ベンチマークGPのヴィクター・ラザルテ、退社と新ファンド設立の全貌:VC業界構造と今後の潮流を読み解く
ベンチマーク(Benchmark)で2年間ゼネラル・パートナー(GP)を務めていたヴィクター・ラザルテ(Victor Lazarte)が、2025年7月24日をもって同社を離れ、自身の新たな投資ファンドを立ち上げることを発表しました。彼の退社は、VC業界の構造やベンチマークのパートナー体制にとっても重要な出来事です。本記事では、ラザルテの経歴や実績、ベンチマークの特徴、そして今回の動きが意味することを分析します。
1. ラザルテとは誰か:創業者からVCへ
1‑1. Wildlife Studiosの立役者
ラザルテは、モバイルゲーム企業 Wildlife Studios の共同創業者として知られます。同社は2020年に約30億ドルと評価されたブラジル発のゲーム企業で、ベンチマークからも出資を受けていました。
1‑2. ベンチマークにおけるキャリア
2023年にベンチマークに参画し、一般的なGPとして活躍。主にAIやデータラベル、動画インテリジェンスに関するスタートアップに投資し、 Mercor(採用・データラベリング) や HeyGen(AI動画生成)、 Decart AI(AIインフラ) に関わりました。
彼自身もX(旧Twitter)への投稿で「After 2 great years at benchmark, I've made the difficult decision to leave the firm in order to pursue a new adventure.」と述べ、自身の意思で退社を決めたことを表明しています。
2. ベンチマークの特徴と今回の離脱の意味
2‑1. 平等なパートナーシップ体制
ベンチマークは、すべての一般パートナーが“equal partnership”である珍しい構造をとっています。すなわち、シニア・ジュニアの序列がなく、利益や管理費は全員が平等に分配されます。
この体制下では、パートナーの離脱がファームの規模や意思決定構造にも直接影響します。今回、数年以内にSarah Tavelのベンチャーパートナーへの移行に続き、ラザルテまでが離脱したことで、現行のGPは、Peter Fenton、Eric Vishria、Chetan Puttagunta の3名となりました、。
LinkedInの投稿によれば、パートナーが3名にまで減ったのは“Storied VC firm Benchmark has never seen its partnership drop to 3 before.” とあり、これは歴史的にもかなり稀な状況とされています。
2‑2. ラザルテの離脱が示す業界のトレンド
最近では、VC出身者が自身のファンドを立ち上げる動きが活発化しています。ラザルテも「新しい投資プラクティスを構築するため」として、自立的な投資活動への展開を計画しています。
これは、特定領域(AIやデータ)に特化した「ミニマルなGPモデル」が注目されている現れともいえます。かつてマイルズ・グリムショウやサラ・タベルが同様のステップを踏んでおり、これに続く動きと見ることができます。
3. 投資傾向と新興領域:AIスタートアップへの注力
3‑1. 具体的な投資先
ラザルテは、ベンチマーク在籍中、次のようなAI関連スタートアップに投資していました:
Mercor:採用とラベリングに特化したスタートアップ
HeyGen:AIによる動画生成・分析プラットフォーム
Decart AI:AIインフラの構築企業
Applied Compute:OpenAI出身者が設立した強化学習系スタートアップへの出資にも関与し、ボード参加も行っています。
3‑2. ラザルテが注目した理由とは?
彼のバックグラウンドにはゲーミング創業者としてのスケーリング経験、AIへの深い関与、OpenAIなどとのネットワークがあります。また、ポッドキャストなどでも「replace humans」や「knowledge work will be destroyed」という将来予測を語っており、AIドリブンな未来像を強く信じている様子がうかがえます。
つまり、新ファンドでも “AI × 自動化 × 知識仕事の革新” にフォーカスすることが予想されます。
4. 今後の予測と影響
4‑1. ベンチマークの将来
残るGPがPeter Fenton、Eric Vishria、Chetan Puttaguntaの3名となり、パートナー構造の再編が進む可能性があります。今後誰が新たに加わるか、あるいは他社と協業するかは注目点です。Fentonらが投資判断を担う中、ファンド戦略の変化が見られるかもしれません。
4‑2. 新ファンドの展望
ラザルテ自身は、ポートフォリオ各社に事前に離脱を知らせており、新ファンド設立にはスムーズな移行意志が見られます。
どの規模・戦略で立ち上げるのかは未公表ですが、AI領域中心かつシード~シリーズAの初期投資に強みを持つ可能性は高いと考えられます。
5. 結び:ベンチマークからの離脱が意味するもの
ラザルテは自身の創業・投資キャリアを通じて、AIやゲーミング領域に強みを持つVCとして知られており、その独立は注目すべき転機です。
ベンチマークは平等パートナー制の維持が特徴であり、今回3GP体制への縮小は歴史的にも異例です。今後の再構築が焦点となります。
VC業界全体では、「専門特化型ソロGPモデル」や「ミニファンド型」の潮流も加速しており、ラザルテの動きはその象徴といえます。
今後、新ファンドがどのような体制・投資スタイルで登場するのか、そしてベンチマークがどのように変化を遂げていくのかは、スタートアップ業界にとっても非常に興味深い注目点です。
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