです。
「Not very much(あまり何もしない)」——代わりにやるのは、機会がある場所を理解し、あるなら取りに行くこと。市場の見出しより、企業の成長と構造変化を見る姿勢が一貫しています。
1-1. “上位株だけが勝ち、その他が負ける”市場の歪み
バロンは、AI・テックに資金が集中し、それ以外(小型・中型)が相対的に沈む状況を説明します。ここで重要なのは、「市場全体が強い」のではなく、リーダー銘柄が指数を引っ張る局面があるという認識です。投資家が体感する景色が、保有スタイル(グロース/小型)で真逆になる——この“分断”が、恐怖やバブル論を増幅させます。
2. 10年で倍になる世界観:インフレが前提を変える
彼の長期観の核はここです。
「経済と株式市場は10〜12年で倍になってきた」。背景として、彼は「インフレで貨幣価値が年4〜5%落ち、実質成長が約2%」という感覚を語り、合算で年7%程度の世界なら“10年で倍”が起こりうる、と置きます。
2-1. 債券を避ける理由: “インフレに負けない置き場”問題
「債券や預金はインフレに追いつけない」という主張は、ここから出ます。つまり、彼にとって株式とは、値上がり期待というより購買力防衛の主要手段。短期の調整より、長期で“負けない土俵”を重視するロジックです。
3. テスラ/SpaceX/xAI:集中投資の思想と数字
このインタビューが刺激的なのは、哲学だけでなく数字が極端だからです。バロンは、テスラに2014年から投資し、約4億ドルの投資から約80億ドルの利益(実現+含み)を得たと説明しています。
さらに、SpaceXでも大きな利益を語り、今後10年でテスラは「5倍」、SpaceXは、「10倍」、(自分の)ファンドは「3倍」を見込むと述べます。
3-1. 「売らない」コミット:顧客が先、自分は最後
過去にテスラを一部売却したのは、彼自身が不安になったからではなく、「顧客が不安になった」から。印象的なのはここからで、彼はボードに対し、
「顧客が100%売るまで、自分は1株も売らない」
と約束し、テスラ/SpaceXは生涯売らないつもりだと語ります。
4. “次の巨大ドライバー”は車ではなく、Optimus(ロボット)
司会が「成長の源泉は自動車?ロボット?」と聞くと、彼は迷わずロボット側に重心を置きます。
「Optimusは、“史上最大のもの”になる」
そして(マスクの構想として)生産が「100万台→1000万台→…」と指数的に拡大し得る、というスケールの話に踏み込みます。ここは事実というより“期待の物語”ですが、彼のテスラ評価は、“自動運転×ロボット×製造スケール”を同時に織り込む点が特徴です。
4-1. 規制は壁か?——「安全」が最終的に勝つという読み
自動運転の普及で最大論点になりやすい規制について、彼は「安全性が上がるなら規制当局は最終的に認める」と、比較的楽観的に語ります。実務上は連邦・州・市で難度が違うものの、方向性は“死亡事故を減らす技術”に寄る、という見立てです。
5. 32回目の会議テーマ「Changing Lives」にある投資観
この回が32回目のバロン投資カンファレンス直前という文脈も重要です。バロン・キャピタルは、AUM約450億ドル(2025/9/30時点)と公表しており、テーマは「Changing Lives(人生を変える)」——投資は最速で儲けて引退するゲームではなく、顧客と社員の生活の安定を作る営みだ、と語ります。

