ステーブルコインが“世界のバックエンド”になる日――Solana共同創業者が語る次の5年
Solana共同創業者アナトリー・ヤコヴェンコ氏は、「世界中のあらゆる市場のための“単一巨大レジャー(単一のコンピュータ)”」という長期ビジョンを語る。高速実行層としてのブロックチェーン、米国の規制転換がもたらすステーブルコインの爆発、量子計算時代に備えた暗号基盤の刷新――彼の発言は、金融×インターネット×暗号の収斂点を鮮明に示す。本稿では、氏の要点を最新の事実関係とともに整理する。
1. ステーブルコインと米国債――「インターネットが最大の保有者になる」可能性
1-1. 規制の明確化が呼び込むマネー
米連邦議会で成立・署名されたGENIUS Act(安定通貨規制法)は、1:1準備、月次開示、監督権限などを定め、発行体の制度的な受け皿を整えた。これにより、ドル建てステーブルコインの普及は一段と加速しうる。
1-2. 実弾の流入:Tetherの米国債エクスポージャー
ステーブルコイン最大手Tetherは、米国債エクスポージャーが約1,270億ドルに達したとされ、世界の主要保有者ランキングで18位との推計も出る。これは国家級の規模で、アナトリー・ヤコヴェンコ氏の「インターネットが米国債の最大保有者になる」との見立てを現実味あるものにする。
2. Solanaの設計思想――「世界の実行層」を目指す
2-1. 低遅延の“実行エンジン”
アナトリー・ヤコヴェンコ氏は、「イーサリアムは世界の決済レイヤー、Solanaは世界の実行レイヤー」という分担観を示す。発想の中心は、レイテンシーの極小化だ。グローバルに同期する巨大状態機械(state machine)を実現し、資産の移動速度を物理限界まで高める。経路は異なるが、ヤコヴェンコ氏がSolanaを率いる当事者であることは各種資料でも確認できる。
2-2. 実需の芽:トークン化MMFの拡大
BlackRockのトークン化マネー・マーケット・ファンド(BUIDL)は、2025年3月にSolanaへ拡張。約17億ドル規模の実需プロダクトが複数チェーンで展開される事例は、「実行層としてのパブリック・チェーン」が資金決済のバックエンドに入り込む現実を示す。
3. RWAとクリエイター経済――「明確さ(Clarity)」が鍵
3-1. RWA(不動産・保険・債券)で相関を断ち、金融の“ただ乗り”を得る
アナトリー・ヤコヴェンコ氏は、DeFiに非相関資産を取り込む必要性を強調する。債券、保険、コモディティ等のRWAのオンチェーン化は、ポートフォリオ分散とヘッジの“自由ランチ”を再現するための前提だ。こうした取り組みは、前掲のBUIDL拡大が示すように現実の資産から着実に進んでいる。
3-2. クリエイター×トークン:制度設計の到達点
NFTや“クリエイター・コイン”は、権利帰属や証券性の判断が阻害要因だった。GENIUS Actなどの枠組み整備が進めば、収益分配やエクイティ連動といった本格モデルへの道が広がる。
4. 量子計算・AI時代に備える――ポスト量子暗号(PQC)への移行
アナトリー・ヤコヴェンコ氏は、「5年以内に量子ブレークスルーがある可能性」を見込み、Bitcoin含む主要チェーンの量子耐性への移行を促す。すでにAppleは、iMessageで“PQ3”を導入し、Googleは、TLSのポスト量子鍵交換(ML-KEM)へ舵を切った。巨大コンシューマ基盤のPQC対応は、Web全体の暗号更新をドライブし、ブロックチェーン側の移行判断にも追い風となる。
5. 競争地図の再描画――レガシー決済とL1/L2の収斂
アナトリー・ヤコヴェンコ氏は、「Visa/Mastercardは、本質的にテック企業」と見なし、バンク・ループを省いたステーブルコイン裏方決済が普及すれば、コスト構造は一段と薄くなると指摘する。L1/L2は競争が続くが、“速く・安く・信頼できる”実行層を磨き込めるかが生死を分ける。
結語
ヤコヴェンコ氏の発言は、①規制の明確化でドル・ステーブルが世界のバックエンドに浸透し、②トークン化とRWAで資本市場がインターネット化し、③量子対応で暗号基盤が大更新される――という三重の潮目を描いている。氏の言う「単一巨大レジャー」は、技術・制度・需要という三位一体の前進が揃ったとき、単なる比喩ではなく金融インフラの現実になるだろう。

