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銅はAIバブルか、それとも需給の必然か——ゴールドマン・サックスが読むコモディティ市場の現在地

2026年前半、金・銀・銅はいずれも大きな価格変動を経験した。米イラン紛争という地政学リスク、AIブームに伴うインフラ需要、そして、関税政策の不透明感——複数の要因が絡み合う中で、市場参加者はコモディティをどう位置づけているのか。

ゴールドマン・サックスの月次マクロ・コールにおいて、金属トレーディング責任者のトニー・キム氏が、アダム・クルック氏のインタビューに応じ、金・銀・銅・アルミニウムそれぞれの現状と展望を率直に語った。以下に主要な論点を整理する。


1. 金——「4,400ドル維持」が示すもの


1-1. 年初からの急騰と巻き戻し

2026年初、金は、年初から約1,000ドルの急騰を見せ、歴史的高値を更新した。香港で開催されたマクロ・カンファレンスでは、コモディティパネルに異例の参加者が集まり、金・銀への関心の高まりを象徴していた。しかし、その後、米イラン紛争の勃発をきっかけに投機ポジションの巻き戻しが起き、現在の相場ポジションは、「おおむね昨年第3四半期の水準に戻っている」とキム氏は説明する。

1-2. 大量売りに耐えた「安全資産」としての機能

注目すべきは、この局面で機関投資家が40〜50億ドル規模の金を純売却したにもかかわらず、価格が4,400ドル近辺を維持しているという事実だ。キム氏は、「それだけの売りを吸収して4,400ドルにいるなら、金はその役割を果たしていると言える」と評価する。

国債など他の安全資産が同時期に苦戦したことと比較しても、金の相対的な安定性は一定程度確認されたといえる。

1-3. 6,000ドル到達の可能性と課題

年内の6,000ドル到達については「速度的には可能」としつつも、懐疑的な姿勢を示す。背景にあるのは、イラン紛争による中東産油国の石油収入減少(金への資金流入の減少)、エネルギー・食料・軍事費などによるインフレ長期化、そして、市場が利上げを織り込み始めているという環境変化だ。

「名目金利・実質金利がともに上昇する局面は、金にとって必ずしも追い風ではない」というのが現時点の見立てだ。

2. 銀——投機主導の急騰と今後の方向性


2-1. 複数要因が重なった「スクイーズ」

年初の銀価格急騰は、複数の要因が同時に重なった結果だとキム氏は分析する。米国の銀関税への懸念からロンドンからニューヨークへの現物移送が急増、インドからの輸入、中国リテールの買いが集中したタイミングで、ロンドン市場の在庫が低水準にあったことがスクイーズを引き起こした。さらに、レバレッジ型ETFや当日限りのオプション取引を通じたリテール参加が加速した。

2-2. 今後の見通し

その後、レバレッジETFの強制売却を含む急速な巻き戻しが発生。キム氏は、「今後も銀の方向性は金と連動しやすい」と見ており、年内に100ドルを超えるような大幅な上昇には懐疑的だ。産業需要の拡大は確かに進んでいるものの、「価格を動かしているのはまだ投資需要が主導」という構造は変わっていないという。

3. 銅——AIトレードの代理変数か、需給の実態か


3-1. 相場を動かす2つの力

銅については、AI関連インフラへの需要期待と、米国の銅関税導入をめぐる思惑という2つの力が価格を押し上げていると分析する。

AIデータセンターの建設拡大が銅需要を底上げするという見立てから、AI関連に投資する機関投資家の一部が銅や代替素材としてのアルミを「AIトレードの代理変数」として同時保有しているという実態がある。また、関税導入を警戒した大量の現物が西向きに移動しており、米国外の市場では需給が引き締まりつつある。

3-2. 在庫水準という不都合な現実

しかし、キム氏は慎重な見方も示す。

「在庫は過去5年で最高水準にあり、現在もなお供給過剰の状態だ。価格が過去最高圏にある中で在庫が積み上がっているのは、やや懸念材料だ」

フォワードカーブ(先物の期間構造)が現物タイト感を示していないことも、強気一辺倒になれない理由のひとつだ。

3-3. 関税政策が近く「答え合わせ」になる

今後の焦点は、6月末ごろの米国の銅関税決定とされる。キム氏は「関税が導入された場合でも、されなかった場合でも、どちらも一時的な弱気材料になりうる」と指摘する。関税が導入されれば輸入が止まり、されなければ過剰輸入した在庫が重荷になる。

昨夏にも同様のシナリオが演じられ、銅価格は10%超の急落を経験した経緯がある。「短期目線での銅はニュートラル」というのがキム氏の現在地だ。

一方で「1〜2年後に向けては供給不足が来る」という強気論も紹介しており、時間軸によって判断が大きく異なることを示唆している。

4. アルミニウム——最も確度の高い転換点


4-1. 中東紛争による供給寸断

今回のインタビューで最も具体的な見立てが示されたのがアルミニウムだ。中東紛争により地域内の製錬所が被害を受け、即時的な供給不足が生じているという。ホルムズ海峡の通航が再開されても、製錬所の再稼働には早くて年末、場合によっては12ヶ月以上かかるとの見方もある。

この需給ひっ迫を背景に、キム氏は「価格は現水準から10%程度上昇し、4,000ドル近辺をテストする可能性がある」と述べている。

4-2. その後の急転換リスク

しかし重要なのは、この強気シナリオには期限があることだ。インドネシアで新たな供給が立ち上がりつつあり、中東の供給が戻ってくる年末から来年前半にかけて、市場は急速に供給過剰に転じる可能性がある。

現在はバックワーデーション(期近高・期先安)の状態にある先物カーブが、コンタンゴ(期先高)に転換するタイミングを見極めることが、アルミへの投資判断の核になるとキム氏は示唆する。

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